原油高“急ブレーキ”の理由、次回OPEC総会「減産縮小」協議とその先 <コモディティ特集>
―新時代へ向かう産油国、サウジが求める「永続的」協調体制―
今月22日に開催の石油輸出国機構(OPEC)総会では、協調減産の規模縮小が協議される見通し。産油国の舵取り役であるロシアやサウジアラビアは1年半続けた協調減産の方向転換を目指しており、増産はほぼ決まったと言える。
●協調減産は目的を達成
2017年からOPEC加盟国と非加盟国が始めた協調減産の目的は、 原油価格の回復と世界的な石油の過剰在庫の解消である。具体的な原油の目標価格はないものの、ブレント原油は80ドルの大台まで達し、ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は70ドルを超えた。経済協力開発機構(OECD)加盟国の石油在庫を基準として世界的な過剰在庫が測定されるなか、石油在庫を過去5年平均の水準まで減らすことに成功している。
協調減産は産油国の望み通りの成果をあげた。OECD加盟国の石油在庫は中国など非OECD加盟国を含んでいないことから、サウジアラビアは石油の在庫水準をできる限り正確に測定するモノサシを探し求め、一時期は協調減産の来年以降への延長を模索していたが、現在は貪欲に原油高を追求する野心的な態度ではなくなっている。
●イラン、ベネズエラは減産不可避、供給不足懸念も背景に
原油価格が高くなり過ぎたことは主要国の景気回復を少なからず阻害しており、原油高の抑制を目指した協調減産の転換は妥当といえる。米国の経済制裁によってイランの減産は不可避であり、経済危機によってベネズエラの減産に歯止めがかかる見通しはなく、今年後半にかけて供給が不足する可能性が高いことも、協調減産の規模を縮小する理由である。
供給不足は原油価格を一段と押し上げるが、原油高の背景となってきた堅調な需要が原油高によって痛めつけられるリスクがあり、現状の主要国の景気と照らし合わせて、産油国は現状の原油価格に満足すべきであるといえる。
以上のような理由から協調減産の規模縮小について異論を挟む余地はほぼない。協調減産の規模を維持し、供給不足となってまでも原油価格をつり上げるべきであると考える産油国があるかもしれないが、おそらく多数派ではない。
●市場の関心はその先へ向かう
協調減産を従来の予定どおり年末で終了するのか、終了した後も協調体制を維持するのか、維持するのであれば生産枠を設けて生産水準をロシアやサウジアラビアが中心となってコントロールしていくのか、コントロールするのであれば半永続的に行うのか。協調減産が終了へと向かうことによる話題の広がりは大きい。市場参加者の関心の中心は協調減産の終了ではなく、その先にある。
サウジアラビアは数十年に渡る超長期的な産油国の協調体制に言及しており、産油大国であるロシアはサウジの構想に同調する意向を示していることから、OPECは新たな時代に向かっている。カルテルがロシアを加えて生まれ変わり、原油価格に対する影響力を強めることは必至であり、幅広い視点から今後の協議を追っていかなければならない。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
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