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「人気者・レプリケーション」戦略で高値膠着の難局を打開!

特集
2021年1月27日 10時00分

大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第57回

組み入れ上位銘柄をスコア化

前述までの分析で特定した高パフォーマンスのファンドの組み入れ上位銘柄をすべて抜き出し、それを各投信の組み入れ銘柄を順位別にスコアリングして集計するのです。

その理由は、中長期にわたって時代の変化に左右されずに高いパフォーマンスを獲得してきた各投信のファンドマネージャー(FM)の能力を評価し、彼らが足元で大きなポジションを取っている銘柄は、現在の不安定な環境下でも将来的に魅力度が高い銘柄だと判断することが可能であるという見立てです。

投資は運用報告書内や月次リポートに「組み入れ上位銘柄」を記載し、概ね上位10銘柄やセクターウエイトが記載されています。これらは、ウェブサイトなどで誰でも簡単に閲覧できる公開情報です。

この公開情報から銘柄ごとにいわば「優秀なFMからの人気投票」を定量化することができます。具体的には、各ファンドの上位銘柄につい「て1位を10」「2位を9」・・・「10位を1」としてスコアリングし、銘柄ごとに集計するだけです。

■優秀ファンド組み入れ上位銘柄のスコアリングのイメージ

【タイトル】

出所:智剣・Oskarグループ

それでは、スコアの上位の銘柄を見てみましょう。

銘柄数は全部で64ありました。そのうち上位11位までがスコアが10を超え、かつ複数の優秀ファンドから選ばれた人気銘柄となります。

■優秀FMが運用する高スコア銘柄のランキング

順位 銘柄名<コード> 人気
スコア
採用
投資数
業種
1 日本電産<6594> 36 4 電気機器
2 キーエンス<6861> 29 3 電気機器
3 ソニー<6758> 21 3 電気機器
4 ダイキン工業<6367> 19 3 機械
5 村田製作所<6981> 18 3 電気機器
6 レーザーテック<6920> 17 2 電気機器
7 任天堂<7974> 16 2 その他製品
8 GSユアサ<6674> 12 2 電気機器
9 エムスリー<2413> 11 2 サービス業
10 トリケミカル研究所<4369> 11 2 化学
11 アドバンテスト<6857> 11 2 電気機器
出所:会社資料、智剣・Oskarグループ

トップは日本電産<6594>でスコア、採用ファンド数ともに頭一つ抜けています。次いでキーエンス<6861>、ソニー<6758>、ダイキン工業<6367>といったあたりが、首位の日本電産を含めて優秀FMからの人気銘柄の四天王、といったところでしょうか。

またレーザーテック<6920>やエムスリー<2413>など、日本株に携わっていればどこかで必ず目や耳に入る名前も散見されます。

その他も基本的には王道・大型銘柄で占められていることから、優秀なFMは決して奇をてらわず、仕手株のような銘柄で目先のパフォーマンスを誤魔化すこともなく、安定的な成長が見込めるブルーチップ銘柄に時間かけてしっかりと投資をしているのでしょう。

留意点としては、このスコアは、月次報告書(マンスリーリポート)がベースで、ほとんどのファンドは直近値が昨年末時点となっていることです(ノムラ・ザ・セレクトのみ11月末時点)。つまり、今現在これらの銘柄が表示されているウエイトで保有されているとは限りません。

ただし、表に挙げたような日本を代表する大型銘柄を組み入れ上位になるまで大量に保有していることを踏まえれば、短期的に大きく顔ぶれが変わるとは考えにくいと思われます。

上位組み入れ銘柄のファクターをレプリケーションする

最後に、本分析を活かして、もう一歩踏み込んだ定量アイデアについて触れます。簡単にいえば、特定した優秀な投信の上位組み入れ銘柄の特性(ファクター)を定量的に洗い出し、それに沿った銘柄を選定していく方法です。

要するに、優秀なファンドを定量的に模倣するのです。前述の銘柄のスコアリングとともにアイデアの盗用をしている感じがして気が引けるかもしれませんが、実はこれは「レプリケーション(複製)戦略」という古典的に行われてきた由緒正しき計量投資戦略の1つです。

この戦略は精緻にファンドと市場全体の動きのかい離や相関、分散(リスク)などから数学的に銘柄を推計して模倣していくのが本来ですが、大まかには優秀ファンドの組み入れ上位銘柄の属性が市場全体に対してどのような特徴を持っているのかということが分かれば銘柄の選択をすることは可能です。

以下の表は、今回の分析で抽出した優秀ファンドの組み入れ上位64銘柄と東証1部上場銘柄それぞれの主要ファクターの中央値を比較したものになります。

■優秀投信の保有銘柄と東証1部の主要ファクターの中央値

ファクター バリュー グロース
  PER      PBR    配当
  利回り  
EPS
成長率
(12カ月先)
 EPS
成長率
(3期先)  
優秀投信の保有銘柄 36.6倍 6.7倍 0.6% 23.0% 68.6%
対東証1部
東証1部 16.9倍 1.2倍 1.9% 15.7% 34.8%
ファクター クオリティ リスク
ROE 自己
資本
比率
配当
性向
ベータ ボラティ
リティ
優秀投信の保有銘柄 15.5% 62.8% 24.2% 107.0% 49.1%
対東証1部  ―― 
東証1部 8.3% 52.4% 31.7% 107.0% 39.9%
出所:会社資料、データストリーム

注:バリューの3指標及びROE、配当性向は、すべて12カ月先コンセンサス予想値を使用

割高だが、EPSの期待成長率、クオリティー、ボラも高い

大枠としては、バリュエーションは割高だが成長(特に長期)は強く、ROE(自己資本利益率)や自己資本比率が高いのが特徴です。また、ボラティリティの高さは銘柄の注目度の代理変数としても機能するため、クオリティが高ければ変動性の高さは銘柄の期待度としては重要な指標となります。

一方で、配当利回りや配当性向は市場を下回っており、優秀なFMの間では株主還元よりは強い成長性、収益性に着目した銘柄選択がされていると考えていいでしょう。

冒頭に述べたように、足元で大きく上昇を見せているバリュー株とは真逆の属性で、完全に割高・高成長株にどっぷりと漬かることになります。中長期で優秀なパフォーマンスを生み出してきたFMたちは、少なくとも昨年末時点では、「成長株への選好は継続する」と考えていたことの証明に他なりません。

一時的に質の悪いバリュー株の反転があったとしても、それに惑わされず長い目で成長期待の高い銘柄を保有しておくという手法が、安定的な高パフォーマンスを実現するための王道だというメッセージなのでしょう。

最後に、このファクターの傾向に沿った銘柄の一覧を添付しておきます。

割高な銘柄や配当支払いに消極的な銘柄をあえて選定する意義はなく、成長率や収益性の高さの結果として数字が低く出ただけだと思われます。そこで、

高成長(3期先)

高成長(12カ月先)

高ROE

高自己資本比率

高ボラティリティ

――5つのファクターの条件を満たす銘柄およびその逆の傾向を見せる銘柄をそれぞれ抽出しています。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。


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株探ニュース




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