切り口満載「警備保障株」、“大阪G20”でスター候補輩出へ <株探トップ特集>

特集
2018年3月5日 19時30分

―活躍の大舞台続々と、伊勢志摩の夢よもう一度!?―

政府は、2019年の20ヵ国・地域(G20)首脳会合を大阪で開催することを決めた。もともと日本での開催が予定されていたが、国内での開催地が決定したことで、一気に注目度がアップしている。世界各国の政府首脳が訪日(来阪)することになるが、なんといっても警備は最重要課題といえる。各国関係者の安全確保は、まさに国の威信がかかっていると言っても過言ではなく、今後具体的な動きが加速するなかで、「警備保障関連株 」にスポットライトが当たりそうだ。関連銘柄の動向を追った。

●またしても大阪か!

株式相場的な感覚でいえば、大阪万博、カジノ誘致に続き「またしても大阪か」といったムードも漂うが、前述の2つと決定的に違うのは、開催が決まったという点だ。警備保障関連株については、もはや思惑ではなく、現実買いのスタートが近づいたといってもいいだろう。とはいえ、米国発の世界連鎖株安というタイミングの悪さが、テーマ株から投資家の矛先を遠ざけさせる状況で、警備保障関連もまた多分に漏れず荒波にのまれ株価は厳しい展開を強いられている。

ただ、2016年の5月の伊勢志摩サミット(G7)では、警備保障関連に注目が集まり、株価が動意する場面があったことから、来年19年の6~7月をメドに開催されると伝わるG20をにらみ、二匹目のドジョウを狙った買いが入る可能性は高い。加えて同年にはラグビーワールドカップ日本大会(11月)、元号変更に伴うさまざまな皇室行事、20年には東京五輪といったビックイベントが控えるだけに、腰を据えて取り組める相場になりそうだ。

●約35もの国と機関が参加

G20といえば、世界20ヵ国から首脳が訪日すると思いがちだが、実際は招待国などを加えると約35もの国と機関が参加することになる。さらに、財務相・中央銀行総裁会議は福岡市で、そのほか外相、農相会議などさまざまな閣僚会議が各地で開催。まさに日本列島がG20に染まるという一大イベントで、警備保障会社にとってはこの上もない活躍の大舞台となる。

メーンの首脳会合が行われる大阪市(会場はインテックス大阪を予定)では警備について「基本的には、現在では決定事項はなにもない」(経済戦略局)とするが、「当然のことながら警備は警察が主軸になり、国の主導でやることになる。民間警備の利用については、大阪市、大阪府、関西の経済団体と一緒になって進めていくことになり、そういった合同組織からの発注になるのではないか。一般論で言えば入札方式になると思うが、まだ決まってはいない」(同)という。

●やはり注目はセコムとALSOK

警備保障関連株においては、ALSOK <2331> とセコム <9735> が注目度で群を抜く存在だ。両社は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会と「オフィシャルパートナー契約」を締結しており、東京五輪関連としても熱い視線が集まる。

セコムでは「(G20について)まだ情報待ちの状況だが、即応態勢は整っている。19年にはG20のほかに、ラグビーW杯など重要イベントが続くなか、滞りなく安全が守られるような体制づくりを、しっかりと行っていく。業績については、良い結果をもたらすのではないか」(コーポレート広報部)という。伊勢志摩サミットでの経験については「伊勢志摩という複雑な地形において、3Dセキュリティーなど新しい技術を活用した警備を行うことができ、その経験、技術がいまにつながっている」(同)とし、G20での警備についても自信をのぞかせる。また、ラグビーW杯(日本大会)の警備分野では同社が唯一のオフィシャルスポンサーとなっており、日本大会が接近するなか株式市場でも脚光を浴びそうだ。

今年に入っての全体相場急落で、当然のことながら両社の株価も下落している。セコムは年初に8500円近辺だった株価が、きょうは一時7500円を割り込む場面もあった。ALSOKは1月9日に6520円まで買われ昨年来高値を更新したが、悪地合いに引きずられる形で急落、現在は4800円近辺でもみ合う展開。しかし、今後続く重要スケジュールを背景に、警備保障関連株のリード役として再び上昇気流に乗ることは予想できる。

●“地元”で東洋テック、シップヘルスケアに思惑も

今回のG20は、福岡有利との見方もあったが、大阪が宿泊施設の豊富さや空港からのアクセスの良さに加え、1995年にアジア太平洋経済協力会議(APEC)を開催した実績も評価されたようだ。また、25年誘致を目指す大阪万博へ向けて政府の“後押し”との見方もある。東京都も当然のことながら候補地として挙がったようだが、皇室行事、ラグビーW杯、翌年の五輪を控え「難しい」と判断したようだ。

開催が大阪に決定したことで、同地を地盤とする銘柄にも脚光が当たるかもしれない。東洋テック <9686> [東証2]は関西を中心に業務を展開しており、商い薄が難点だが“地元開催”ということから思惑買いを誘う可能性もある。ちなみに同社の筆頭株主はセコムで、この点も注目ポイントといえそうだ。

シップヘルスケアホールディングス <3360> にも注目。同社は医療・保健・福祉・介護の4分野で展開する医療介護の大手だが、実は大阪地盤で警備などを手掛ける日本パナユーズを子会社化しており、警備保障関連の一角としても注目したい存在だ。2月6日、シップヘルスケアHDは18年3月期第3四半期累計を発表、連結経常利益は前年同期比25%増の120億2300万円に伸び、そのなかで日本パナユーズの業績が期初より寄与しているとしている。同社の株価は、1月4日につけた昨年来高値3850円から、悪地合いのなか2月6日には直近安値3315円まで売られたものの、態勢を立て直し3600円近辺で推移している。

●オールジャパンでセコム上信越、CSPなど

ある大手警備保障会社では「結局、こういった短期決戦型の警備は1社単独でできるものではない。全国の警備会社が連携してあたることになる」と言い、オールジャパンを唱える。そうした意味では関連株の多くが恩恵を受けることになりそうだ。

新潟では農相会議が開かれるとも伝わっており、新潟・長野・群馬を地盤とするセコム上信越 <4342> [東証2]にも目を配っておきたいところだろう。そのほかでは、大手のセントラル警備保障 <9740> をはじめ、トスネット <4754> [JQ]、イオンディライト <9787> などに加え、異業種だがアルバイト紹介などを展開するフルキャストホールディングス <4848> にも注目。傘下に常駐・雑踏警備および交通警備などの警備事業を展開するフルキャストアドバンスがある。

●RSCはセコムとタッグ

そんななか、にわかに株式市場でスポットライトが当たっているのがアール・エス・シー <4664> [JQ]だ。警備や清掃などビルの総合管理業務と人材派遣業務を手掛けており、業績は低迷しているものの今期は営業黒字転換を見込んでいる。同社は1月29日にセコムとの業務提携を発表、これを受けて株価が急動意した。600円近辺だった株価が2月2日には1600円まで買われる異彩の急騰劇を演じ、現在もなお1100円を軸にもみ合う頑強な展開を見せている。

東京株式市場は米国発となる急落に揺れるが、警備保障関連株は一過性に終わらない中・長期で取り組むテーマのひとつであり、慎重姿勢は必要なものの押し目買い好機との見方もある。さらに、急速に進む円高のなか、内需株の一角として再評価機運が高まることも考えられる。G20に加えラグビーW、東京五輪、そして大阪万博、カジノと切り口多彩な警備保障関連株の活躍はこれからが本番であることは言うまでもない。

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