明日の株式相場に向けて=「トランプ2.0」で躍動する欧州株の謎
きょう(18日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比96円高の3万9270円と続伸。前日の米国株市場はプレジデントデーに伴う休場で、これまでであれば手掛かり材料難というお決まりのフレーズが聞かれるところだが、今は違う。欧州株の強さが際立っており、東京市場でもそちらの動向に関心が向かっている。前日の欧州株市場はほぼ全面高で、独DAXが最高値に買われたほか、代表的な欧州株指数であるストックス600も最高値街道を突き進む展開にあり、投資マネーの熱い視線が注がれている。
年初から直近までの株価パフォーマンスでは独DAXが15%近い上昇を示しており、政局不安などでユーロ圏では出遅れている仏CAC40でさえ11%も水準を切り上げている。対して日経平均は、年初と比較して前日時点で小幅ながらマイナスパフォーマンスとなっていた。欧州ではトランプ関税への警戒感は日本よりもはるかに強い。対中戦略に腐心する米国にとって、先日行われた日米首脳会談でも察しがつくように、日本は米国から雑に扱われるポジションにはない。「トランプ2.0」の始動で、本来であればグローバルマネーは欧州よりも日本の優位性に着目するのが自然である。
また、ロシア・ウクライナ戦争の停戦についても、欧州において地政学リスクの後退というポジティブな方向では受けとめられていない。米国主導でロシアに有利な形でまとめられては、ウクライナのみならず欧州にとってもいい迷惑以外の何ものでもないからだ。しかし、そうしたなかで欧州株市場は米国さえも凌駕して強さを際立たせている。
では、日本株と欧州株の取り巻く環境で決定的な違いは何なのか。それは中央銀行による金融政策の方向性である。ECBは今後も利下げのカードを切り続けることに躊躇がない。景気が停滞していることが最たる理由だが、それに加えて「トランプ政権の打ち出す相互関税によって域内の在庫がダブついてデフレ化が進む可能性があり、これがECBの金融緩和スタンスを助長する」(ネット証券アナリスト)と指摘されている。対して日本は、インフレ圧力が止まず、日銀が焦り気味に引き締め政策への転換を図っている初動にある。国内の10年債利回りは超速モードで1.4%台に突入している。日本企業のEPSの伸びが確認されるなかも、それ以上に金利上昇圧力が株式の相対的な割高感を強めている。日本が欧州株高にキャッチアップできない背景は、“日銀界隈”がすべてと言っても過言ではない。
一方、グローバルマネーフローの観点では株式市場への資金シフトが鮮明であることも確かである。世界株市場全体の時価総額は125兆ドルを超えたと報道され過去最高水準に膨張している。これがバブルではないとは言い切れないが、バブルとも断定できない。「トランプ2.0」への嫌悪感が株式市場を活性化させている構図は、不条理に見えても現実であり、仮にこれがアダ花であれば遅かれ早かれ散ることになる。
個別株戦略も難しいところだが、東京市場の半導体関連は依然として強弱が入り乱れ総花的な上昇が見込みにくい状況に変わりはない。目先人気化した防衛関連も循環物色の域を出ておらず、追撃買いで容易に成果を得られるようなテーマ性を発揮しているようには見えない。流れとしては内需に着目すべきで、前日の当欄でも取り上げた好決算発表後に売り叩かれた銘柄のディスカウントセールに活路を見出したい。好決算企業では、ロードスターキャピタル<3482>のマド開け急落も75日移動平均線がセーフティーネットとなっている形で、ここは逆張りチャンスにみえる。また、デジタルマーケティング戦略への傾注で業績拡大が顕著なクロス・マーケティンググループ<3675>も、決算後の投げ売りが望外の買い場となっている可能性がある。両銘柄ともPERの割安さが強みである。
あすのスケジュールでは、12月の機械受注、1月の貿易統計がいずれも朝方取引開始前に開示され、午前中に1年物国庫短期証券の入札が行われる。午後取引時間中には1月の首都圏マンション販売が発表されるほか、取引終了後の1月の訪日外客数へのマーケットの関心が高い。なお、この日は高田日銀審議委員が宮城県の金融経済懇談会で発言機会があり、その内容が注目される。海外では1月の中国70都市の新築住宅価格、インドネシア中銀とニュージーランド中銀の政策金利発表、1月の英消費者物価指数(CPI)、1月の米住宅着工件数、米20年国債の入札、FOMCの議事要旨(1月28~29日開催分)など。ジェファーソンFRB副議長の講演にも耳目が集まる。(銀)