iPS細胞活用の新薬開発で飛躍的成長なるか ケイファーマ福島弘明社長に聞く
―上市候補最右翼のALS治療薬などパイプライン11本、開発動向に市場も熱視線―
慶大医学部発バイオベンチャーのケイファーマ<4896>[東証G]は、iPS細胞を活用してALS(筋萎縮性側索硬化症)治療薬「KP2011」の開発などを進めている。ALS治療薬を数年以内に市場投入する目標を掲げ、米国や欧州での開発に向けた交渉を複数の連携先候補と行うなど海外展開も見据える。今後の事業展望について、福島弘明社長に話を聞いた。(聞き手・末藤潤也)
●ALS治療薬、第3相臨床試験へ準備
──バイオベンチャーに対する個人投資家の関心は非常に高い状態が続いています。直近ではiPS細胞を活用した再生医療等製品の製造販売承認を厚生労働省から取得する企業も現れ、改めて注目が集まりました。
当社は市場規模の大きな開発パイプラインを含む11本のプロジェクトを開発しています。一例として脳梗塞向けの治療薬に関しては、患者数は国内で130万人に上り、市場規模は単純計算で数十兆円規模となります。開発の結果次第で、将来的に企業規模を飛躍的に拡大させるポテンシャルを秘めているのがケイファーマです。
──パイプラインのなかではALS向け治療薬のKP2011の治験がリードしています。
iPS創薬事業で取り組んでいるKP2011については数年以内の上市(市販)が視野に入っています。他社の例となりますが、ALS治療薬はパイプライン1本の買収に約4000億円が投じられる分野です。我々はそれほど事業価値が高い分野においてフェーズ1・2(第1相・第2相臨床試験)で良好な結果を得て、国内導出先であるアルフレッサ ホールディングス<2784>[東証P]傘下のアルフレッサファーマでフェーズ3(第3相臨床試験)に向けて準備を進めている段階です。国内には約1万人の患者がいます。現在、海外進出に向けて交渉を進めていますが、世界での患者数は33万人に上ります。特に薬価が高いアメリカは3万3000人の患者がおり、市場規模が非常に大きいと捉えています。
──亜急性期脊髄損傷向けの「KP8011」の研究開発も進めています。
iPS細胞を使った再生医療の臨床研究として最初に取り組むことを決めたのが、亜急性期の脊髄損傷です。患者数は国内だけで年間6000人に上ります。現在の国内再生医療等製品の薬価は概ね1500万円であり、患者数が6000人とすれば単純計算で市場規模は900億円となります。更に、薬価については今後上がっていく可能性があると考えています。当社では医師主導試験が終わっており、現在は企業治験(フェーズ1・2)に向けた準備を進めているところです。また、患者数についても世界に目を向けると国内の数十倍の規模になります。
──海外展開も視野に入れています。
KP2011は米国や欧州、アジアでの開発に関する提携について、複数社と鋭意交渉を行っているところです。共同で開発を進める、もしくはライセンスを引き受ける相手を探しています。契約締結に結びつけば契約一時金やマイルストーンペイメント、ロイヤルティー収益が計上でき、当社の黒字化は達成できる見込みです。KP8011に関しても興味を持った複数の企業からお声がけをいただいています。これ以外にも医療に貢献できるモダリティー(治療手段)を求め、新領域に関するさまざまな検討を進めています。
●製造販売承認取得で時価総額1000億円超も視野
──昨年11月にはアルフレッサを割当先とする転換社債型新株予約権付社債(CB)の発行と業務提携契約の締結を発表しました。更に今年2月には、ニコン<7731>[東証P]子会社のニコン・セル・イノベーションと企業治験に向けた移植細胞の製造委託について基本合意書を締結しています。
アルフレッサグループはもともと医薬品卸大手であり、医薬品の運搬に強みを持っています。KP8011のような再生医療等製品は生きた細胞であり、病院に輸送するうえで高度な技術・ノウハウが必要であることから、十分な能力を有している同社との業務提携契約を締結しました。ニコン・セル・イノベーションはCDMO(医薬品開発・製造受託企業)です。治験を行うとなるとレギュレーションが厳しくなり、当社が単独で対応するとすれば専門家を100人は増やす必要があるような高いハードルがあります。そのハードルを乗り越えるうえで頼りになる存在がCDMOです。複数社と交渉に取り組んだなかで、ニコン・セル・イノベーションの豊富な経験・ノウハウに惹かれ、契約を締結するに至りました。同社は(CDMOの世界大手である)スイスのロンザ社との関係性も深く、今後のグローバル展開を考えた際に心強い存在と思っています。
──昨年3月に亜急性期脊髄損傷の再生医療に関する慶大医学部の成果発表を受けて株価は1420円まで急騰しました。足もとでは700円台で推移しています。株価水準をどのようにみていますか。
現状の株価には割安感を抱いています。開発パイプラインを複数抱えていることや各パイプラインの市場規模を加味すると、更に評価されてもいいかもしれません。
──時価総額は90億円弱です。将来的にはどの程度まで拡大できると考えていますか。
KP2011が製造販売承認を取得するタイミングでの時価総額は今の10倍以上、1000億円を超える水準へと拡大してしかるべきと考えています。KP2011の上市後は安定した黒字を達成でき、将来的には株主還元として配当を実施できると考えています。もっとも、他プロジェクトの研究開発資金の確保が必要なため、株式還元に関しては2030年代の話になると思っています。まずは粛々と事業を進め、治験を進捗させて製品の承認を取得するといった成果を着実に出していきたいと思っています。
◇福島弘明(ふくしま・こうめい)
株式会社ケイファーマ代表取締役社長。1960年7月生まれ、長崎県対馬市出身。広島大学大学院生物圏科学研究科博士課程修了後、88年4月にエーザイ<4523>[東証P]へ入社した。創薬研究や製品戦略、米国エーザイ・ボストン研究所駐在、人事部などを経験後2014年3月に同社を退社。14年5月から慶應義塾大学講師(非常勤)、15年8月から同大学特任准教授(非常勤)を務める。16年11月にケイファーマを設立し現職。
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