馬渕治好氏【底入れから浮上本番か 東京市場の上値どこまで?】(1) <相場観特集>

特集
2018年3月12日 18時30分

―本格的な戻り相場で頭角を現す有望セクターや銘柄は―

週明けの東京株式市場は日経平均株価が大幅高で3日続伸と上値指向を強めてきた。前週末の米国株市場では好調な米雇用統計を背景に、NYダウ平均が440ドル高と急伸したことで、投資家の不安心理が後退している。俗に“節分天井、彼岸底”というが、3月上旬を境に全体相場は前倒し的に底入れを確認、本格的な戻り相場に転じたようにも見える。相場の先読みに定評のあるベテラン市場関係者に当面の見通しを聞いた。

●「年央までに日経平均2万4000円が視界に」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

12日の東京株式市場は前週末の米国株市場でNYダウが急騰した流れを引き継ぎ、リスクを取る動きに乗った。ひと頃と比べドル安・円高に対する警戒感も若干緩んでおり、足もと風向きは追い風に変わりつつある。

注目された2月の米雇用統計は事前の市場コンセンサスを上回る好内容だった。これに先立ち中国の製造業PMIを境に世界景気の減速懸念を警戒する向きもあったが、基本的に景気は強基調が継続するとみてよい。好調な米国経済は米金利引き上げの思惑ともリンクしていることで、これまではマイナス材料として作用する局面もあったものの、前週末は素直に米経済の強さを買う流れとなった。

そもそも米国株の調整はバリュエーション面で買われ過ぎたことの反動であって、現在のNYダウはその課題をクリアした水準にある。米金利上昇も経済の強さを背景とするものであれば許容されるムードが漂っているのは、いうまでもなく今の株価に割高感が意識されていないことの裏返しでもある。

米朝首脳会談については5月までに開催される方向にあることが伝えられたが、これで北朝鮮を巡る地政学リスクがこれで全くハヤされなくなるかというと、そういうことはなく今後も全体相場が揺さぶられる局面はあると考えておいたほうがよい。ただし、経済ファンダメンタルズ面からのマイナス材料が見当たらない東京市場は基本的に押し目は買いで報われるだろう。

国内政治の混迷を買えない材料に挙げる声もあるが、それほど上昇相場の活力を削いでいるとは思えない。実際、この問題に関する私への外国人投資家からの問い合わせは減っており、あくまで民間企業の収益実態に焦点が当たっている。日本企業はPER面で割安感が依然として強い。日経平均採用銘柄ではアベノミクス相場のゾーンである14~16倍を大きく下回った水準にあり、米株安とドル安という2つのネガティブ要素が外れるようなら、急速に見直しが進む公算が大きいと思う。

日経平均は年央までに2万4000円ラインに手が届くだろう。注目セクターとしては安川電機 <6506> やキーエンス <6861> などメカトロニクスやセンサーなど設備投資関連の押し目を買い直すのも一法。また、半導体製造装置関連を再評価する動きが強まっており、東京エレクトロン <8035> やアドバンテスト <6857> などに出遅れ水準訂正の流れが期待できる。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「投資の鉄人」(共著、日本経済新聞出版社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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