和島英樹の「明日の好悪材料Next」~第1回
電子関連に明るさ、ドラッグストアは既存店売上高に好材料
5月27日分 クスリのアオキホールディングス<3549>
■好悪材料~5月既存店売上高は前年同月比5.1%増。
北陸に強みがあるドッグストア大手。2020年5月期(20日締め)は売上高3000億円(前期比19.6%増)、営業利益125億円(同11.5%減)。減益は値引きとポイント還元による採算悪化要因。前期の第3四半期までの営業利益は110億円強(前年同期比2%増)と増益できており、新型コロナでマスク、除菌関連商品が伸びたことを考慮すれば、上振れ着地になった公算が大きい。第4四半期は3月の既存店が同17.2%増、4月が同14.1%増と高水準。
ドラッグストア業界は新型コロナで存在感を示したが、マスクなど以外でも飲料や食品関連のディスカウントでも集客力を強めている。加えて、最近では調剤薬局の併設を強化し、薬を取りに行く際の「ついで買い」効果も出ている。また、人との接触を避けるため、スマホなどで処方箋内容を伝える「オンライン調剤」の採用も増加している。
ドラッグストア大手はM&Aでより大きくなっている企業が強い。仕入れのバイイングパワー、調剤薬局では店舗数の多さは地域の見守りなどにもつながるためだ。北海道が地盤のツルハホールディングス <3391> 、イオン系のウエルシアホールディングス <3141> などは買収企業に自社のシステムを移植するなどで、収益力を高めてきている。今回のクスリのアオキも経費コントロールが効いている。
九州地盤のコスモス薬品<3349>、東京都西部のサンドラッグ<9989>、千葉のマツモトキヨシホールディングス<3088>なども独自の手法で規模の利益を得ているのだ。
■『株探』プレミアムで確認できるクスリのアオキHD<3549>の四半期業績の成長性推移
5月28日分 保土谷化学工業<4112>
■好悪材料~前期経常は1%減益も上振れ着地。1~3月期(4Q)の経常は53%増益。今期業績は非開示。
化学メーカー中堅で、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)分野では電極に直接接する正孔輸送層材料や、電子輸送層材料を手がけている。液晶パネルがバックライトを通じで明るい画面になっているのに対し、有機ELは自らが発光する。このため、画質が鮮やかになる。
有機ELパネルは積層構造で、正孔輸送層と電子輸送層が、それぞれ正孔(プラス)、電子(マイナス)を運び、真ん中の発光層で結合して光を発生させる仕組み。同社の部材が不可欠だ。2020年3月では有機EL材料を含む「機能性色素」分野は年間を通じても増益だった。同社では有機EL材料を戦略分野に設定し、韓国子会社のSFCには韓国サムスン電子も出資している。
同社の有機EL材が拡大しているということは、20年は有機ELテレビやスマホが拡大することを示唆している可能性がある。有機EL先端製造装置を手掛けるブイ・テクノロジー(7717)、有機EL製造装置のアルバック<6728>、有機EL生産設備エンジニアリングの平田機工<6258>などへも関心が向かう可能性がある。
5月28日分 日本空港ビルデング<9706>
■好悪材料~前期経常を45%下方修正。
羽田空港国内・国際線ターミナルビルの家主。国内線売店、国際線免税店の運営も手掛ける。2020年3月期第4四半期(20年1~3月)の新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、国内線、国際線の利用客が減少し、施設利用料収入、商品売上高や飲食売上高が計画を下回り売上高は2497億円(前期比8.7%減)、営業利益は99億円(同56%減)となった。
緊急事態宣言は解除されたものの、飛行機を使用した移動の回復は鈍い。また、国際線の利用は入国制限もあり、21年3月期はさらに落ち込む可能性がある。一方、株価は3月17日の安値3450円を底に出直り機運。業績の下方修正にも反応薄だった。緊急事態宣言解除後は底入れ感を強めている。新型コロナの悪材料に関しては、相当に織り込まれたとみることもできそうだ。21年の東京五輪に向けて収益が改善する期待も強まっている。
日本航空<9201>、ANAホールディングス<9202>、スターフライヤー<9206>のほか、航空機の厨房設備や化粧室を展開するジャムコ<7408>などにもアク抜け感が広がる可能性もありそうだ。
【和島・独自注目の好悪材料】
東証マザーズ指数/外国人投資家・売買動向
6月相場入りとなったが、5月に注目された市場の話題は2つ。ひとつは東証マザーズ指数の上昇、今一つは外国人投資家の動きだ。
5月に日経平均株価は8.3%の上昇となった。新型コロナで緊急事態宣言解除を先取る動きになったことなどが手掛かり。一方、東証マザーズ指数は24.1%の上昇を記録した。6月1日には2018年12月以来の100ポイント回復。3月以降に在宅トレーダーの新規参入を機に反転に転じたが、その後は新型コロナのワクチンや治療薬関連、その後はテレワーク関連がマザーズに多かったことが主因とされる。
■東証マザーズ指数の週足チャート
もう一つが2市場の投資部門別の売買動向で、5月3週に外国人投資家が現物先物を合わせて3800億円余りの買い越しに転じたことだ。外国人投資家の買い越しは、2月1週目以来、今年2回目。マザーズなどにも関心を寄せているとみられる。
■個人と外国人投資家の売買動向
注:個人は現物と信用、外国人は現物のみ
注目はマザーズの時価総額首位で、フリマアプリ首位のメルカリ<4385>。2020年6月期の第3四半期決算は営業赤字ながら四半期ごとの損益が改善傾向にある。これまで海外の赤字を警戒してきたが、マザーズへの注目度の高まり、需給の改善でトップ企業への関心が高まることが想定される。ちなみに、2位グループではクラウド型会計のフリー<4478>。テレワーク関連としての存在感もある。
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株探ニュース