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トヨタ1ドル=145円、輸出企業の想定レートは日本株に吉と出るか <株探トップ特集>

特集
2024年5月8日 19時30分

―保守的に設定した企業の株価は底堅い動き、円安基調継続なら業績上振れ期待も―

8日に本決算を発表したトヨタ自動車 <7203> [東証P]株は一時4%安となった。自社株買いの発表もあって開示直後の売り一巡後はプラス圏に浮上する場面もあったが、買いは続かず軟化した。25年3月期の最終利益は2ケタの減益見通しでかつ市場のコンセンサスを下回る水準。投資家の慎重姿勢を強める要因となった一方、市場が注目したトヨタの想定為替レートは1ドル=145円と、ここまで3月期決算発表を行った主要企業と足並みを揃えた格好だ。この先、トヨタを含め輸出企業が株価水準を切り上げるには、1ドル=150円を上回る水準で為替相場の落ち着きを取り戻すことが条件となりそうだ。

●上限1兆円の自社株買い発表も買い上がれず

トヨタ株は前営業日比20円(0.56%)安の3579円で8日の取引を終えた。同日午後1時55分、24年3月期の連結決算発表にあわせ、25年3月期の業績予想を開示した。今期の最終利益予想は前期比27.8%減の3兆5700億円。市場のコンセンサス(4兆6300億円程度)を大きく下回った。決算とともに同社は取得総数4億1000万株(自己株式を除く発行済み株式総数の3.04%)、取得総額1兆円を上限とする自社株買いの実施も発表。過去3年間で本決算とあわせて発表された自社株買いでは取得総額の上限は1500億~2500億円だったが、従来との比較でみて大規模な自社株買いを打ち出した。

今期の連結ベースでの世界販売台数は前期比0.6%増の950万台となる見通し。うち国内では同6.2%減の187万台、自動車メーカーにとって稼ぎ頭となる北米では同1.9%増の287万台を見込む。想定為替レートは1ドル=145円、1ユーロ=160円で設定。前期の水準と比べて対ドルでは横ばいに、対ユーロで3円円安方向に設定している。

営業利益段階では、労務費や研究開発費、経費負担が圧迫要因となる見込みだ。市場では「想定為替レートは合理的な水準で、諸経費の部分の負担増は致し方ないところ。北米でのインセンティブの動向などを踏まえて、バッファーのある、かなり慎重な業績予想を示した印象だ」(国内証券の自動車担当アナリスト)との声が出ている。

●主要企業で140~145円での設定相次ぐ

トヨタに先立って4月末に決算発表を行ったデンソー <6902> [東証P]や豊田自動織機 <6201> [東証P]、アイシン <7259> [東証P]など、トヨタ系部品メーカー大手は、そろって想定為替レートを1ドル=145円に設定した。中堅の系列サプライヤーでは、大豊工業 <6470> [東証S]と愛三工業 <7283> [東証P]が140円に設定している。トヨタの想定為替レートは、ある意味で想定の範囲内となったが、1ドル=145円の前提で増益予想を打ち出すと期待していた投資家も少なくはなかった。

4月の日銀金融政策決定会合後に一時160円台に乗せたドル円相場は、4月の米雇用統計の発表を受けて5月3日に151円台までドル安・円高が進行した。その後は持ち直し、8日午後3時時点では155円台前半で推移している。ドル円相場のボラティリティが高まった状況が続いており、その不透明感が輸出株の上値を圧迫する要因となっている。それだけに、為替相場のボラティリティが低下し、150円を上回る水準で高止まりした場合は、輸出株の下支え効果をもたらすことも想定される。

トヨタと同様に1ドル=145円を25年3月期の想定レートとした主要企業には、村田製作所 <6981> [東証P]やニデック <6594> [東証P]、日本航空電子工業 <6807> [東証P]、日本ガイシ <5333> [東証P]、アンリツ <6754> [東証P]などがある。日立製作所 <6501> [東証P]や日東電工 <6988> [東証P]、任天堂 <7974> [東証P]のほか、イビデン <4062> [東証P]、日本特殊陶業 <5334> [東証P]、FDK <6955> [東証S]は140円に設定した。

この先も140~145円を想定レートとする上場企業が増加すると見込まれているなか、ファナック <6954> [東証P]は135円、ソシオネクスト <6526> [東証P]は130円と大幅な円高水準に設定している。両社とも決算発表後の株価は底堅く推移している。

●12月期決算企業などで目立つ保守的な設定

日米の金融政策の方向性の違いを根拠に昨年末時点では今年は円高が進むとみていた市場参加者が少なくなかったが、130円台への突入はおろか、年始からドル高・円安に歯止めが掛からず、4月に入り一気にドル円相場は水準を切り上げた。4月下旬以降に決算発表を行った3月期決算企業にとって、想定レートの水準をどこに置くのか、頭を悩ますこととなったはずだ。

半面、3月期決算企業以外については、4月より前に業績計画を組み立てたところもあり、想定為替レートが実勢よりも大幅な円高方向となっている企業がいくつか存在する。例えば12月期決算企業のブリヂストン <5108> [東証P]やTOYO TIRE <5105> [東証P]、住友重機械工業 <6302> [東証P]は、通期業績予想における想定レートを1ドル=135円としている。

船舶用電子機器の古野電気 <6814> [東証P]は25年2月期の最終利益を前期比43.9%減の35億円、年間配当を同25円減配の35円と予想。業績と配当予想の公表翌日となる4月16日に株価は20%を超す下げとなった。一方、25年3月期の想定為替レートは1ドル=135円と、前期の期中平均レートである140円から円高方向に設定。主力の舶用事業では需要環境は引き続き堅調に推移すると予想しており、業績上振れ時には見直し買い機運を強めそうだ。

切削工具大手のOSG <6136> [東証P]の24年11月期は、営業利益が前期比16.2%増の230億円と6期ぶりの過去最高益を計画。最終利益は同8.3%増の155億円と、2期前の過去最高益に肉薄する見通しだ。第1四半期(12~2月)は日本国内での在庫調整が響き営業減益となったものの、為替効果が営業利益の押し上げ要因となった。通期での想定為替レートは1ドル=138円。米国での航空機・自動車向け需要が堅調に推移し、中華圏での景況感のボトムアウトが鮮明となれば、成長期待の資金を呼び起こすこととなりそうだ。

自動車などへコントロールケーブルを供給するハイレックスコーポレーション <7279> [東証S]の24年10月期業績は、最終損益が39億円(前期は29億9100万円の赤字)と、3期ぶりの黒字転換を計画する。第1四半期(11~1月)は価格改定や原価低減などの取り組みが奏功。円安も円換算での収益を押し上げて黒字を確保した。第1四半期時点で業績予想は据え置き、期初の時点での想定為替レートは1ドル=137円に設定している。自動車向けの北米需要の底堅さは、ハイレックスの収益を下支えする要因になるとみられるほか、PBRは0.3倍台と、バリュー株選好姿勢が強まった際には、他の自動車部品株と同様に株価をサポートすると想定される。

株探ニュース

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