ESG最前線レポート─「ESGは空気にも投資する?」
第54回 ESGは空気にも投資する?
●ホルムズ海峡の事実上封鎖による影響
アメリカとイスラエルによるイランへの先制攻撃に対し、イランがホルムズ海峡を事実上封鎖したことにより、エネルギー価格が上昇しています。国内でも既にガソリン価格が値上がりしており、家計への影響が懸念されます。
ホルムズ海峡は、世界の原油と液化天然ガス(LNG)の約2割が通過するエネルギー輸送の要衝です。その機能不全や通航リスクの高まりによる原油・LNGの価格高騰は、原材料費や輸送コストの上昇を通じて、食料品や工業製品など幅広い製品価格に影響を及ぼします。
堅調に推移していた日経平均株価も、物価高や景気の先行き不透明感を背景に下落に転じており、中東情勢の早期安定化が求められています。
●「空気は目に見えない金」――ノーベル化学賞を受賞したMOFの開発
2025年10月、京都大学高等研究院の北川進特別教授が、「金属有機構造体(MOF)」を開発したことが評価されてノーベル化学賞を受賞しました。「MOF」はナノ(10億分の1)メートルサイズの微細な孔を無数に持つ多孔性材料であり、特定の気体を効率よく貯蔵・分離できることから、環境対策や産業分野など幅広い用途での応用が期待されています。
北川氏はインタビューでこう語っています。「多孔性材料を応用し、空気を原料にエネルギーをつくる社会を実現したいと考えています。空気中のCO2や水蒸気を原料として液体のメタノールなどを合成し、エネルギー源として活用するのです。化石燃料のコストがこれだけ上がると、資源国であるアメリカや中国に太刀打ちできません。しかし、空気資源を使うことができれば話は変わります。空気は小国にも大国にも平等に存在するからです。それで『空気はインビジブルゴールド(見えない金)』と言ったのです」。
●空気からエネルギーをつくり出す
「MOF」を活用すれば、トレーラー1台で燃料を生産することも可能となり、災害などで大規模発電所が遮断されたとしても地域単位でエネルギーを自給自足できる――。どれほど時間がかかるかわからないが、それを実現したい、と北川氏は強い意欲を示しています。
すでに「MOF」の製造に取り組む日本企業はいくつかあり、メタノールや合成ガス、水素、バイオ燃料などへの応用が進められています。また、複数の化学メーカーが、CO2を原料としたポリカーボネートやポリウレタンなどのプラスチック原料の開発を、国家プロジェクトとして推進しています。
日本は原油輸入の約94%を中東に依存しています。エネルギーの安定供給への懸念が広がる中、こうした新たな技術革新への取り組みは、持続可能な社会の構築に寄与するものと期待されます。さらに、CO2を原料として活用できれば、大気中のCO2の固定化・削減にも貢献できることから、ESG投資の観点からも注目しています。
情報提供:株式会社グッドバンカー
(2026年3月24日 記/次回は4月25日配信予定)
株探ニュース