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秋野充成(いちよしアセットマネジメント)が斬る ―どうなる?半年後の株価と為替―

特集
2026年4月14日 10時00分

日米の株式相場が乱高下している。米国とイスラエルが2月末に始めたイラン攻撃を受けて投資家のリスク回避姿勢が強まり、株式相場は不安定になっている。高市早苗首相が率いる自民党が衆院選で大勝し、株高が加速していた日本でも、日経平均株価が急落と急反発を繰り返している。トランプ米大統領が「就任から24時間以内に終わらせる」と豪語したロシア・ウクライナ戦争も収束のメドはつかず、台湾有事を巡る高市首相の発言を受けた日本と中国の対立や米国のインフレ懸念も根強い。

世界の政治経済が混迷を深める中、アナリストやエコノミストなどの専門家は、「半年後の株価」や「半年後の為替」をどう見ているのか。インタビューを通じて、著名アナリストに予測してもらい、その背景を詳報する。第48回は、いちよしアセットマネジメントの秋野充成社長に話を聞いた。

●秋野充成(あきのみつしげ)

1985年第百生命入社。有価証券部にて企業調査及び国内外の株式運用を担当。2000年いちよし投資顧問(現いちよしアセットマネジメント)入社。運用部長、執行役員を経て2020年より取締役。24年4月に社長に就任。

秋野充成氏の予測 4つのポイント
(1) 半年後の日経平均株価は5万8000円程度
(2) 半年後のS&P500株価指数は6800ポイント程度
(3) 現在の世界の株式市場は「トランプ氏を信じられるかどうかのゲーム」
(4) 注目するセクターはAIや量子コンピューターなど含めた広義の防衛、宇宙関連

―― 米国とイスラエルによるイランへの攻撃を受けて、楽観的だった株式市場の雰囲気が大きく変わりました。半年後(2026年10月末)の日米の株価水準をどう予測しますか。

秋野:私は半年後の日経平均株価を5万8000円程度、S&P500株価指数を6800ポイント程度だと予測しています。この半年間で日経平均株価は4万8000~5万8000円程度、S&P500は5800~6800ポイント程度で推移するでしょう。米国・イスラエルが停戦しても原油価格が高止まりすることから、日米の株式相場の上値は重いでしょう。

図1 日経平均株価(週足)

【タイトル】

―― 年後半に向かって株高になるものの、上値は限られるとの見方かと思います。予測の背景を教えて下さい。

秋野:大半の日米の市場関係者が今のところ「トランプ氏が米国経済を壊すことはない」と信じていることが、一定水準の株価を維持できる最大の理由です。市場は「トランプ氏が中間選挙で大敗する原因になることはやらない」「TACO(トランプ氏はいつも腰砕け)だから、イランとの戦争も長期化しない」という読みを前提に考えています。「TACO」などと揶揄されていますが、過ちからの政策転換はむしろ良いことです。

市場はそんなトランプ氏をこれまでも「信認」してきましたし、今も信認しているということです。一方で、市場関係者がトランプ氏を信頼できなくなれば、株価の大暴落につながるでしょう。言い換えれば、現在の世界の株式市場は「トランプ氏を信じられるかどうかのゲーム」になっているということです。

―― トランプ氏への市場の信認が続いても、この半年は株価の上値が限られるのでしょうか。

秋野:その通りです。イラン戦争で湾岸諸国の石油関連設備が破壊されたことが、原油価格が高止まりする理由の1つです。また、3月のダラス連邦準備銀行のレポートによると、ホルムズ海峡の封鎖が今後も続けば、原油の国際指標であるWTI先物相場は今年10~12月期に平均1バレル=132ドルに上昇。10~12月期の世界の実質GDP(国内総生産)は前年同期比1.3%減と、マイナス成長に陥ります。ホルムズ海峡の封鎖がいつまで続くのかはわかりませんが、原油高により企業の利益が圧迫され、株式相場の上値を抑えると考えています。

もっとも、イラン戦争が早期に終結すれば、米連邦準備制度理事会(FRB)は年内に2回程度の予防的な利下げができるため、株式相場を押し上げるでしょう。

図2 S&P500株価指数(週足)

【タイトル】

―― テールリスク(確率は低いが発生すると影響が大きいリスク)に当たりますが、市場関係者がトランプ氏を信認できなくなることも考えられますか。

秋野:テールリスクの1つは、米国・イスラエルとイランが決裂して戦闘が激化し、ホルムズ海峡の封鎖が長期化する場合です。そうなれば、原油価格が大幅高となり、米国が物価上昇と景気後退が併存する「スタグフレーション」に陥るリスクがあります。高インフレに伴い金利がさらに上昇すれば、金融市場で不安が広がっている米国のプライベートクレジット(ノンバンク融資)問題も顕在化し、資金流出が加速します。そうなれば、2008年秋のリーマン・ショック時のような金融システム不安や世界的な株価の暴落、長期間の調整につながるリスクがあります。

―― テールリスクが実現した場合、リーマン・ショック級の暴落となる可能性があるということでしょうか。

秋野:リーマン・ショックの際の日経平均株価のPER(株価収益率)は9倍程度まで落ち込みました。現在の日経平均株価が同程度になった場合、2万2000円まで下落することになります。とはいえ、プライベートクレジットはリーマン・ショック時のサブプライムローンのように証券化してレバレッジをきかせているわけではありません。急速に問題が深刻化する可能性は低いと考えています。

―― テールリスクは他にもありますか。

秋野:トランプ大統領への信認が地に落ちる場合が考えられます。例えば今秋の中間選挙で予想以上に大敗して弾劾されたり、そもそもトランプ氏が選挙をやらないと言い出したりするケースです。これまで株式相場はトランプ氏の経済政策に期待し、いわばトランプ氏を利用して上昇してきましたから、仮にそうなれば大きなリスクになります。

―― リーマン・ショックなど過去の経済ショックや株価暴落の際は、FRBなど世界の中央銀行が政策金利の引き下げや短期金融市場での流動性供給などを通じて金融機能や景気回復を図ってきました。

秋野:リーマン・ショック時と違い、現在は高インフレが定着し、金融緩和がしづらい状況です。当時のような大量の資金供給や利下げといった金融緩和で景気を下支えすることは難しいでしょう。こうした意味では、当時よりも景気回復の処方箋が限られているといえます。

―― 注目するセクターや銘柄を教えて下さい。

秋野:日米ともに防衛関連銘柄です。防衛といっても武器を製造する企業だけではなく、宇宙開発、海洋開発、港湾、AI(人工知能)や半導体、量子コンピューターなど多くの業種が対象となります。三菱重工業 <7011> [東証P]やIHI <7013> [東証P]、川崎重工業 <7012> [東証P]など防衛関連大手だけでなく、こうした超大手企業に部品などを供給する日本製鋼所 <5631> [東証P]や放電精密加工研究所 <6469> [東証S]、日本アビオニクス <6946> [東証S]といった銘柄に注目しています。かつては「下請け」企業は利幅が薄いのが一般的でしたが、現在はインフレや人手不足もあり、十分に利益が出る構造になってきています。AIでは半導体やデータセンター、光ファイバーなどにさらに光が当たるようになるでしょう。

(※聞き手は日高広太郎)

◆日高広太郎(ジャーナリスト、広報コンサルティング会社代表)
【タイトル】
1996年慶大卒、日本経済新聞社に入社。東京本社の社会部に配属される。小売店など企業ニュースの担当、ニューヨーク留学(米経済調査機関のコンファレンス・ボードの研究員)を経て東京本社の経済部に配属。財務省、経済産業省、国土交通省、農水省、日銀、メガバンクなどを長く担当する。日銀の量的緩和解除に向けた政策変更や企業のM&A関連など多くの特ダネをスクープした。第一次安倍内閣時の独ハイリゲンダムサミット、鳩山政権時の米ピッツバーグサミットなどでは日経新聞を代表して同行取材、執筆。東日本大震災の際には復興を担う国土交通省、復興庁のキャップを務めた。シンガポール駐在を経て東京本社でデスク。2018年8月に東証1部上場(現プライム市場)のB to B企業に入社し、広報部長。2019年より執行役員。2022年に広報コンサルティング会社を設立し、代表に就任。ジャーナリストとしても記事を複数連載中。2022年5月に著書「B to B広報 最強の戦略術」(すばる舎)を出版。内外情勢調査会の講師も務め、YouTubeにて「【BIZ】ダイジェスト 今こそ中小企業もアピールが必要なワケ」が配信中。

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