桂畑誠治氏【不透明な外部環境、レンジ相場離脱のタイミングは】 <相場観特集>
―トランプ関税が警戒材料に、米インフレ懸念の再燃はあるか―
10日の東京株式市場は、前週末に欧米株が全面安商状となったにもかかわらず底堅さを発揮する展開となり、日経平均株価は前週末終値近辺で頑強な値動きとなった。日米首脳会談は友好的ムードが伝えられたが、かといって日本株の買い材料となるような話も浮上していない。トランプ米政権が打ち出す関税政策に神経質に反応する地合いが続いている。日経平均は相変わらず3万8000~4万円のゾーンでのもみ合いが続いているが、遅かれ早かれボックス圏からの離脱が予想されるなか、上下どちらに放れるかが注目される。ここからの相場展望について、米国経済や株式にも精通する第一生命経済研究所の桂畑誠治氏に意見を聞いた。
●「トランプ関税を警戒もボックス圏の往来が続く」
桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)
週明けの東京市場は前週末の欧米株安を受けてリスク回避の相場環境にあったが、比較的底堅い値動きとなった。米国株はハイテク株中心に売りがかさみNYダウ、ナスダック総合株価指数ともに大きく値を下げた。前週末の取引開始前に発表された1月の米雇用統計については、非農業部門の雇用者数の伸びが事前コンセンサスを下回ったものの、これは暴風雪など気候面の影響によるもので予想されたところだった。むしろ、失業率については前月と比較して改善傾向が確認され、平均時給の伸び率も市場予想を上回った。また、雇用者数の伸びも11月と12月分が上方修正されたことによって3ヵ月移動平均は20万人台を回復し、これが景気の底堅さを反映しているとの見方が強まった。
出足は米経済の強さが確認されたことが好感され、ダウ、ナスダック指数ともにプラス圏で推移したが、その後は取引時間中に開示された2月の米ミシガン大学消費者態度指数で1年先の期待インフレ率が4.3%と前月から大きく上振れたことから、インフレ懸念が高まり売りを誘発した。もっとも、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げが年後半まで見込めそうもないことは、既にマーケットで織り込みが進んでおり、ネガティブ材料としてのインパクトには乏しい。投資家のセンチメントを弱気に傾けたのは、トランプ政権下で打ち出される関税政策を警戒したという部分がやはり大きいと思われる。相互関税について近々発表することをトランプ氏が発言したことで、米国のインフレ圧力を助長するとの思惑や貿易戦争を強めることへの懸念から、足もとの相場にはマイナスに働いている。
今週は12日に1月の米消費者物価指数(CPI)の発表を控えている。ここで米国のインフレ懸念が払拭されることは期待しにくいものの、前述のように株式市場が利下げを前のめりに期待している状況にはないことから、コンセンサスとそれほどカイ離のない数値であれば波乱要因となる可能性は低いとみている。東京市場は米国市場を横にらみの展開ながら、向こう1ヵ月の日経平均は引き続き3万8000~4万円のゾーンを中心としたレンジ相場が続くことが予想される。このレンジ相場の離脱は3月に行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)の後に実現する可能性があるとみている。個別株の物色動向では、トランプ米大統領の関税に絡む発言は不確実性が高く、当面は自動車や半導体関連には腰を入れた買いが入りにくそうだ。一方、内需株は相対的に有利であり、引き続き百貨店や外食などインバウンド消費に関連する業態が強さを発揮しやすい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。
株探ニュース