明日の株式相場に向けて=インフレ・スイッチが入った不動産関連
きょう(28日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比594円安の4万168円と急反落。前日の欧米株がほぼ全面高様相で、世界株高モードのなかでバトンが回ってきたが、配当権利落ちに伴う下げ圧力には抗(あらが)えず出足からつまずいた。というより配当落ち分である約264円の下押し圧力に二重三重の売りが加わる形となってしまった。日経平均の下落幅は一時700円超の下げ、大引けで全体の8割強の銘柄が下落した。
想定外の荒れた値動きとなったが、そのなか昨日の流れを引き継いで強さを発揮したのが不動産セクターだった。住友不動産<8830>は嵐の中で終始強さを発揮、一時243円高の5745円まで上値を伸ばし上場来高値を更新。株式3分割で注目された三井不動産<8801>も一時は高く推移し、実質上場来高値を更新した。大手不動産株が上値を慕うなか、中小型株にも投資マネーが食指を動かしており、この流れを上手く捉えたいところだ。
個別にみると、前日に取り上げたグッドコムアセット<3475>やコスモスイニシア<8844>以外にも上値期待十分と思われる銘柄が少なくない。この2銘柄の共通点はPERが低く、株価が3ケタ台に位置していることであり、個人投資家の立ち位置から見れば買いやすさが意識されやすい。実際、不動産流動化ビジネスに関わる銘柄は低PER銘柄の宝庫でもある。金利や景気動向などその時の外部環境によって業績が左右されやすく、固有の潜在成長力を織り込みにくい点が、PERが低く抑えられている背景にあるようだ。しかし、足もとの環境はインフレ期待を背景に風向きが強力なフォローウインドへと変わった感触がある。低PER修正に動くなら今しかないという雰囲気が漂う。
まず、株価3ケタ台の銘柄ではアーバネットコーポレーション<3242>に着目。人気化したグッドコムAと同様に都内で投資用マンションの開発・販売を展開するが、同社はワンルームマンションに特化し、法人向けに1棟単位の販売を手掛ける。株価400円台でPER8倍台。4.8%弱という配当利回りの高さも魅力だ。
このほか、1000円未満の中低位株ではトラストホールディングス<3286>やエストラスト<3280>が穴株的魅力を満載しており面白い。トラストHDは新築分譲マンションも手掛けるが、主力は駐車場を投資家向けに小口販売するというユニークな業態。同社が地盤とする九州はTSMC効果による熊本バブルが話題のほか、訪日客の玄関口である福岡県などインバウンド観光の要衝エリアで時流に乗っている。また、マンション開発を手掛けるエストラストも山口県に本社を置き、やはり福岡など九州での営業展開に重心を置いている点で類似している。PERはトラストHDが7倍前後、エストラストは何と4倍台と超割安圏だ。両銘柄とも地方拠点ならではの割安放置が続いたが、目先状況は変化しており、見直し買い余地の大きさに切り替わる可能性がある。
このほか、1000円トビ台の銘柄にも妙味がある。株価が4ケタ台に乗せると値幅制限の幅が広がることもあって、良し悪しは別にしてボラティリティが高まりやすく注目度が増す。当然ながら足もとの業績が好調であることが肝要で、チャートも現在進行形で上値を指向しているものに照準を合わせる。例えば、東京23区を中心に都市型レジデンスとオフィスなどの収益不動産を開発するディア・ライフ<3245>。24年9月期は最終利益段階で19%増の51億円と連続最高益更新を見込む。来期も2ケタ以上の増益が有力視される。また、中古オフィスビルの再生や用地開発、富裕層向け不動産コンサルで躍進するビーロット<3452>も要マーク。PER5倍台と割安感が強く、会社側は未開示ながら順当に今期増配実施となれば配当利回りは5%を超える公算が大きい。
あすのスケジュールでは、2月の失業率、2月の有効求人倍率、3月の都区部消費者物価指数(CPI)、2月の鉱工業生産速報値、2月の商業動態統計がいずれも朝方取引開始前に開示されるほか、午前中に2年物国債の入札が予定されている。また、午後取引時間中には2月の自動車輸出実績、2月の住宅着工統計が発表される。この日はIPOが2社予定されており、東証グロース市場にグリーンモンスター<157A>、マテリアルグループ<156A>が新規上場する。海外では2月の米個人所得・個人消費支出・PCEデフレーターのほか、パウエルFRB議長が討論会に参加する予定。なお、米国市場のほか、香港、シンガポールなどアジア市場の一角、ドイツ、フランスなど欧州主要国市場が休場となる。(銀)
最終更新日:2024年03月28日 18時07分
株探ニュース