日経平均最高値で6万円台接近、転換点制するETF活用の配分戦略 <株探トップ特集>
―AI・半導体関連への資金流入は続くのか、局面変化を見極め収益拡大の好機に―
日経平均株価が過去最高値を更新し、6万円台に接近した。イラン紛争の終結シナリオの織り込みが進み、底堅い企業業績への期待感も加わって、AI・半導体関連株を中心に資金流入が顕著となっている。もし投資家が、これまでの見立てと異なる基調的な変調に直面しているのであれば、ポートフォリオを組み替える必要がある。個人投資家がアセットアロケーション(資産配分)を調整する際には、ETF(上場投資信託)を活用することが選択肢の一つとなる。今回の株探トップ特集では、マーケットの方向性に応じてどのETFを活用するのが効果的なのか、整理していく。
●個人投資家のアロケーション方法
証券投資の際のポートフォリオとは、金融資産・商品の組み合わせのことを指す。シンプルなものとしては、株式と債券(銀行預金でも同じ)の2資産があり、高リスク資産と低リスク資産(または安全資産)の組み合わせからなる。すべてを高リスク資産に投じた場合、高リターンが狙える半面、リスクも高くなる。一方、すべてを低リスク資産に投じた場合、リスクは小さくなるものの、高リターンは期待できない。ポートフォリオ作成の肝は、リスク許容度とリターン目標を決定することにある。
ここで、株式と債券を均等に組み入れるポートフォリオを考えてみよう。保有する金融資産総額に対して、株式50%、債券50%という組み合わせだ。基本ポートフォリオを維持し続けることも重要だが、経済・金融情勢の変化によって一時的に組み合わせを変えることも可能だ。今後は株式が有利だと判断するなら、債券の一部または全部を売却し、株式を買い増すことが理にかなっている。一方、今後は株式が不利だと判断するなら、株式の一部または全部を売却し、債券を買い増すことが理にかなう。
このようにアセットアロケーションを変更する場合、最低売買単位の制約(資産を小分けにして売買できないという制約)が問題となる。巨額の資金を運用する機関投資家ならいざ知らず、運用金額が少額となる個人投資家には頭の痛い問題だ。そこで、株式の代用として株価指数に連動するETFを、債券の代用として銀行預金を充てれば、資産配分の変更が容易になる。
以下、ETFを活用したケーススタディを行う。東京証券取引所に上場しているETFは400銘柄を超え、連動対象指数の重複も多い。銘柄選択に際しては市場流動性を重視し、でき得る限り純資産額上位の銘柄を代表例として取り上げることとする。なお本稿では取り上げないが、株価指数先物・オプションの取引口座があれば、より多様な戦略・戦術が可能になる。
●ケース1:株価が上昇すると考える場合
株価が上昇すると考えるなら、安全資産の比率を下げ、株式連動資産の比率を上げるという行動が最適となる。市場全体を代表する株価指数に連動するETFを購入し、銀行預金を解約することで、資産配分を変更することができる。また、ETFを信用取引で購入すれば、実質的な株式エクスポージャーは増加する。
日本の株式市場を代表する指数としては、TOPIX(東証株価指数)と日経平均株価が挙げられる。ETFの純資産額が大きいのはTOPIX型だが、金融市場の安定化目的で買い入れた日本銀行保有分(70~80兆円規模)が含まれることも大きな要因となっている。NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信 <1306> [東証E]や、上場インデックスファンドTOPIX <1308> [東証E]、iFreeETF TOPIX(年1回決算型) <1305> [東証E]の3本はTOPIXに連動する。NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信 <1321> [東証E]を含む4本は、いずれも純資産額が10兆円を超える。
S&P500指数、NASDAQ-100指数、ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価など米国株式市場の指数に連動するETFもある。純資産額の大きい順に、State Street SPDR S&P500 ETF <1557> [東証E]、NEXT FUNDS NASDAQ-100(R)(為替ヘッジなし)連動型上場投信 <1545> [東証E]、NEXT FUNDS ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価(為替ヘッジなし)連動型上場投信 <1546> [東証E]などがある。
米国以外の市場を含めるなら、MSCIオール・カントリー・ワールド指数に連動するMAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信 <2559> [東証E]がある。日本株を除く外国株指数として年金基金などの採用が多いMSCI-KOKUSAI指数に連動するNEXT FUNDS 外国株式・MSCI-KOKUSAI指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信 <2513> [東証E]も使い方によっては有用だろう。
●ケース2:株価が下落すると考える場合
株価が下落すると考えるなら、株式連動資産の比率を下げ、安全資産の比率を上げるという行動が最適となる。つまり、株価指数に連動するETFを売却し、銀行預金に移すことで、資産配分を変更することができる。そのためには、株式連動資産として事前にETFを保有している必要がある。なお、一般的な株式の「コア・サテライト戦略」では、70~80%を長期安定保有のインデックス運用、20~30%を戦略的な個別株式によるアクティブ運用とするのが基本とされているが、リスク管理の観点でこの比率を見直すという手段もある。
●ケース3:株価が大きくは動かないと考える場合
株価が停滞すると考えるなら、基本ポートフォリオを維持すればいい。大きな上昇も大きな下落もないと考えるなら、下手に動く必要はないだろう。ただし、そのような局面でリターンを上乗せする手法もある。欧米の富裕層にはよく知られている「カバード・コール」戦略だ。主に外国株型ではあるが、東証でもETFがいくつか登場している。
カバード・コールとは、原資産の保有とコール・オプションの売りを組み合わる戦略で、株価の値上がり益を諦めて、オプションのプレミアム獲得を目指すものだ。オプションとは、あらかじめ決められた期日に、あらかじめ決められた価格で売買する権利のことで、買う権利をコールと呼ぶ。コールの買い手にとって、株価上昇時に利益は理論上無限大、株価下落時には投資金額の範囲で損失が発生する。一方、コールの売り手にとっては、相場上昇時は損失が無限大、相場下落時には売却代金の範囲で利益を得る。
オプション価格の算出には、本源的価値(原資産時価と行使価格との差)に加え、時間価値(満期までの期間)や価格変動性(ボラティリティ)などからなるプレミアムが付加されている。単純化すると、原資産の価格が動かず、時間が経過し、オプションが行使されなければ、コール・オプションの売り手はプレミアムを丸々懐に入れることができる。
株価が上昇すれば、コール・オプションは損失となるが、保有する原資産の値上がりでカバーできる。株価が横ばいなら、プレミアム分が利益となる。プレミアム分を超えて株価が下落すれば、損失となる。つまり、株価が一定の範囲内で動いている限りにおいて、原資産の保有だけよりも利益が上乗せされる戦略とも言える。
グローバルX S&P500・カバード・コール ETF <2868> [東証E]は、S&P500指数を原資産に、「Cboe S&P 500 バイライト Index(円換算)」に連動させるETFである。分配金の変動要因は、コール・オプションの獲得プレミアム水準(ボラティリティの大きさ)と為替換算差損益などである。過去1年間の実績分配金を直近の基準価額で割った分配金利回りは約8.8%だ。
グローバルX NASDAQ100・カバード・コール ETF <2865> [東証E]は、NASDAQ-100指数を原資産に、「Cboe NASDAQ-100 バイライト V2 Index(円換算)」に連動させるETFだ。原資産の相対的なボラティリティの高さゆえ、高利回りが期待できるのが特長。過去1年の分配金利回りは約9.7%に達する。
新顔ではあるが、「Cboe S&P 500 エンハンスト 1% OTM バイライト NTR 指数(円建て)」に連動するiシェアーズ S&P 500 プレミアムインカム ETF <452A> [東証E]、「Cboe TLT・2% OTM・バイライト・インデックス(国内投信用、円建て)」に連動するiシェアーズ 米国債20年超 プレミアムインカム ETF <453A> [東証E]も注目される。トラックレコードや流動性の乏しさはあるものの、特に後者は超長期国債のカバード・コール戦略で、リスク特性が株式と異なる点には注目しておきたい。
●ケース4:リスクを分散したいと考える場合
ポートフォリオの基本は、リスク資産と安全資産の組み合わせにあるが、リスク資産の中での資産クラスの構成・分散も重要な論点だ。株式において国内株式に海外株式を加えた国際分散投資が一般的になってきたのと同様、株式とは値動きが異なる資産を組み入れるのも有効だ。不動産や商品などもリスク分散の有力候補に挙げられる。
不動産ファンドは、多くの機関投資家が組み入れており、一定のインフレ耐性を持つ点が特長だ。個人投資家には、不動産賃貸利益を分配原資とするREIT(不動産投資信託)が分散投資に好適だろう。不動産価格の変動は、含み損益の増減を通して価格に反映されるが、基本は賃貸利益による分配金利回りに着目した投資商品である。
国内REITの代表的指数である東証REIT指数に連動するよう設計されたETFが多数上場している。その中から、純資産額が大きいものとして、NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信 <1343> [東証E]や、iシェアーズ・コア Jリート ETF <1476> [東証E]を挙げておく。いずれも年に4回の分配がある。
商品市況に連動するETFも数多く上場している。WTI原油先物の直近限月の清算値を円換算で表示した価格に連動するWTI原油価格連動型上場投信 <1671> [東証E]、NOMURA原油ロングインデックスに連動するNEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信 <1699> [東証E]などが代表的だ。
更に、貴金属は株式や景気動向と連動しない代表的な商品であり、市場の先行き不透明感が高まると、資金逃避先として注目を集めることが多い。金には保管コストがかかり、金利が付かないため、高金利の時期には相対的に魅力度が落ちるが、インフレヘッジになるとされている。SPDRゴールド・シェア <1326> [東証E]は、代表的な金価格連動ETFだ。純金上場信託(現物国内保管型) <1540> [東証E]は、委託者である三菱商事 <8058> [東証P]が国内に純金現物を保管するタイプのETFである。一定の受益権口数を保有していれば、受益権と引き換えに貴金属地金の現物を受け取ることも可能である。純銀上場信託(現物国内保管型) <1542> [東証E]は、上記と同様に純銀現物を国内保管するタイプ。銀の場合は、金と比べた値動きの激しさも特色となっている。
このほか、株価指数全体のレバレッジを掛ける方法として、レバレッジ型・インバース型のファンドを活用する方法もある。レバレッジ型では指数の動きと同じ方向で2倍、インバース型では指数とは逆方向に1倍、ダブルインバース型では逆方向に2倍の値動きがあるよう設定されている。ただし、ファンドの仕組み上、中長期的な保有には適さないことに注意が必要だ。
株探ニュース