米国はドライブシーズンに突入、ガソリンの需要低迷は続くのか? <コモディティ特集>
●ドライブシーズン入りしたにもかかわらず伸び悩むガソリン消費
世界最大の石油消費国である米国がドライブシーズン入りした。毎年5月末の戦没将兵追悼記念日(メモリアル・デー)からは例年ガソリン需要が拡大する時期であるが、米エネルギー情報局(EIA)の週報によるとガソリン消費は伸び悩んでいる。
先週のEIA週報で、米ガソリン需要の4週間移動平均は日量878万8000バレルまで減少している。前年同時期は日量894万6000バレルだった。例年のように拡大する傾向にはない。原油安のおかげで全米のガソリン小売価格の平均値は1ガロン(3.785リットル)あたり3.1ドル付近で安定しており、物価高と切り離されて低水準で推移するガソリン価格は家計にとって数少ない救いであるが、安価な燃料を思う存分消費して遠出する気分ではないのかもしれない。
米ミシガン大学や米カンファレンス・ボードが発表する消費者信頼感指数は年初から低下傾向にある。消費者心理に影響しやすい雇用環境は今のところ安定しており、4月にかけての米株安はほぼ解消され、物価上昇率の加速は一巡しているが、家計のガソリン消費は慎重である。米小売売上高の拡大傾向と、ガソリン消費の低迷は相反しているように見えるが、ガソリン需要の伸び悩みは一時的な現象で、これから上向いてくるのだろうか。
●需給の最残線にいる石油企業は増産に動く
一方、EIA週報で製油所稼働率は93.4%まで上昇し、今年の最高水準を更新した。ガソリン需要だけでなく、ガソリン供給量も弱含みで推移しているが、石油企業は需要拡大に備えようとしている。需給動向を最前線で目視している石油企業が製品の増産に動いていることからすれば、ガソリン消費がまもなく盛り上がってくる可能性が高い。
戦略石油備蓄(SPR)を除く原油と石油製品の在庫は合計で12億3533万7000バレルまで増加した。3月にかけて取り崩しが続いた後は増加に転じ、今年の最高水準を塗り替えている。トランプ米大統領の不可解な関税政策もあって景気見通しの不透明感が強く、国際エネルギー機関(IEA)が指摘するように供給過剰が現実になりつつあるかもしれない。石油輸出国機構(OPEC)プラスの増産も在庫増を後押しする要因である。ただ、原油在庫だけを見れば増加は頭打ちで、5月末にかけてはやや取り崩されている。製油所稼働率の増加とともに原油在庫の減少圧力が強まっていると同時に、製品在庫が増加する傾向にあるが、この製品在庫の増加は需要の弱さというよりも、石油企業が需要拡大に備えようとしているためである可能性が高い。
今年、米国のドライブシーズンにおける需要はやや出遅れている可能性が高い。米消費者信頼感指数の低迷が示すように消費行動は慎重であるかもしれないが、米小売売上高の拡大からすれば、消費が手控えられているようには見えない。関税戦争の停戦期間中における米中通商協議の不透明感や高止まりする金利負担など、消費を抑制する要因はあるものの、全体の消費動向に沿ってガソリン需要も上向くだろう。世界全体の石油需要の1割近くを占める米国のガソリン需要が原油相場を刺激するのか注目したい。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
株探ニュース