横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」― (39)「恐怖指数」をチェックして、市場変動の兆しを捉えよう!
◆連動性が薄れた日米市場、日本版VIXで投資家心理を追跡
VIX指数とは「Volatility Index(ボラティリティー・インデックス)」を略したもので、「恐怖指数」とも呼ばれています。シカゴオプション取引所が米国の代表的な株価指数であるS&P500を対象とするオプション取引のボラティリティー(変動率)を基に算出・公表している指標です。株探では朝の8時頃に配信する「米国市場データ」でその数値を確認することができます。
図1 株探で朝8時頃に配信する「米国市場データ」
VIX指数は投資家の不安心理を数値化したものであり、一般に数値が高いほど投資家が株価の先行きに不安を感じており、反対に数値が低いほど、先行きを楽観しているとされています。VIX指数は0~100%の間で変動しますが、通常は10~20%で動くことが多く、不安心理を測る目安としては「20」が基準となります。つまり、「20」を下回っている間は、投資家は相場を楽観的にみており、市場も安定的に推移している状況にあります。一方、「20」を超えてくると投資家の不安が高まり、市場も不安定さを増している状態にあると考えられます。
例えば、2023年3月に米地銀のシリコンバレーバンクが経営破綻した時、米国株式市場では先行きへの投資家の懸念が高まり、VIX指数は20を超える日々が続きました。このように不測の事態などが発生して全体相場が急落すると、VIX指数は20を上回ってきます。そして、市場の落ち着きとともに、その数値も低下していくのです。
米国市場の取引は、日本の市場が閉じた夜間の時間帯に行われます。米国市場が上昇すれば、その結果を受けて翌日の日本市場も上げやすくなります。反対に米国市場が下落すれば東京市場も下げやすいという風に、これまで日本市場は米国市場に連動する傾向にありました。米国は世界経済の中心的存在と言っても過言ではありませんから、その動向に日本市場が右往されるのは仕方がないことなのかもしれません。
しかし、現在の日本市場は、バブル後高値を更新する状況です。一方、米国市場は2022年に下落を余儀なくされ、2023年こそ上昇していますが高値を更新するという状況にはありません。このように現在の日本と米国の投資家心理の間には違いがあると考えた方がよさそうです。VIX指数は米国市場の動向をチェックするうえで重要な指標であり、特に日米市場が緊密に連動している場面では無視することができません。ただし、いまのように連動性が薄れた状況で、日本の投資家心理をより正確に把握したい場合には、VIX指数の日本版である「日経VI(日経平均ボラティリティー・インデックス)」を参考にしましょう。
日経VIは、日経平均先物および日経平均オプションのボラティリティーを基に算出されています。見方は本家のVIX指数と同じであり、「20」を目安に投資家心理を測ることができます。なお、日経VIは日本経済新聞社の「日経平均プロフイル」の「指数一覧」でご覧いただけます。
▼日経平均ボラティリティー・インデックス
https://indexes.nikkei.co.jp/nkave/index/profile?idx=nk225vi
2023年になってからの日経VIの推移をみると、米国でシリコンバレーバンクが経営破綻した3月には、VIX指数と同様にその数値が「20」を超えることもありました。しかし、米国の金融不安がその後落ち着いたこともあって「20」を下回ると、5月には「15」台まで低下していきます。その間、日経平均株価は3月安値の2万6632円から2万9000円台へと緩やかに上昇を続けています。
そして、日経平均株価が上げ足を速めて5月17日に3万円を超えてくると、再び日経VIは「20」を超えてきています。通常は株価が下落した時に、日経VIは「20」を超えてくるのですが、前述した上昇ピッチの速さもあり、「そろそろ天井なのでは?」と警戒感が高まっているのでしょうか、急騰するたびに「20」を超える動きになっています。
このようにVIX指数や日経VIを見ると、数値が「20」を超えたからといって必ずしも株価が急落しているわけではなく、そのままトレードに役立つというわけではありません。ただ、他の投資家が現状をどのように捉え、そして今後の展開をどう見通しているのか、そのヒントを得ることができますので、日頃から両指数を確認しておくことは重要でしょう。
いまは高値更新で米国よりも日本市場が盛り上がっていますが、また以前のように米国株の動きに追随する日々に戻ってしまうかもしれません。世界のマーケットは複雑に繋がって互いに影響を及ぼしながら動いています。日米両国のVIX指数を活用して、マーケット変動の兆しをいち早くキャッチしたいですね。
株探ニュース