明日の株式相場に向けて=半導体祭りのキーワードは「水」と「人」
きょう(28日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比31円安の3万9208円と4日ぶり反落。もっとも、押し目とも言えないような軽微な下げである。月末は機関投資家のリバランスの売りが出やすい。事実、きょうも市場関係者に聞くと持ち高調整の機械的な売り注文が観測されたようだが、全体相場は高値圏でそれを被弾しても全くバランスを崩すことがない。
市場関係者いわく「砂漠に水を撒くようなもので、投資家にとっては残念な地合い」(ネット証券アナリスト)という。なぜなら、月初(今週末から来週初にかけて)は機関投資家の買いが入りやすく、最近は新NISAのつみたて投資枠の買いがこれに加わる。したがって大勢上昇トレンドにおける「月末安は仕込み好機」との認識がなされており、それを実践しようとする向きにとって、きょうの31円安は拍子抜けということのようだ。
個別株の動向に目を向けると、半導体関連株への波状的な投資資金流入が続いている。先駆したアドバンテスト<6857>やディスコ<6146>などの主力どころの銘柄は高値圏でやや逡巡する気配もみせているが、一方で中小型株にはリターンリバーサルを狙った投資資金の再攻勢が相次ぐ。その時々で銘柄によって跛行色はあっても、基本的に生成AIと半導体は統合されたひとつのテーマとして輝きを放ち続けている。
きょうの市場で話題となっていたのは超純水製造装置関連だ。当欄でも昨年来、取り上げることが多い野村マイクロ・サイエンス<6254>だが、ここに来て改めて本領を発揮。大幅高で4連騰と最高値ロードを疾走し、きょうの高値まで4営業日合計で5200円以上も水準を切り上げた。このほか、同業界の大手といえば栗田工業<6370>とオルガノ<6368>が挙げられる。両銘柄とも野村マイクロほどの派手さはないが、上値指向が鮮明だ。半導体の高集積化プロセスで回路線幅の微細化への取り組みが熱を帯びているが、そこでは極微の不純物の存在すら許されない環境を強いられる。したがって半導体の洗浄用途で使われる水は、文字通り超ハイレベルの純水製造が不可欠となる。
特に日本の超純水製造装置メーカーは「米国、台湾、韓国、そして国内の4極の需要を囲い込んでいる状態であり、機関投資家目線でも当該企業の株式を保有していないことには話にならない」(ネット証券アナリスト)という状況のようだ。そうしたなかにあって野村マイクロの時価予想PERは26倍、時価総額も1900億円に過ぎない。ちなみにアドテストはPER約80倍、ディスコは約70倍である。つまり、既にモンスター級の株価変貌を遂げた野村マイクロだが、もしかするとこれはまだ序の口で一段と大化けする可能性を内包しているとも考えられる。
最先端半導体の製造シーンで「水」は極めて重要性が高いということを、今の相場が証明しているようにも見えるが、もう一つ 半導体製造分野で必要とされているもの、それは「人」である。人手不足の問題はあらゆる業態にいえることだが、技術者という範疇ではなおさら調達が難しい。半導体業界にとっても切実な課題であり、裏を返せばIT人材の派遣サービスや請負を手掛ける企業群は要注目となる。半導体製造分野で高い実績を持つUTグループ<2146>、テクノロジスト集団を標榜するジェイテック<2479>、IT人材派遣の先駆でハイスキル人材の育成で強みを持つアルトナー<2163>、ベトナムをはじめ海外での展開力で優位性を発揮するnms ホールディングス<2162>。そして、TSMC<TSM>熊本工場、ラピダス千歳工場を視野に入れながら、九州と北海道で半導体関連人材の育成に戦略的な布石を打つNISSOホールディングス<9332>をマークしておきたい。
あすのスケジュールでは、1月の鉱工業生産指数速報値、1月の商業動態統計が朝方取引開始前に発表される。また、午前中に2年物国債の入札が予定される。午後取引時間中には1月の建機出荷、日銀からは「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」が開示される。このほか1月の住宅着工統計も発表される。海外では1月の豪小売売上高、インドの10~12月期GDP、2月の独失業率、2月の独消費者物価指数(CPI)速報値のほか、米国では1月の個人所得・個人消費支出、PCEデフレーターにマーケットの関心が高い。また、週間の米新規失業保険申請件数、2月のシカゴ購買部協会景気指数(PMI)、1月の米仮契約住宅販売指数などが注目される。(銀)
株探ニュース