見え始めた“割安感”――暴落「第2波」の後に待つもの <株探トップ特集>
―続く2018年相場“重要局面”、NYダウに「割高感解消」指摘―
世界的な株式市場の“激震”が続いている。NYダウ平均は8日に前日比1032ドル安を記録。5日の1175ドル安に続く史上2番目の下げとなった。これを受け、9日の日経平均株価も508円安と大幅下落した。市場では、「ゴルディロックスと呼ばれた適温相場に変調が出つつあるのでは」との懸念から、リスク資産を減らす動きも指摘されている。今後の展開は、日米中央銀行がカギを握っているとの見方が多く、ここから3月に向けての動きが今年の相場を左右する重要局面となる可能性が高い。
●米長期金利の上昇止まらず、NYダウの下値探る局面
市場関係者が、いま注視しているのが米国の債券相場だ。米10年債利回りは8日に一時、2.88%に上昇。これはほぼ4年ぶりの水準だ。米長期金利は上昇に弾みがついており、「上昇ピッチが速すぎることを市場は懸念している」(SBI証券の鈴木英之調査部長)という。この長期金利上昇が、熱過ぎず冷た過ぎない「ゴルディロックス相場」の基調を崩しかねないことが市場の懸念を呼んでいる。
米長期金利上昇のトリガーとなったと言われるのが、トランプ大統領の大型減税政策の決定だ。米大型減税は、企業業績の拡大期待を膨らませ、NYダウの大幅上昇をもたらした。しかし、同時に水面下では、米長期金利の上昇のマグマが蓄積されていたというわけだ。そこへ今月2日の米雇用統計で平均時給が予想を上回る上昇をみせたことを契機に、一気に金利が上昇。低金利状態では容認されていた米株式市場の高PERが修正を余儀なくされ、それが世界連鎖株安につながった。
●米国は高PERの修正局面、株高の根本基調は揺るがず
そんななか、金融関係者が頭を悩ませているのが「今後もゴルディロックスの継続を前提に、相場形成を考えていいのか」(アナリスト)という点だ。それは図らずも、今後の金利上昇のピッチはどの程度か、その時の想定為替をどうみるかにつながる。
アムンディ・ジャパンの吉野晶雄チーフエコノミストは「景気拡大と金利上昇が同居する普通の景気拡大局面に入ったかを見極めることが重要だ」と指摘する。とは言え、「世界的な株高を支えてきた最も基本的な要因は世界景気の拡大だが、この前提が崩れたとは思えない」と中長期的な株高継続の見方を支持している。
米株式市場の行方を探るうえで吉野氏は、「消費者物価指数(CPI)+予想PER」という指標を使うという。この指標は2月初旬にかけ20倍台を超えNYダウは割高状態にあった。しかし、足もとの調整を経て予想PER部分は19倍を割り込んできており、適正水準の18倍前後に近づいている。「NYダウは、まだ日柄面での調整が3月にかけて必要だろうが、値幅面での調整はほぼ良い水準まできたと思う」と同氏はみる。
●日銀人事が重要テーマに、株価一段安ならETF買い増額観測も
今後の米国をみるうえでのポイントは、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策だ。とりわけ、大きな焦点は3月20日~21日にかけての米連邦公開市場委員会(FOMC)となりそうだ。ここでの利上げの有無はもちろんだが、先行きの金利水準をみるうえで参考となる「ドットチャート」で年3回の利上げ予想が維持されるかが注目点。利上げ見通しが維持された場合、NYダウは本格反騰に転じる可能性がある。
一方、日本はどうか。懸念されているのは「円高進行を背景に、19年3月期の業績拡大シナリオが変更を余儀なくされること」(吉野氏)だ。市場には19年3月期業績を、1ドル=110円台での円安を前提に2ケタ増益と予想する見方が少なくない。これが、105円前後の想定となった場合、株高予想の前提が崩れることになる。
しかし、直近の日経平均の予想連結PERは13倍前後に低下した。これは「アベノミクスが始まって以来の低水準」(SBI証券の鈴木氏)であり、株価の下値余地は限られている。それだけに、足もとの円高懸念を払拭できるかが注目されるが、ここで市場関係者の関心を集めているのが日銀の人事動向だ。4月に任期満了を迎える黒田日銀総裁の留任はもちろんのこと、3月に任期を迎える岩田副総裁の代わりに、本田悦朗・駐スイス大使のようなリフレ派を充てれば、金融緩和姿勢継続の強力なメッセージとなり、円高基調に歯止めがかかるとの観測がある。
また、株価の急落時に日銀がETFを1日1000億円規模で買うといったことも、株価底入れの要因となる。世界の金融関係者は、3月にかけて日米中央銀行がどんなリカバリーショットを打つかを凝視している。
◇日本株はバリュエーション面で米国株に比べ反発力強い
証券ジャパン調査情報部長 大谷正之氏
米国株は、システム売買の影響で下げ幅が極端に拡大している。米連邦準備制度理事会(FRB)は、2年間程度の時間を掛けながら米長期金利を3%程度に誘導する腹積もりだったことに比べ、最近の金利の急上昇は確かに急激といえる。NYダウ平均株価は26週移動平均線の2万3700ドル近辺か、200日移動平均線の2万2800ドル水準が下値メドとなるのではないか。
日本株は、米国株に比べてバリュエーション面では評価不足の状態にあり、時価で試算した日経平均のPERは14倍台を割り込んでおり、こうした状態は早急に解消されそうだ。日経平均の下値メドは12ヵ月移動平均線の2万800円近辺と想定している。この値ごろは、今回の上昇相場がスタートした昨年9月半ばの水準に相当する。いったん反発に転じれば、夏ごろまでに来期業績で試算したPER16倍の2万6000円台に乗せる可能性もある。
◇株価・為替ともに下向き基調強い
外為どっとコム総研シニアテクニカルアナリスト 川畑琢也氏
日経平均株価は200日移動平均線(2万1003円)で踏み止まれるが焦点。もし200日移動平均線を下回れば、2万円ちょうどが意識される。これは昨年9月の上昇時につけたマドを埋める方向に向かうことを意味する。200日線を維持し75日移動平均線(2万2794円)を回復できれば下げは一服で、次は2万4000円が焦点。ただ、この水準まで戻れない場合、株式市場の下向き基調は続いているとみられる。
為替は20日移動平均線に上値を抑えられる状態。20日線が横ばいに転じないと円高が続きそうだ。その意味で、今後、2週間程度が重要な期間となる。当面は1月26日の108円28銭が下値メドだが、ここを割り込めば昨年9月安値107円31銭、続いて106円半ば~後半が意識される。さらに、その水準を割れば101円がメドとなる。
株探ニュース