9月最大のヤマ場「3大中央銀行」の政策の行先、日銀の決断はあるか <株探トップ特集>

特集
2019年9月3日 19時30分

―FRB0.25%利下げ、日銀は現状維持でマイナス金利深掘りは見送りも―

年後半相場に向けての大きなヤマ場が9月中盤に訪れそうだ。来週以降、日米欧の3大中央銀行が揃って金融政策決定会合を開く。その決定は、株式や 為替、債券などの各相場に大きな影響を与えることが必至だ。欧州と米国の金利引き下げが確実視されるなか、高い関心を集めるのが日銀の動向だ。市場には、「長期金利の低下を容認する」との見方はあるものの、「手詰まり感は強い」との声は多く実質的な現状維持の可能性もある。今後の相場の大きなカギを握る3大中央銀行の政策を探った。

●9月中旬に日米欧の政策決定会合が相次ぐ、世界的な金融緩和基調強まる

来週以降、日米欧の中央銀行の会合が相次いで開かれる。まず、12日に欧州中央銀行(ECB)の定例理事会、続いて17~18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、そして18~19日の日銀金融政策決定会合と続く。

米中貿易摩擦の激化と世界景気の減速懸念が強まるなか、中央銀行の存在感は一段と高まっている。米連邦準備制度理事会(FRB)は7月末のFOMCで政策金利を0.25%引き下げ、10年半ぶりの利下げに踏み切った。これを契機に主要各国の金融政策の方向性は緩和基調へと向かっている。なかでも、8月はNYダウ日経平均株価、ドイツDAX指数など世界的に株価が軟調に推移した。このなか、9月の3大中央銀行の金融政策決定会合に向けた注目度が高まっている。

●ECBは預金金利引き下げ有力、ドラギ総裁の退任前に緩和姿勢も

まず12日のECB定例理事会では、「積極的な金融緩和策が打ち出されるのではないか」(市場関係者)との見方が出ている。ドイツの4~6月期の実質国内総生産(GDP)がマイナス成長となるなど、ユーロ圏の景気減速懸念は強い。また、ドラギECB総裁は10月末に任期を終える。「ドラギ氏は任期中に金利引き下げの方向性を示してECB総裁を退きたいはず」(同)との見方が出ている。

こうしたなか、市場には「中銀預金金利は現在のマイナス0.4%から同0.5%に引き下げが実施されそうだ」(上田ハーロー・山内俊哉執行役員)との見方が出ている。また、量的緩和(QE)による資産買い入れプログラム(APP)再開への思惑も出ている。しかしこちらは一段の景気悪化の際に温存され、今回はそこまでは踏み込まない可能性がある。この利下げ観測からユーロは軟調に推移し、欧州の銀行株も弱含みで推移している。

●米国は年内3回の利下げの可能性も、10月以降の実施は景気次第に

トランプ米大統領からの利下げ圧力に揺れるFRBだが、18~19日のFOMCでは0.25%の利下げが行われる可能性がある。一時は0.5%利下げの可能性も浮上したが「足もとの経済指標はそれほど悪くはなく、9月は0.25%の利下げにとどまる」(山内氏)ともみられる。もっとも、今後景気減速懸念が強まるとみる声もあり、10月と12月のFOMCでそれぞれ0.25%ずつの利下げを行い、年3回の利下げを行うとの見方も少なくない。市場からは「9月の利下げには米国景気が悪化した場合の責任を、トランプ氏からFRBが押し付けられることを避ける意味もありそう。10月以降の利下げは景気次第だ」(同)との声も出ている。

●日銀は現状維持の可能性、マイナス金利深掘りは見送りも

9月の金融政策決定会合で日銀は、ECBとFRBの決定を確かめたうえで政策を決めることができる優位性がある。ただ、「日銀は最も手詰まり感が強い」(アナリスト)とみられている。7月下旬から8月中旬に急激な円高が進み1ドル=104円台に突入した時期には、「(短期政策金利をマイナス0.1%としている)マイナス金利政策の深掘りは待ったなし」との見方が出ていた。しかし、9月に入りやや市場が落ち着くとともに、日銀の金融緩和に向けた観測はトーンダウンしている。

9月の日銀の決定会合であるとすれば、「現在、マイナス0.2%程度とされている長期金利の変動幅の下限を撤廃することぐらいではないか」(第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミスト)との見方が少なくない。これは現状の長期金利の低下を追認する措置となる。マイナス金利の深掘りは「金融機関の収益への影響など副作用が大きく、相当な緊急性がないと踏み切れない」(市場関係者)とみられ、このため「消費増税前には日銀は動きづらい。結果として実質的な現状維持となることもあり得る」(山内氏)とみられている。

●中長期で不動産株買い・銀行株売り継続、ETF増額には株価大幅安が必要か

9月の決定会合ではECBとFRBが利下げに踏み切るのに対し、日銀は現状維持に近いスタンスが予想されるが、為替や株式市場はこの姿勢をすでに織り込んでいるとみられる。日本株に関しては、現状維持の結果となれば、銀行株は一時的に買われる可能性があるが、中長期スタンスでは不動産株買い・銀行株売りの動きは続きそうだ。もっとも、9月中旬に向け急激な株価下落や為替の円高などがあれば、日銀に再び、追加緩和の圧力は強まることが予想される。また、日銀のETF買い入れ金額の増額に関しては、「政策の選択肢として実施の可能性は残されている」(市場関係者)ものの、「日経平均株価が相当落ち込むような事態にならない限り、ETF買い入れ額の増額はないのではないか」(藤代氏)ともみられている。

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