あの企業も?意外性に富む「隠れ半導体株」有望候補リストアップ <株探トップ特集>
―絶縁材料の調味料メーカーにウエハー洗浄剤の日用品企業、技術力生かし業容拡大へ―
AIの普及はもはや既定路線となった。今後あらゆる業界で活用が進むことは必定であり、xAIを含むスペースX<SPCX>に続いてアンソロピック、オープンAIとメガ上場が相次ぐ今年2026年は来たるべき本格的な AI時代の黎明期における一つの象徴的な年となるだろう。こうしたなか、その普及を支える半導体セクターはますます存在感を増し、この先も株式市場の主役であり続ける公算が大きい。半導体は製造工程が複雑なことからサプライチェーンに関わる企業が多く、産業としての裾野が広いのが特徴だ。既に物色は中心的な銘柄から周辺、そのまた周辺へと広がっているが、今回はその更に周辺エリアに位置する銘柄群の中から一般に半導体関連としてのイメージがない銘柄を取りあげてみた。
●食器老舗の株価が急上昇
「隠れ半導体株」の代表格に位置づけられるのが味の素 <2802> [東証P]だ。言わずと知れた調味料メーカーだが、実はエレクトロニクス分野に展開し、半導体材料「味の素ビルドアップフィルム(ABF)」を手掛ける。同社が強みを持つアミノ酸技術を応用したもので、1970年代から基礎研究に取り組み、90年代から本格的に研究開発に着手した経緯がある。高性能半導体の絶縁材料として使われ、現在では全世界の主要なパソコンのほぼ100%に採用されているというから驚きだ。AIやサーバー向けの販売が伸びており、今後の需要増を見据えて新工場建設を予定する。
半導体分野に事業領域を広げている意外な企業は、味の素以外にもある。例えば、中東情勢によるナフサ供給混乱の影響が懸念され、注目を集めたTOTO <5332> [東証P](6月8日、ユニットバス通常受注再開を発表)。トイレをはじめとする住宅設備の大手だが、長年培ってきたセラミックス(陶器)技術を生かして半導体製造装置に用いる「静電チャック」を生産する。業績全体のうち一定規模の利益を上げるまでに成長し、会社側は増産の構えにあるようだ。日用品の花王 <4452> [東証P]はウエハーの洗浄工程に使う薬剤を手掛け、高い世界シェアを持つ。印刷大手のTOPPANホールディングス <7911> [東証P]は多角化戦略の一つとしてエレクトロニクス分野に注力し、半導体パッケージ基板を手掛ける。
大型株だけでなく中小型株にももちろんこうした企業はあり、株価を動意させ脚光を浴びるものも少なくない。高級洋食器の老舗ノリタケ <5331> [東証P]はTOTOも属するセラミックス企業集団「森村グループ」の一員であり、半導体向け事業に傾注する構えをみせている。アクティビストによる大量保有をきっかけに昨年の年央から株価は上昇トレンドに入り、ここ最近のハイテク株物色の流れに乗る格好で一段と上げ足を加速。今月に入り1990年以来、約36年ぶりとなる最高値更新を果たした。セメント大手の住友大阪セメント <5232> [東証P]も静電チャックを手掛ける企業の一つだ。好決算を背景に足もと騰勢を強めている。IoTサービスを主力とするFIG <4392> [東証P]は台湾企業と共同で最先端AI半導体の検査工程向け自動化装置を開発したと5月上旬に発表し、急速人気化。短期間で300円台半ばから3000円台まで一気に水準を切り上げ、投資家の視線を釘付けにした。
●バイク・時計・補聴器メーカーなど
前段で取りあげたような隠れ半導体株はマーケットにまだ数多く存在する。その中から業績の良いもの、あるいはバリュエーション面で魅力のあるものなど6銘柄をピックアップした。ボラタイルな相場環境のなか中長期でマークしたい。
ヤマハ発動機 <7272> [東証P]は二輪車の大手。水上バイクや小型船舶から四輪バギー、電動アシスト自転車と幅広く展開する。「乗り物」のイメージが強いが、注目したいのはもう一つの柱であるロボティクス事業。産業用ロボットで実績が高いが、加えて半導体の後工程装置を手掛け、旺盛なAI需要を捉えている。同事業を担うグループ会社の再編を昨年実施し、体制強化を図った。米関税影響があった前期の反動で今26年12月期は急回復を予想。配当利回りは4%台と高い。
ニッパツ <5991> [東証P]は、ばね製品を祖業とする自動車部品メーカー。ばねづくりで培った技術を発展させ、半導体検査装置やHDD向け部品のほか、半導体の製造工程で使うヒーターや冷却板、ガス噴射用シャワーヘッドを生産する。こうした非自動車領域の成長が牽引し、27年3月期は営業利益が前期比29%増の590億円と2期ぶり増益を予想。過去最高益を更新する見込みだ。増配も計画する。好調な業績見通しを背景に株価は上場来高値圏を舞っている。
セイコーグループ <8050> [東証P]は「グランドセイコー」で知られる世界的時計メーカー。時計のような精密機械を作る技術が電子デバイスの製造に応用できるのは容易に想像がつく。同社は傘下に半導体のセイコーNPC、電子部品のセイコーインスツルを持ち、各種製品を展開。水晶発振器用ICで世界トップクラスのシェアを有する。会社側ではAIサーバーや光通信向けで電子デバイス需要を取り込めているとし、今後も成長トレンドに乗れるとの考えを示している。
リオン <6823> [東証P]は補聴器の国内大手。社名の由来である「理(リ)学」と「音(オン)響学」を核とした製品開発に取り組み、補聴器に加えて医療機器、計測器と各種精密機器を展開するが、その中で半導体業界向けの製品を手掛ける。空気中や液体の中にある微粒子の数を測定する「パーティクルカウンタ」だ。半導体工場のクリーンルームや半導体用薬品の品質管理に使われる。業績は最高益トレンドをたどり、株価も最高値圏で推移している。
第一稀元素化学工業 <4082> [東証P]はジルコニウム化合物の世界トップ企業。レアメタルの一種であるジルコニウムは化合物に加工することで耐熱性、耐久性など多様な特性を持つ機能性材料となり、幅広い産業製品に組み込まれている。同社は自動車の排ガス浄化装置向けを主力とするが、近年では戦略分野としてエレクトロニクス領域を深耕し、半導体研磨材やコンデンサー向けで販売を拡大している。脱レアアース技術を開発していることでも知られ、目が離せない。
澁谷工業 <6340> [東証P]は飲料や調味料、医薬品を容器に入れる充填装置を主力に、さまざまな産業機械を製造する。半導体向けでは電極をつける「ハンダボールマウンタ」やチップをつなげる「ワイヤボンダ」、検査装置の「テストハンドラ」などを展開する。人件費や償却費といったコスト増の影響で今26年6月期は減益予想だが、株価には既に織り込みが進んでいるもよう。今月に入り、約8年ぶりの高値圏に浮上する場面があった。足もとPBRは1倍そこそこで割高感はない。
株探ニュース