トレーダーたちの沈黙、「AI」は円高・株安の夢を見ない <東条麻衣子の株式注意情報>

市況
2018年6月11日 20時00分

外資系証券会社やヘッジファンドが人工知能(AI)化を急速に推し進めている。米ゴールドマン・サックスはAI化により600人いた現物株式取引部門のトレーダーを2人まで削減したほか、調査会社ユーリカヘッジが2017年に行った調査によるとAIを導入した23社のヘッジファンドではいずれも高い運用実績をあげているという。これだけを耳にすると、トレードではAIには勝てないと思う人もいるかもしれない。

確かにスキャルピングなどのスピードを競うような取引であればそうかもしれないが、筆者はトレードのAI化により、大きなマーケットの方向感は以前に比べてより掴みやすくなっているのではないかと考えている。

実際に筆者が独自につけているデータでは、以前よりも相場変調のサインが顕著に現れるようになったと思う。

■シンギュラリティに到達するのは2045年

シンギュラリティとは、機械が人間の脳を超える技術的特異点のことだが、そこに到達するのは2045年頃とみられている。

つまり、AI取引はディープラーニングによる完全自動化へ進化を続けているものの、現段階ではまだ「モデル計算を設定しているトレーダー(エンジニア)」が背後に存在している。削減後に残ったトレーダー(エンジニア)が売買設定を行い、その設定を基にAIがトレードを行っているといえるだろう。

人間特有の感情を取り除いた取引であることから、そこにはイレギュラー(ノイズ)が存在しない。また、筆者の推測ではあるが、その設定は毎日大幅に更新されるものではないだろうし、新たに追加される事項があったとしても、既存の優先事項に従って取引がなされると考えられる。このため、大量の過去データにより予測精度を高めていくAIトレーディングが影響力を強める中、われわれ投資家にとっても過去のマーケット動向はこれまで以上に参考になるのではないだろうか。

■決算発表前の上昇始動のタイミングに照準

前回の3月期企業の決算発表は4月末から5月半ばにかけて行われた。

日経平均株価を見ると決算発表が始まる約1カ月前の3月26日に2万0347円で底を打ち、5月21日に2万3050円の高値をつけるまで上昇を続けた。

第1四半期(4-6月)決算の今回も同様の動きとなるのであれば、7月末から始まる決算発表の約1カ月前、つまりは6月末あたりから買いが続くのではないだろうか。

ただし、前回は2月の世界株安や米中貿易摩擦などを受けて市場で懸念が高まっていた時期にあたる。ヘッジファンドや外資系証券において浸透が進み、影響力を増すAIトレーディングでも、優先事項として懸念材料が設定されていた可能性がある。懸念要因が後退した今回は、ラマダンが終わり、オイルマネーが市場に戻ってくるとされる時期(6月半ば)に合わせて買いが入ってきてもおかしくはない。

■ドル円と日経平均の非連動性

ドル円は11日午前に109円台前半から半ばで推移していたが、日経平均はプラス圏を推移している。若干とはいえ円高が進行しているにも関わらず、日経平均株価がそれに連動しない動きは2月の半ばにも見られた。

3月下旬以降、ドル円と日経平均は連動性を強めており、これまでの大きな流れでみれば「円高=日経平均は軟調推移」という方程式が成り立つが、それが通用しない動きもうかがえる。

AIの設定においても「円高=日本株売り」というルーチンが外されている、もしくはそれ以上の優先項目が設定されている可能性がある。

そもそも現在の日米金利差と同水準であった2007年には、1ドル=124円をつける場面もあった。

安全資産として買われる「円」の役割を考えれば、いまの水準は充分に懸念材料を織り込んだと考えてよいのではないか。

このように前回の決算前の株価動向、推定されるAIトレーディングの設定などを踏まえると、しばらく大きく売り込まれる要因はなさそうだ。材料難に加え、出来高が細っていることから一方通行の上昇とはいかないかもしれないが、やはり基調は上昇方向。押したところは拾うスタンスで臨むべきだろう。

◆東条麻衣子

株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。

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