金は高値圏でもみ合い、中東の緊張緩和で通商協議が再び焦点に <コモディティ特集>
金ドル建て現物価格は6月、イスラエルのイラン攻撃を受けて4月22日以来の高値3450ドル台をつけた。その後は、米軍がイランの核施設3ヵ所を空爆したのち、イランが報復攻撃でカタールの米軍基地にミサイルを発射した。ただ、イランが米国に事前通知を行ったことから、イスラエルとイランの停戦につながり、金に利食い売りが出た。
一方、米議会で大型減税・歳出法案が可決された。米国の財政不安が再燃すると、3250ドル台で下げ一服となった。また、米大統領が各国に関税率を通知する書簡を送付したことも支援要因になった。交渉期限は8月1日まで延長され、市場の焦点は再び通商協議に戻った。
トランプ米大統領はイランの核施設を完全に破壊したと主張したが、イランは濃縮ウランを米軍の攻撃前に運び出しており、行方が不明となっている。また、イランは国際原子力機関(IAEA)との協力を停止する法律を施行し、IAEAがイランの核施設を査察する際にはイランの国家安全保障最高評議会の承認が必要と定めた。中東の緊張は緩和したが、イランの核開発協議の行方は不透明となっている。
●米国と各国の通商協議は8月1日まで延長
トランプ米大統領は4日、大型減税・歳出法案に署名し、成立した。米議会予算局(CBO)はこの法案について、10年間で約3兆3000億ドルの財政赤字拡大につながるという推計を発表した。財政不安が続けばドル安に振れ、金の支援要因になるとみられる。減税法案が成立したことで米大統領は各国との関税協議に再び取り組み始めた。米大統領は7日、関税率を通知する書簡を各国に送付し、日本と韓国からの輸入品に対し、8月1日から25%の関税を課すと表明した。他11ヵ国に対しても関税率通知の書簡を送付しており、カナダには35%、欧州連合(EU)とメキシコに30%の関税を課すとしている。各国ともに関税交渉に取り組む姿勢を示しており、通商協議の行方が当面の焦点である。ブラジルからの輸入品に50%の関税を課すとしたことに対し、ブラジルのルラ大統領は相互主義で対応するとし、交渉が失敗した場合、米国に50%の関税を課すとした。これまで合意に達したのは英国、中国、ベトナムだけであり、交渉が難航している。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は6月の議会証言で、米大統領が求めている利下げを検討する前に関税引き上げで物価が押し上げられるか見極めるため、一段の時間が必要との見方を示した。6月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は14万7000人増と、事前予想の11万人増を上回った。失業率は4.1%と前月の4.2%から低下した。事前予想は4.3%。6月の米消費者物価指数(CPI)は前月比0.3%上昇し、前月の0.1%上昇から伸びが加速し、1月以来の大幅な上昇となった。前年比は2.7%上昇、前月は2.4%上昇だった。事前予想は前月比0.3%上昇、前年比2.6%上昇。CMEのフェドウォッチでは、7月29~30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利据え置き見通しだが、9月以降、年末にかけて2回の利下げが見込まれている。
米大統領が米FRBの利下げを見送っていることに不満を爆発させていることは注意が必要である。米国家経済会議(NEC)のハセット委員長が、ワシントンの本部改修費用に関して説明責任があると指摘しており、米FRBの調査の行方も確認したい。
●中東の緊張緩和で金ETFに利食い売り
世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、7月14日に947.64トン(5月末930.20トン)となった。イスラエルのイラン攻撃を受けて957.40トンまで増加したのち、利食い売りが出た。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは7月8日時点で20万2968枚(前週20万1980枚)となり、4月1日以来の高水準となった。中東の緊張緩和で新規売りが出る場面も見られたが、米国の財政不安が中長期の支援要因であり、押し目は買われやすい。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース