5G商用化前倒しで商機 上値余地広がる有力株を追え <株探トップ特集>

特集
2018年4月26日 19時30分

―光ファイバー関連投資恩恵で電線メーカーに見直しの機迫る―

市場でも根強い人気のテーマである次世代高速通信規格「5G」だが、今年2月にスペインのバルセロナで開催された世界最大のモバイル機器見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」で、各国の大手通信事業者が商用化計画の前倒しを発表したことで、注目度がさらに高まっている。

それまでは2020年の商用化で世界的に足並みがほぼ揃っていたが、MWCの記者会見などでスイスのスイスコムや米ベライゾン・ワイヤレス、韓国KTなどが19年中の商用化を発表した。また、米AT&Tなどは以前から18年中のサービス開始が可能と表明しており、世界的に5Gはもはやスタートのカウントダウンが始まったといえる。

一方、日本では各通信事業者とも前倒しには慎重なようだが、世界的な情勢などにより今後、前倒しが検討される可能性もある。それに伴い関連投資も本格化するとみられ、関連銘柄の商機も拡大しよう。

●需要増加で光ファイバーの取引価格が上昇

5G投資が本格化する前に、既に活発化している市場がある。スマートフォンやクラウドコンピューティングの普及で世界的にデータ通信量が増加していることから、高速かつ大量にデータを送信する光通信に関連して、光ファイバー 市場が活発化しているという。

中国や米国が5Gに向けて光ファイバー網の整備を開始していることに加え、海底ケーブルの敷設などによって需要が拡大していることも背景にはある。需要拡大に伴い取引価格が上昇しており、世界市場の約6割を占めるとされる中国市場での取引価格は過去1年で2~3割上昇した。2000年ごろのITバブル期に各メーカーが投資を増やし、供給過剰に陥り値下げ傾向が続いていた反動もあるが、ここにきて需要増から需給がタイトになっており、これが価格の上昇につながっている。

●プリフォームの需要も拡大

日本からの輸出も増えており、日本電線工業会の調べによると、光ファイバーケーブル・コードの輸出金額は16年に前年比91%増の101億円に拡大し、17年にはさらに109億円になった。5Gでは、通信会社間やデータセンターをつなぐインフラとして、光ファイバーの需要がさらに拡大するとみられ、世界的大手である古河電気工業 <5801> では今年1月、米コムスコープ社と8年間にわたる光ファイバーの長期供給契約を締結した。また、住友電気工業 <5802> 、フジクラ <5803> なども需要拡大の恩恵が期待されている。

さらに、材料となるプリフォーム(母材)の需要も拡大している。光ファイバーの製造はプリフォームと呼ばれる円柱状のガラスから始まるが、光ファイバーの拡大に伴い需要が増加しており、信越化学工業 <4063> では昨年10月、総額180億円を投じて、国内外のプリフォームの生産能力を増強すると発表した。中国の合弁会社2社で生産能力を倍増するほか、鹿島工場にプリフォームの工場棟を増設し、需要の取り込みに力を入れている。

一方、光ファイバーと並んで光通信を支える光部品(光信号の増幅、分岐などをするための部品)は、16年後半をピークにした在庫調整局面が続いている。通信事業者の設備投資の3割程度を占める中国市場は18年も減少基調にあり、回復には時間がかかるとの見方が一般的で、関連企業にとってマイナスの影響を及ぼしている。

●通信事業者の収入源は企業向け中心へ

また、5Gで注目されるのが、関連市場の広がりだ。通信速度の上昇だけではなく、低遅延や多数同時接続などが実現される5Gでは、製造業やサービス業で新たな需要が立ち上がる。通信会社にとっては収入源がこれまでの個人中心からIoTに代表される企業中心へと変化するパラダイムシフトが起こることになろう。

5Gの普及・定着は2025~30年といわれていることからまだ少し先の話だが、5Gの最大の利用者と目されるコネクテッドカーや自動運転車で、現在の日本の保有自動車台数の5割に相当する4000万台の自動車が5Gを契約した場合、業界全体で1兆円近い通信収入が発生する可能性があるとの試算もある。

こうした動きに備え、NTTドコモ <9437> やKDDI <9433> 、ソフトバンクグループ <9984> といった通信事業者 では企業向けシステム開発に力を入れ始めた。ドコモの5Gを利用したパートナーシッププログラムには約600社が参加を表明しており、関心の高さがうかがえる。

また、5Gの商用化前倒しに伴い、関連企業が設備投資を前倒しで行う可能性も高まっている。NTT系通信工事会社大手のコムシスホールディングス <1721> や協和エクシオ <1951> 、5G向けR&Dテスタでシェアの高いアンリツ <6754> により恩恵が大きい。さらに通信インフラ向けシステム開発を手掛けるネクストジェン <3842> [JQG]、サイバーコム <3852> などにも引き続き注目したい。

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