植木靖男氏【強調続く日経平均、“円安・株高”はどこまで?】(1) <相場観特集>
―重要日程控え、様子見ムードでも上がる株価の真相とは―
6月第2週は重要スケジュールが目白押しで株式市場全般も様子見気分が強まりやすい。前週末の日経平均株価の調整はそうした思惑が絡んだものだったが、週明け11日は主力株をはじめ広範囲に買いが優勢となり、早々に切り返しに転じる強さをみせた。この流れを中期上昇波の初動とみるか、一時的なリバウンドとみるかは意見の分かれるところ。ベテラン市場関係者にここからの株式相場見通し(2人)のほか、相場のカギを握る為替動向(1人)について見解を聞いた。
●「思った以上に強い地合いで月内2万3500円も」
植木靖男氏(株式評論家)
ひとことで言えば、足もとの相場は非常に強い地合いといえる。自分としても見誤った部分はあるが、5月21日に日経平均2万3000円トビ台で高値をつけてからの調整局面では強気ムードは鳴りを潜めていた。下値の浅い深いはともかくとして、時間軸的にこの早さで立ち直ってくるということに意外感がある。重要日程を控えており、その結果と相場への影響を、完全に予想するのは正直難しい局面にある。しかし、「相場は相場に聞け」という金言を引き合いに出せば、ここは不安材料をこなすだけの基礎体力が今の株式市場に備わっているということであると理解したい。
まず、前週末(8日)の米国株市場でNYダウ、ナスダック指数ともに高く引けたことが大きいと思う。G7サミットの結果についてどうみるかだが、貿易摩擦問題が一筋縄ではいかないことは、もとより織り込んでいた。それを踏まえたうえでG7の存在意義が問われるような感じでは全くなかったことから市場は安堵した。
12日の米朝首脳会談については経済ファンダメンタルズとは離れた部分で、これも日米の株式市場に与える影響は限定的だ。一方、今週はFOMC、ECB理事会、日銀金融政策決定会合と各国の中央銀行の金融会合が集中するが、大方の読み筋から大きく外れることは考えにくく、むしろ空売り筋の買い戻しを誘発する可能性がある。
日経平均は6月末までのレンジ上限として上値2万3500円近辺の水準を試す場面があって不思議はない。下値については押しがあっても26週移動平均線の2万300~400円どころでとどまろう。中期的に見て懸念要因がないわけではなく、それは米長期金利の継続的な上昇がもたらすレパトリエーション(米国への資金回帰)により、新興国からの資金流出がさらに加速的状況に陥ること。これについては注意深くウォッチしていきたい。
当面の物色対象としては、米株式市場と比べて出遅れ感が顕著な半導体セクター。また、金融株が戻り相場の軸を担うことを念頭に置き、メガバンクなどもマークしたい。このほか、個別に、製薬会社のマーケティングや情報支援を行うエムスリー <2413> や、工場用品のネット通販を展開するMonotaRO <3064> は内需の好業績株として注目している。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(うえき・やすお)
慶応義塾大学経済学部卒。日興証券(現SMBC日興証券)入社。情報部を経て株式本部スポークスマン。独立後、株式評論家としてテレビ、ラジオ、週刊誌さらに講演会などで活躍。的確な相場見通しと独自の銘柄観に定評がある。
株探ニュース