馬渕治好氏、2018年【株式相場を大胆予測!】(1) <新春相場特集>

特集
2018年1月3日 16時00分

―世界的なリスクオン相場はどこまで続くのか―

いよいよ2018年相場の幕が上がる。17年相場は日経平均株価が1万9000円台半ばのスタートで年末まで約3500円幅の上昇をみせた。特に10月以降は一気に上げ足を強め投資家にとって満足の行く展開だったのではないか。年が明けても強気優勢の地合いに変化はなさそうだが、前方は雲一つなき青空が広がっているというわけでもない。米国を中心軸とする世界的なリスクオン相場はどこまで続くのか。また、日本株の上値余地、そして注目すべきセクターは。投資家の期待と不安がない交ぜとなった新春相場、そのスタートを目前にして、第一線で活躍する市場関係者3人に大局的な見地に立った読み筋を披露してもらった。

●「米株主導でいったん調整も、そこは買いの好機に」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

東京株式市場は中期的視野に立てば一段の上値余地があるが、短期的には米国株主導で下に振られる可能性を内包している。新春相場は注意も必要だ。

米国経済自体はしっかりしている。しかし、米株市場はPERなど株価指標面から行き過ぎに買われており、調整局面にいつ移行しても不思議はない。トランプ米大統領の肝いりで進めていた法人税の35%から21%への引き下げが実現したことは大きなインパクトを持つが、現段階では基本的に材料出尽くしと捉えられ、ここからの株価に浮揚力を与えるということはない。マーケットが期待する金融規制緩和についても、ゴールドマン・サックスやJPモルガン、シティグループといった大手金融機関には実際はそれほど恩恵が及ぶものとは思えない。

現在、世界の主要国の経済ファンダメンタルズ面から重大なリスクは見当たらず、中軸を担う米国の実体経済の力強さは米株市場の下値リスクを限定的としているが、それでも指標面からの割高修正圧力はどこかで働いてくる。そのタイミングや引き金となる事象は定かではないが、これまでのゴルディロックス相場(適温相場)に波乱が生じるまでにそれほど時間はかからないのではないか。1-3月に調整局面が訪れる可能性は高いとみており、その際には東京市場も影響を回避することはできないだろう。

もっとも、いったん下に振られた場面は仕切り直しの買いを入れる好機となる。日本株は国内に視点を向ければ買いである。日本経済は緩やかに回復過程をたどっており、それも外需主導から徐々に内需主導の回復にステージが変わりつつある。経済基盤がしっかりしてきたことは、安倍政権が命題とするデフレ脱却に向けた歩みを意味するもので、これは最近の百貨店の収益回復や一部値上げが奏功している外食産業の業績にも反映されている。18年を通じてみれば、内外金利差をベースとした外国為替市場での円安、そして景気回復を背景とした株高トレンドが維持されると考えている。為替は米株安に連動して対ドルで107円程度まで短期的に円高に振れる可能性もあり得るが、基本的には110~118円のレンジを想定している。

日経平均は1-3月に米国株の調整に引きずられ2万円大台を割り込む場面もありそうだ。しかし、前述したようにそこは買い場であり、年央にかけて急速な戻り足に転じる公算が大きい。夏場にいったん高値をつけ、年末にかけて買い直される展開を想定しており、高値は2万4000円を目指すシナリオを描いている。

物色対象としては、インバウンドと内需拡大の恩恵を受けるツルハホールディングス <3391>国土強靱化の国策に乗るエスイー <3423> [JQ]。外需株では世界景気回復を背景とした建設、鉱山機械の需要増加が見込まれるコマツ <6301> や原油をはじめ資源価格上昇が追い風となる三菱商事 <8058> 。また、世界的な電気自動車(EV)シフトの動きを背景に車載用2次電池で存在感を示すパナソニック <6752> などをマークしたい。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程終了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「勝率9割の投資セオリーは存在するか」(東洋経済新報社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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