ホルムズ海峡の封鎖続くがWTI先物に割安感、4月限は取引最終日を無事乗り切れるのか? <コモディティ特集>
イランと戦争を開始したトランプ米大統領は、最高指導者だったアーリー・ハメネイ師を中心とするイラン指導部を多数殺害することでイランが米国に降伏すると想定していた可能性が高い。マドゥロ元大統領が拉致された後、ベネズエラが米国にとって従順な国となったように、イランの反米政権の転換を夢見ていたのではないか。トランプ米大統領とともに、イスラエルも取り返しのつかない勘違いをしていたと思われる。
トランプ米大統領が自分勝手な夢から覚めたのかどうかはさておき、石油輸出の要所であるホルムズ海峡の封鎖は世界を恐怖させている。サウジアラビアの東西パイプラインや、アラブ首長国連邦(UAE)の石油基地フジャイラなど、ホルムズ海峡を迂回する輸出ルートが若干あるとはいえ、日量2000万バレル近い石油が通過していたホルムズ海峡が封鎖された影響は世界経済にとって甚大である。実質的に日量1200万バレル規模の供給が足止めをくらっているため、インフレ高進は避けられず、景気後退(リセッション)入りはまもなくだろう。
●原油価格上昇による経済の縮小に世界はどこまで耐えられるか
米海軍だけではなく、その他の主要国の艦隊が中東に集結し、ホルムズ海峡を通過するタンカーの護衛を開始する可能性はあるが、供給の正常化には程遠いだろう。親イランのフーシ派が紅海で実施した航行妨害の阻止に米国など連合軍が苦戦した経緯があることからすると、フーシ派とは比べものにならない火力を有するイラン革命防衛隊(IRGC)は西側にとって相手が悪い。そもそも護衛を開始するにはいったんホルムズ海峡を通過してペルシャ湾に入らなければならないが、最初にこの難関の突破を試みるのはどこの国の艦隊だろうか。米軍の被害を抑制したいトランプ米大統領は先陣を譲るに違いない。
結果を見るまでもなく、西側の連合艦隊はホルムズ海峡を通過できない、あるいは通過しようとしないだろう。世界が代償を支払ったとイランが判断するまで、ホルムズ海峡の封鎖は続き、石油の供給ひっ迫は続く可能性が高い。原油価格が上がり続ければ、需要が圧迫されて経済は縮小に向かうが、世界はどこまで耐えられるのだろうか。日本や韓国のように財政支出によって石油価格の上昇を抑制し、消費者の負担を軽減すれば経済は一時的に持ちこたえるだろうが、財政赤字の拡大見通しによって石油ショックが国債ショックへ波及するリスクもある。弱含んでいる円相場はどこまで耐えられるのか。軍事衝突が始まってからなぜかドルは上昇している反面、米国債は下落傾向にあり、金融市場は神経質な局面に突入している。
●WTI先物とスポット価格の乖離が進行
今週末の20日、ニューヨーク市場でウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物の4月限が最終取引日を迎える。イラン戦争の開始後、4月限は節目の1バレル=100ドルを超えると伸び悩む傾向にある。一方、ドバイ原油のスポット価格は一時1バレル=150ドルを上回るなど、ニューヨーク市場との価格差は非常に大きい。その他の国の原油スポット価格も100ドルを上回るものが多い。
通常、ニューヨーク市場では原油の受け渡しはそれほど多くないが、現物需要の拡大を背景に、今回は受け渡しが膨らむ可能性がある。受け渡し地であるオクラホマ州クッシングの原油在庫は2658万バレルにとどまり、タンクボトムの問題から2000万バレルを下回る水準まで大きく取り崩すのは難しいとみられている。これまでにない波乱が待ち受けている可能性もある。米戦略石油備蓄(SPR)の放出に助けられて、無難に乗り切ることはできるのだろうか。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
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