“未病”対策に活あり、人生100年時代到来で重要キーワードに <株探トップ特集>

特集
2018年8月11日 19時30分

―国内初の展示会刺激に、平均寿命と健康寿命の落差埋める企業は?―

病気になる一歩手前の状態である「未病」に関するビジネスが拡大しそうだ。65歳以上の人口が3割近くを占める超高齢社会を迎え、医療や 介護にかかる費用がさらに増加することが予想されるなか、病気の予防が今後ますます重要になってくる。今月24日からはパシフィコ横浜で未病をテーマとした国内初の展示会「未病EXPO2018」が開催される予定で、これをきっかけに新たな投資テーマとして浮上する可能性がある。

●政府、関連市場規模10兆円を目指す

厚生労働省によると、2016年時点での日本人の平均寿命は女性が87.14歳、男性が80.98歳と世界で最高水準にある。一方で、健康寿命(介護を受けたり、寝たきりになったりせず、自立した生活ができる期間)は女性が74.79歳、男性が72.14歳で、これは多くの人が約10年にわたって介護や医療を受けながら暮らしていかなければならないことを意味する。

医療の高度化で平均寿命が一段と伸び、健康寿命との差が広がれば、医療・介護給付費がさらに増大することになり、内閣府では18年度見込みの約50兆円から25年度には約63兆円、40年度には約95兆円になると試算。費用を抑えるためには健康寿命を延ばすことが必須で、未病が注目される大きな要因となっている。

安倍政権が昨年9月に「人生100年時代構想推進室」を設置し、誰もが活躍できる社会の実現を志向するなか、未病への対策は超高齢社会を乗り越えるキーワードといえる。経済産業省は「健康寿命延伸産業創出推進事業」などに取り組んでおり、同省は20年に関連産業の市場規模10兆円を目指している。

●ココカラファインは神奈川県のファンドに参加

未病対策にいち早く力を入れているのが神奈川県で、14年8月にはCYBERDYNE <7779> [東証M]や味の素 <2802> などと「未病産業研究会」を設立。これは関連産業を育成して経済の活性化を図るもので、現在では600社以上が会員企業として名を連ねている。また、同県は今年3月に未病や先端医療分野のベンチャー企業を支援する総額12億円規模のファンドを立ち上げ、戸田建設 <1860> やココカラファイン <3098> などが参加した。

さらに、同月にはカゴメ <2811> と未病改善の取り組みに関する包括協定を結び、SBSホールディングス <2384> のグループ会社である日本レコードセンターと協力して未病サポーター養成研修を開催。6月にはアサヒグループホールディングス <2502> 傘下のアサヒ飲料と未病をコンセプトとした自動販売機の展開などで覚書を締結している。

●メディシスなどNEDOの実証事業に参加

このほかに官民が連携する動きとして、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は7月31日、ビッグデータを活用した予防医療で2つの実証事業を開始したと発表。ひとつは、 IoT家電やセンサー、ウエアラブル機器などから生活データを収集し、健康相談や生活支援、介護支援といったサービスを実証するもので、プラットフォームをシャープ <6753> とKDDI <9433>ウエアラブル機器をオムロン <6645> 、生活データに基づく健康相談の研究開発をセコム <9735> 、高齢者の行動特性把握に関する研究開発をコニカミノルタ <4902> が担当する。

もうひとつは、IoT家電やセンサーの情報を集約するとともに、高齢者の生活をサポートするための高次データ処理を行うデータプラットフォームの構築で、生活モニタリングによる地域包括ケアシステムをパナソニック <6752> 、見守りサービスに関する研究開発を関西電力 <9503> 、薬局による在宅高齢者などの生活サポートサービスの研究開発をメディカルシステムネットワーク <4350> が担う。

●OKIは早期発見につながる仕組みを開発

これ以外では、沖電気工業 <6703> が7月26日、ZEROBILLBANK JAPAN(東京都品川区)およびno new folk studio(東京都千代田区)と共同で、歩行分析から認知症の予防や未病の早期発見につながる仕組みを開発したと発表。この仕組みは、加速度センサーや角速度センサー、無線通信機器を組み込んだ靴を使い、通常の歩数計やスマートフォンアプリでは測定できない足の着地角度や持ち上げた足の運び方などを3次元的に分析する。

メディカルネット <3645> [東証M]は6月8日、広島大学発のベンチャー企業であるミルテル(広島市)と資本・業務提携した。口腔領域における唾液や口腔粘膜などの臨床検体を利用した未病・疾患早期発見を目的としたサービスを企画・開発し、メディカルネットが独占的に販売を行う。

TOTO <5332> は各種センサーやIoT通信デバイスを搭載したトイレで、未病状態の把握に役立つ情報を収集し、健康維持につなげる取り組みを推進。ノーリツ鋼機 <7744> 子会社のNKメディコは、脳梗塞や心筋梗塞、認知症、がんなど多岐にわたる検査により、健康で持続可能な予防医療を提供している。

●遺伝子検査やストレスチェックの関連銘柄にも注目

未病に対する認知度が高まれば、心身の状態を健やかに保つため、事前に特定の病気になるリスクを把握できる 遺伝子検査や、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐストレスチェック、適度な運動への需要からスポーツクラブを手掛ける企業の追い風となりそうだ。

関連企業としては、17年10月に遺伝子検査サービスを行うジーンクエストを子会社化したユーグレナ <2931> や、遺伝子検査サービス「MYCODE(マイコード)」を販売しているディー・エヌ・エー <2432> 、ストレスチェック義務化対応商品「アドバンテッジタフネスシリーズ」の売り上げが伸びているアドバンテッジリスクマネジメント <8769> 、ストレスチェックプログラムを提供するベネフィット・ワン <2412> [東証2]などに注目。

スポーツクラブは、コシダカホールディングス <2157> 、ルネサンス <2378> 、RIZAPグループ <2928> [札証A]、セントラルスポーツ <4801> 、東祥 <8920> 、コナミホールディングス <9766> などが運営している。

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