明日の株式相場に向けて=出世株相次ぐ「データセンター」関連
名実ともに6月相場入りとなった3日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比435円高の3万8923円と大幅続伸、一時フシ目の3万9000円台に乗せる場面もあった。依然として疑心暗鬼の相場環境といえるが、そうしたなかもきょうは月初の株高アノマリーがきっちり機能した格好だ。ただ、6月は過去10年間を振り返って、日経平均の月足は6勝4敗ながら、外国人投資家は日本株に対して結構シビアなスタンスをとっており、現物ベースで買い越したのはわずかに2回に過ぎない。
前週末の米国では、4月のPCEデフレータが総合指数、コア指数ともに事前予想と一致したことが好感され、長期金利の低下とともに株式の相対的な割高感が後退、NYダウが574ドル高と約1年ぶりとなる急騰パフォーマンスを演じた。とはいえ、分かってはいても、物価指標が発表されるごとに相場はいいように振り回される状況は相変わらずだ。インフレ警戒感も「再燃」と「後退」の繰り返しで、過去の指標に支配されている。バックミラーを覗き込んでその都度一喜一憂しているようなもので、車が角を曲がって次の指標が映し出されると、その前の指標が全否定されるがごとく雰囲気が激変するケースも多い。
その意味で今週は米国での重要指標が相次ぐことで、バックミラーを覗く回数が殊更に多くなる。日本時間の今晩に5月の米ISM製造業景況感指数、5日に5月のADP全米雇用リポートと5月のISM非製造業景況感指数、6日木曜日は4月の米貿易収支、そして週末7日は5月の米雇用統計が発表される。場合によってはNYダウやナスダック総合株価指数など主要株価3指数が酩酊状態でジグザグ走行を強いられる可能性もなきにしもあらずだが、「(今週の統計では)総じてインフレ鈍化の道筋にあることが確認されるのではないか」(生保系アナリスト)という声もある。いずれにしても過度に不安視せず、全体指数は全体指数、個別株は個別株と切り離して考えておく方がよさそうだ。
個別株に目を向けると相場の花形である半導体関連に跛行色がみられ、以前のような総花的な上昇が見込みにくくなっており、どちらかと言えば日銀の7月追加利上げの動きをにらみながらバリュー株がやや優位の構図にも見える。また、テーマ株物色については半導体のポジション調整の動きが資金シフトの追い風となりやすく、全方位型での対処を心掛けたい。まずは低PBR株の宝庫である地銀セクターでは、前週に取り上げた北洋銀行<8524>が一時45円高の627円まで買われ、前週末と合わせて2営業日で13%も水準を切り上げ上場来高値を更新した。北海道千歳市と熊本で場所は違えども、巨大半導体工場による“城下町景気”を拠りどころに、相対的に出遅れている九州フィナンシャルグループ<7180>も改めて注目される。4ケタトビ台の株価は仕込み好機に映る。
データセンター関連では精工技研<6834>が一気に上値追いを加速、約3年半ぶりの高値圏に歩を進めている。先駆的存在のさくらインターネット<3778>やさくらケーシーエス<4761>は大相場の後だけに、現状はまだ上値の売り玉が重石となっている印象はあるが、アイネット<9600>が直近戻り高値を更新するなど同テーマに対する投資資金の視線は依然として熱い。ここは、出遅れ組で株価低位のブロードバンドタワー<3776>や調整一巡感漂うAGS<3648>に着目しておきたい。このほか、ダイダン<1980>など空調工事株からバトンを受け、NTT系電気通信工事大手のエクシオグループ<1951>も要マーク。
また、直近では都市鉱山関連株に再び光が差し込んでいる。政府は三菱マテリアル<5711>などと組んで電子ゴミのリサイクル体制を整備するとの一部報道がなされた。三菱マの株価は冴えなかったが、きょうは同関連銘柄でアサカ理研<5724>が陰線を引いたものの一時5.4%高に買われた。継続フォローしている松田産業<7456>のほか、足もと新値街道に突入しているAREホールディングス<5857>も新たに目を配っておくところか。
あすのスケジュールでは、5月のマネタリーベースが朝方取引開始前に日銀から開示される。また、午前中に10年物国債の入札が予定されている。このほか、後場取引終了後に5月の財政資金民間収支が発表される。海外ではインド下院の総選挙の開票が行われる。また、4月の米雇用動態調査(JOLTS)にマーケットの関心が集まるほか、4月の米製造業受注も発表される。(銀)
株探ニュース