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エヌビディア決算が拍車かけるか「上がっても下がっても買い」の上げ相場<小川浩一郎・米国株"上昇のナラティブ">

特集
2026年5月20日 10時00分

◆高値更新街道ばく進中の米国株、今は買い場なのか、それとも調整を待つべきか

米主要企業の2026年1-3月期決算が出揃った。イラン情勢は収束したとは言えないが、半導体を始めとしたAI(人工知能)インフラ企業の好決算がけん引し、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は高騰、つれてナスダック総合指数 S&P500種指数 など主要指数が高値を更新し続けるなど、米国株市場は上昇基調を維持している。

一方、注目された米中首脳会談は大方の予想どおり、年3回の開催が予定されている今後の会談の前哨戦的な内容で大きなサプライズはなく、株式マーケットへの影響は軽微なものとなっている。地政学とは別に、株式マーケットにとっては大きなリスク要因となる可能性があったFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策についても、先日、議会の承認を受けたケビン・ウォーシュ次期議長のこれまでの言動を見る限り、当初危惧されていたタカ派的な印象はなく、より緩和的なものになると見ていい。

ただし、現在の米国経済には物価上昇に向かう要因と物価を抑制する要因が併存している。物価上昇の要因は、イラン攻撃とホルムズ海峡封鎖による原材料価格の上昇に加えて、トランプ政権による"ばらまき財政"とAI投資の急拡大の影響がある。半面、AIの社会実装に伴う企業の生産性の向上と、大手ハイテク企業で進む大規模リストラは、物価抑制の要因となり得る。この点は今後の米国株市場を占う意味で極めて重要な意味を持つので詳しくは後述したい。いずれにせよウォーシュ氏には、相反するベクトルが同時進行する中で、インフレのリスクをいかにコントロールしていくかという難しいかじ取りが求められるのは確かだ。

ではこうした状況を踏まえ、今後の米国株への投資をどう考えていけばいいのだろうか。3月30日の底値から、S&P500種指数は16%超、ナスダック総合指数は25%超、SOX指数に至っては58%超の上昇となっている(いずれも5月18日終値)。ここまで上昇した局面で、これから買ってもいいのか、それとも調整を待った方がいいのか。多くの投資家が答えを求めるこの問題を考えていきたい。

◆"AIリストラ"の進展で、AI相場は次のフェーズに移行

結論を先に述べると、現在の米国株は、「上がったら買い、下がっても買い」でいい。なぜなら、極端に聞こえるかもしれないが、米国株は"半永久的"な上昇相場に突入していると考えるからだ。少し長いスパンで、2016年末以来の米国主要指数の上昇率を見てみると、多少の調整を経ながらも、ナスダック総合指数はドル換算で約4.5倍、S&P500種指数は3倍超、円換算にすればそれぞれ6倍超と4倍超の上昇率を示している。俯瞰すれば、米国株市場はこうした長期上昇相場の途上にある。

昨年来、ドットコムバブル時との相似を指摘する声が聞かれるが、足もとの株価高騰は、決算通過後の業績主導によるものであり、極端なPER(株価収益率)の拡大は見られず、バブル的な要素はほとんどない。何と言ってもAI相場は始まってまだ3年を経たに過ぎず、その社会的なインパクトを考えれば相場がまだまだ若い。

こう言えるのは、現在の米国経済で進んでいる大きな潮流の変化があるからだ。今回の決算では、アマゾン・ドット・コム<AMZN>、マイクロソフト<MSFT>、アルファベット<GOOG>、メタ・プラットフォームズ<META>のハイパースケーラー4社が設備投資額をさらに積み上げ、総額7250億ドルの規模となったことが注目を集めた。だが、この陰で進んでいる各社の取り組みにこそ、米国経済の潮流変化を示す要因がある。

AI相場というと、膨大な設備投資額にばかり目を奪われがちだが、実はハイパースケーラー各社は、この間、大規模なリストラを実行している。今回の決算でもメタが全従業員の10%にあたる8000人の人員削減を公表したのに続いて、マイクロソフトも米国勤務の従業員の7%を対象とした創業以来初となる希望退職プログラムを発表するなど、各社から具体的な人員削減計画が出されている。IT産業全体でみると、従業員数は22年11月から25年4月までに約11%減少している。

これが何を意味するのかを読み解くことが、今後の米国株投資を考えるうえで極めて重要になる。昨年来の"AIバブル論"の根拠となっていたのは、あまりに巨額過ぎるAI投資額が果たして回収可能なのか、持続可能なのかという視点だった。だが、現在各社が進めているリストラは、AIの社会実装が始まったことにより、企業が生産性を向上させられることが実証されたことを示している。つまり、これまで度々、言われていたAIが人間に置き換わっていく流れが本格化しているのだ。

データセンターなどAI投資をすると企業の生産性が上がる。企業は生産性が上がるから人員を削減することができる。すると株式市場が好感し、さらなる資金が企業に集まる。集まった資金を企業は再びAI投資に回す、という流れだ。この循環が進んでいることが、米国株上昇の根底にある。

加えて株式市場にとってポジティブなのは、近年、大手ハイテク各社が自社株買いを強化し続けていることだ。アップル<AAPL>はAI投資レースからは一歩身を引いているが、自社株買いには積極的で、現在はピーク時から40%以上も発行済み株式数が減少している。マイクロソフトや半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズ<AMAT>も年々、発行済み株式数を減らし、株価の下支えをしている。

この結果、どんな現象が生まれるのか。いま、米国では経済の「K字化」が進んでいると言われるが、これらの循環の行き着く先は、AIを使いこなすスーパーエリート層と、彼らが動かすAI企業に投資をする者が生き残るという社会だ。残念ながら、多くの凡庸なホワイトカラー層は淘汰されるしかない。確かに、働く側から見れば"恐怖"だが、この循環は、こと株式市場にとってはポジティブ以外の何物でもない。これが現在の米国経済、そして米国株式市場の根底を流れる大きな変化なのだ。

◆再びGPUに脚光、久々にエヌビディアの好決算が市場を動かすか

こうした株高を促す好循環が続く中で、次なる注目ポイントは、5月20日(現地時間、日本時間5月21日未明)に発表されるエヌビディア<NVDA>の決算となる。年初来、上値が重い局面が続いた同社だが、5月に入って高値を更新し続けるなど、久しぶりに上昇基調を取り戻している。これは、GPU(画像処理半導体)、ASIC(カスタム半導体)、メモリー半導体、CPU(中央演算処理装置)と続いたAI半導体セクターの物色拡大が一巡し、再び株式市場の焦点がGPUに向けられてきたことによる。

増加し続けるハイパースケーラーの投資額を考えても、好決算はほぼ既定路線だが、直近2回の四半期決算では、いくら好決算を発表してもマーケットは反応しなかった。だが、"休養十分"かつPERを利益成長率で割ったPEGレシオも0.6倍台と、割安過ぎる水準にある同社だけに、今回ばかりは発表後の株価の反応にも期待が持てる。

注目点は、次世代AI半導体「ルービン」の開発状況と中国市場の再開、そして同社が投資をしているコーニング<GLW>やルメンタム・ホールディングス<LITE>などを含めたAIエコシステムの進展だ。ガイダンス(業績予想)を含めて市場が期待する以上の内容を示すことができれば、「やはり凄い」と再評価が進み、改めて同社を核としたAI相場活性化の流れが巻き起こるのではないか。

さらに6月12日(現地時間)にナスダックへの上場が報じられたスペースXも、株式市場の大きな刺激材料となるだろう。やはり今回の上場劇で注目したいのは、イーロン・マスク氏の動向だ。昨年はあれだけ世間を騒がせたマスク氏だが、トランプ政権から離れ、テスラ<TSLA>のEV(電気自動車)販売不振などもあって、今年に入ってからはメディアでの露出を控えている。元来、根っからのエンジニアでもあり実業家でもある彼が、事業に専念した時には、何か大きなイノベーションを生み出す前兆だと見ていい。

すでにAI企業のxAIやソーシャルメディアのXがスペースXに統合されることは発表されているが、今後は彼が率いるテスラを含めた様々なハイテク企業の再編も噂されており、次世代に向けた一大イノベーション拠点として、その一挙手一投足がマーケットの注目を集めるだろう。

◆過熱感なしの半導体製造装置セクター、宇宙に投資ならこの銘柄

他の個別銘柄に視線を移すと、足もとで最も妙味を感じるのが、半導体製造装置セクターのアプライド・マテリアルズ、ラム・リサーチ<LRCX>、KLA<KLAC>の米国大手3社、そしてオランダの半導体露光装置最大手のASMLホールディング<ASML>だ。アプライド・マテリアルズを筆頭に、米国の大手3社はいずれも直近の四半期決算が市場予想を上回る結果で着地。ASMLは従来の製品の倍以上の販売単価となる次世代露光装置の投入計画を発表したものの、いずれもマーケットの反応は限定的で過熱感は全くない。

4社に共通することは、株価チャートが美し過ぎることだ。この1年を通して、75日移動平均線や200日線が、大きな調整もなく、見事なまでに右肩上がりのチャートを描いている。この株価推移の背景には、大手機関投資家の長期資金の流入があると見ていい。彼らは短期資金とは異なり、これぞと思った銘柄には、まさしく「上がったら買い、下がっても買い」で対処している。次のフェーズに突入したAI相場とは言え、ブロードコム<AVGO>やマイクロン・テクノロジー<MU>、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ<AMD>、インテル<INTC>など半導体デバイスメーカーの株価に過熱感が出てきた中で、最も堅実な投資対象と言えるのではないか。

さらにテキサス・インスツルメンツ<TXN>、オン・セミコンダクター<ON>、アナログ・デバイセズ<ADI>などのパワー半導体やアナログ半導体も有望だ。足もとではAI半導体の物色拡大によって株価は上昇しているが、さらなる上値余地を感じる。AIデータセンター建設の本格化によって電力制御の必要性が増すこと、在庫調整を終えたEVが今後、ガソリン価格高騰によって見直され、販売が上向くことが期待できるためだ。

「SaaSの死」の全面安から、選別物色対象に転換しつつある企業にも注目したい。筆頭はパランティア・テクノロジーズ<PLTR>だ。好決算を発表しながらもPERが高く、昨年の急騰の反動からか株価は好転していないが底堅く推移、下げ渋った状態にある。もう少し辛抱が必要かもしれないが、技術力にかけては他社の追随を許さない企業でもあるので、買い場が訪れる日は近いのではないか。

この分野では、すでに株式市場で再評価されている企業もある。セキュリティ大手のクラウドストライク・ホールディングス<CRWD>、パロ・アルト・ネットワークス<PANW>、データ分析のデータドッグ<DDOG>、モンゴDB<MDB>といった企業だ。これまで、ソフトウエア業界の代表的な企業と目されていたサービスナウ<NOW>やセールスフォース<CRM>の株価が依然として低迷を続けていることを考えれば、いまのマーケットがAIによる事業への影響を精査し、厳密に選別を進めていることが分かる。このマーケットの判断に従うのも、一策と言えるだろう。

最後に挙げたいのは、宇宙関連の有望銘柄を組み入れたETF(上場投資信託)、「プロキュア スペースETF」<UFO>だ。足もとではすでに、宇宙関連の各企業は株式市場で高い評価を受けている。世界中で進む防衛強化やAI進化によるデータ需要拡大などによって、かつてのような「夢物語」ではなく、実需の伴った"現実買い"のステージに突入しているのだ。この点、衛星通信からロケット、ロボティクスなど、スペースXの上場によって大ブームになることが確実視される宇宙セクターを網羅したこのETFに魅力を感じるのは、必然と言えるのではないだろうか。

【著者】

小川浩一郎(おがわ・こういちろう)

岩井コスモ証券投資調査部長/チーフアナリスト

1967年生まれ。外資系コンサルティング会社で戦略立案、M&Aアドバイザリー等に従事した後、投資ファンドで投資実務や資産運用に携わり、2006年、岩井コスモ証券に入社。現在は米国株式を中心に外国株式に関する業務全般を担当。テレビ東京「Newsモーニング・サテライト」、インターネット配信「ストックボイス」等に随時、出演。長年の市場分析経験を生かしたストーリー性のある銘柄・セクター分析に定評がある。社団法人・日本証券アナリスト協会検定会員、米国公認会計士・米国証券アナリスト・有資格者。

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