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追い風強まる「蓄電池」関連、非常用電源で新たなる成長の萌芽 <株探トップ特集>

特集
2024年8月13日 19時30分

―「次世代電池」に「浮体式洋上風力発電」、大海原のごとき活躍の舞台広がる―

「蓄電池」関連株に強い追い風が吹いている。次世代電池の本命と言われる ペロブスカイト太陽電池の世界的な普及拡大が予想されるなか、つれて電力の需給調整に不可欠な蓄電池へのニーズがいっそう高まることになりそうだ。また、政府が計画する「浮体式洋上風力発電」設置でも、大海原ともいえる活躍のステージが広がっている。株式市場が波乱の展開にある今だからこそ、近い将来に活躍必至のセクターに目を配っておくというのは投資セオリーの基本ともいえそうだ。蓄電池関連株のいまを点検した。

●“ペロブスカイト”拡大の波に乗る

カーボンニュートラル実現に向け、太陽光や風力など再生可能エネルギーの普及が急速に進む過程で、蓄電池関連株には折に触れ投資家の熱い視線が注がれてきた。また、日本では水害をはじめ大規模な自然災害が頻発化しているが、ここにきては、「巨大地震注意」が出たことで、停電した際などの非常用電源としても急速に存在感を高めている。

こうしたなか、蓄電池関連株には新たな追い風が出現している。その一つが、世界各国で開発競争が繰り広げられているペロブスカイト太陽電池の存在だ。同電池は、「薄く、軽く、曲がる」特性を持ち、ビルの窓をはじめ設置場所も柔軟なことで、現在は中国などが主流のシリコン製に代わり主役の座に躍り出ることが期待されている。「ペロブスカイトは、間違いなくゲームチェンジャーになる」(太陽電池メーカー広報)との声も多く、株式市場でも非常に注目度が高い分野だ。

ペロブスカイト太陽電池については、積水化学工業 <4204> [東証P]が来年の事業化に向けた動きを加速させており、パナソニック ホールディングス <6752> [東証P]や東芝など日本を代表するメーカーが商用化に向けてしのぎを削っている。ここで重要な役割を担うのが蓄電池だ。 太陽光発電をはじめとした再生可能エネは、発電量が天候に左右されやすいというウィークポイントがあった。しかし、電力需給コントロールで活躍する蓄電池の登場が、この問題を解決する手段として大きな期待を集めている。ペロブスカイト太陽電池は、利便性の高さから設置可能な場所が大幅に増加することになり、これに伴って蓄電池の需要拡大につながる可能性が高い。

●「骨太方針」にも明記

また、政府が6月に閣議決定した、いわゆる「骨太方針2024」では、ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力などの目標及び革新技術の開発と社会実装の早期実現に向けた支援を行うとしている。加えて、「電力の安定供給に向けて、蓄電池の導入による調整力の確保や出力制御の抑制に取り組む。蓄電池などの国内生産基盤の拡充や次世代蓄電池の技術開発を支援する」と明記した。現在、日本は海洋国家の利点を生かし、洋上風力発電の建設や計画が相次ぐが、大規模な電力供給が予想されるなか、ここでも蓄電池の活躍のフィールドは広がることになる。

●「防災関連」の一角に躍り出る

8日に、宮崎県沖の日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が発生した。これを受けて、気象庁は南海トラフ地震の想定震源域では大規模地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっているとして、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表。巨大地震への不安が高まるなか、蓄電池は災害発生時に万が一にも停電となった場合の非常用電源としても活用できることで、防災関連株の一角としても急速に熱い視線が注がれている。

家庭用の蓄電池関連では、太陽光発電による電気を家庭や電気自動車(EV)にも活用できる「トライブリッド蓄電システム」などが伸長するニチコン <6996> [東証P]や、トヨタ自動車 <7203> [東証P]の「おうち給電システム」向けに、ハイブリッドパワーコンディショナーなどの供給で脚光を浴びたダイヤモンドエレクトリックホールディングス <6699> [東証P]への関心が高い(14日に決算発表予定)。トヨタの同システムは、蓄電池を家庭に設置することで、災害が起きた際の停電時において家全体に電気を供給することができるものだ。

ニチコンが6日に発表した25年3月期第1四半期(4~6月)の連結経常利益は、前年同期比58.8%減の14億4300万円と厳しい滑り出しとなった。家庭用蓄電システムについては、市場在庫過多などの影響を受けたとしつつ、東京都の太陽光パネル設置義務化条例をはじめ各自治体による再生可能エネ設備の設置義務化や、電力の自家消費意識の高まりに加え、新製品の投入などで回復を見込むという。ダイヤHDは、子会社のダイヤゼブラ電機が東京電力ホールディングス <9501> [東証P]との共同研究製品・マルチリンク蓄電システム「EIBS V(アイビス・ブイ)」を5月に出荷開始した。また、同じく共同研究している「EIBS Va-1(アイビス・ブイエーワン)」についても今夏に発売予定で、蓄電分野にスポットライトが当たるなか、目が離せない存在といえそうだ。

独立系半導体商社のマクニカホールディングス <3132> [東証P]は6月、傘下のマクニカが家庭用鉛蓄電池システム「soldam(ソルダム)」を開発し、試作品が完成したことを発表。今秋をメドに同製品の受注開始を発表していたが、同月には生産の都合により受注開始の延期を発表した。とはいえ、安い・安全・長持ち・ほぼ100%リサイクル可能なソルダムへの期待は大きく、注目は怠れない。また、同社はペロブスカイト太陽電池の開発者である宮坂力・桐蔭横浜大学特任教授が代表を務めるペクセル・テクノロジーズ(川崎市麻生区)と、同太陽電池と蓄電池の社会実装に向けた実証や普及啓発に関しての連携協定を締結。ペロブスカイト太陽電池関連株の一角としても頭角を現している点は見逃せない。

●参入相次ぐ「系統用蓄電池事業」

一方、系統用蓄電池事業には、企業の参入が相次いでいる。系統用蓄電池は比較的大規模なものが多く、電力系統に直接接続されることで電力需給コントロールへの対応に使われる。電力が比較的安価な時間帯に蓄電し、電力需要の大きい時間帯などに放電し収益を得る事業モデルで、電気事業法では、1万キロワット以上の系統用蓄電池から放電する事業を「発電事業」と位置付けており、新たなビジネスとして注目されている。

今月6日には、リース大手の三菱HCキャピタル <8593> [東証P]が、グループの三菱HCキャピタルエナジーとサムスン物産(韓国ソウル市)が系統用蓄電池事業に関する合弁契約を締結したと発表。今後、両社が出資する特別目的会社(SPC)を通じ、北海道電力管内の系統用蓄電池事業を推進していくという。同事業は、蓄電池の充放電を行うことで電力需給を安定化させることを目的とし、出力25メガワットの系統用蓄電池の建設を25年4月に開始予定、27年1月の運転開始を目指す。同社が先週末9日に発表した25年3月期第1四半期(4~6月)の連結経常利益は、前年同期比30.4%増の492億3900万円で順調スタート。

アストマックス <7162> [東証S]は昨年9月、不動産リースを手掛ける芙蓉総合リース<8424>ほか1社との合同会社であるDAXで大規模系統用蓄電池事業を開始することを発表した。同事業は、北海道札幌市の用地に系統用蓄電池を設置し、25年10月30日の運転開始を予定している。アストマクスは、系統用蓄電池事業について中期ビジョンでも優先課題の一つとしており、蓄電池を活用した事業・ビジネスの拡大を推進し、この分野での攻勢を強める構えだ。なお、同事業については具体的な事業化を複数件検討中だという。同社は商品先物関連(投資顧問や自己勘定投資)を祖業とするが、最近は電力取引事業に経営の重心を移している。同社は1日、25年3月期第1四半期(4~6月)の連結決算を発表し、経常利益は前年同期比13倍の3億2300万円と大幅な増益となった。

太陽光発電・風力などグリーンエネルギーを手掛けるAbalance <3856> [東証S]も、昨年4月に子会社の系統用蓄電池事業参入を発表。今年1月には、北海道でパートナー企業とSPCを組成し、電力需要の高い時間帯や停電時などに備え、安定的な電力供給を可能とする。業績も好調で、24年6月期通期は連結経常利益をはじめ利益面でいずれも過去最高益を更新する見通し。14日には決算発表を控えており、注目が集まりそうだ。

ダイヘン <6622> [東証P]は小型変圧器、アーク溶接機でトップクラスだが、系統用蓄電池向け製品開発にも注力している。同社は今年2月に、再生可能エネの大量導入に向けた電力系統の調整力として需要が拡大する「系統用蓄電池」の設置面積の大幅な削減につながるユニット型パワーコンディショナーを開発したと発表。系統用蓄電池事業への参入が増えるなか熱い視線が向かっている。また、5月には自家消費型太陽光発電向け「蓄電池パッケージ」の開発も発表した。同製品は、独自設計により導入・設置にかかるコスト・面積を大幅に削減するという。

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