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【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】─再評価の機運が広がる半導体関連株

市況
2025年6月29日 14時00分

「再評価の機運が広がる半導体関連株」

●4-6月期決算が最大のポイントに

7月の東京株式市場は、トランプ政権の関税政策や株価の高値警戒感を気にしつつも、基本的には堅調な展開となりそうだ。日米で半導体などハイテク株への先高期待が浮上していることや、需給面では外国人投資家の買いが継続していることなどが背景にある。ただ、23年、24年ともに年間の高値が7月となっており、この面では環境の変化には目を配りたい。最大の注目ポイントは、同月下旬以降に発表が本格化する3月期決算企業の第1四半期(4-6月)決算となる。

日経平均株価の予想レンジは3万8500円~4万1000円。決算次第では、昨年秋からの3万8000円~4万円前後のボックス圏の上抜けを探る場面もありそうだ。

主なスケジュールは、米国で1日にISM製造業景気指数、3日に雇用統計、4日は独立記念日で休場、15日に消費者物価指数(CPI)、17日に小売売上高、24日に製造業PMI(購買担当者景気指数)、30日にFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表などが予定されている。引き続き米国の景況感の動向に関心が高い。FOMCでは政策金利の変更なしがコンセンサスだが、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が先行きをどう見ているかが注目される。

国内では1日に日銀短観、20日に参議院選挙投開票、31日に日銀金融政策決定会合の結果発表など。また、下旬からは3月期決算企業の第1四半期(4-6月)の決算発表がスタートする。期初予想では6%減益程度だが、四半期を経過し企業が見方を変えてきているか注目が集まる。4月の本決算発表時はトランプ関税で株価が急落した直後であり、企業が慎重になっていた可能性がある。前哨戦としては日銀短観での大企業製造業の業況判断や設備投資動向をチェックしたい。

需給面では、外国人投資家や事業法人(自社株買い)の買いが継続していることが下支え要因となる。一方、7月はETF(上場投資信託)の分配金捻出のための換金売りが出る。市場推計では1兆2000億円程度であり、念頭に置く必要がある。

●最先端半導体で注目高まる製造装置・部材関連

物色動向では、 半導体関連が久々に注目度の高いテーマとなっている。先端半導体のエヌビディア<NVDA>が今年1月の上場来高値を更新し、日本でも検査装置のアドバンテスト <6857> [東証P]が1月高値を突破した。

年初に中国のスタートアップであるディープシーク(DeepSeek)が最先端の半導体を使わずに高性能な生成AI(人工知能)を登場させ、株式市場が「ディープシーク・ショック」に見舞われたことや、2月にAIデータセンターの設備投資が鈍化するとの懸念が浮上したことなどにより、半導体関連の株価は調整していた。

だが、米マイクロソフト<MSFT>が1-3月期決算で データセンターの設備投資に前向きだったことや、エヌビディアの2-4月期決算が好調で、先端半導体「ブラックウェル」の需要が急拡大していることが確認されたことで、足もとで再評価の機運が広がっている。

「ブラックウェル」ではチップを切り出した後の後工程が複雑化する。エヌビディアの取引先でもあるアドバンテストを筆頭に、切る・削る・磨く装置で世界首位のディスコ <6146> [東証P]、後工程製造装置のTOWA <6315> [東証P]、エヌビディア向けICパッケージ基板のイビデン <4062> [東証P]、先端パッケージ装置の芝浦メカトロニクス <6590> [東証P]など。また、後工程では積層したDRAMであるHBM(広帯域メモリ)が重要だが、層部分を薄くする手法であるステルスダイシングを手掛ける浜松ホトニクス <6965> [東証P]に対するアナリストの評価が高い。同社は3D(積層)メモリ向け半導体故障解析装置も手掛けている。

また、前工程では微細化がさらに進み、半導体受託製造世界首位の台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>は半導体線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)の量産化を今年後半から開始する見込み。塗布・現像などの前工程に強く、製造装置世界大手の東京エレクトロン <8035> [東証P]、ウエハ洗浄装置のSCREENホールディングス <7735> [東証P]、超純水製造装置の野村マイクロ・サイエンス <6254> [東証P]、絶縁膜を手掛けるトリケミカル研究所 <4369> [東証P]など。成膜プロセス装置のKOKUSAI ELECTRIC <6525> [東証P]は、後工程でも需要が増加。また、2ナノ対応の欠陥検査装置を展開するレーザーテック <6920> [東証P]は26年6月期に受注が本格回復する可能性がある。

JR旅客各社が運賃の値上げを機に積極的な設備投資に動き出している。JR九州 <9142> [東証P]やJR西日本 <9021> [東証P]は25年4月から運賃の値上げを実施し、JR東日本 <9020> [東証P]は26年3月に値上げを行うことを発表している。特にJR東日本の全面的な運賃改定は、消費税増税に伴う値上げを除くと、1987年の国鉄民営化以降で初めてとなる。

これまで鉄道の運賃は減価償却費や人件費などのコストに、適正な利潤を上乗せした「総括原価方式」で決められてきた。この算式ではごく一定の範囲でしか値上げができないうえ、災害対策などを加味するのが困難だった。国土交通省は昨年4月に原価の算定方法を見直し、耐震化などの設備投資や、人材確保のための賃金改善など幅広いコストを運賃に反映しやすくしている。ホームドアの設置、運行システムのリプレース、インフラの老朽化対応に各社は前向きだ。JR東日本系で、羽田空港アクセス線や新幹線の架線老朽化などの工事を受注している日本電設工業 <1950> [東証P]のほか、鉄建建設 <1815> [東証P]、東鉄工業 <1835> [東証P]。ホームドアなどでは日本信号 <6741> [東証P]、京三製作所 <6742> [東証P]などに妙味がある。

(2025年6月26日 記/次回は8月3日 配信予定)

株探ニュース

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