【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆チャイナフリー◆

経済
2018年9月23日 10時05分

〇米中貿易戦争の企業への影響に関心〇

米中が第3弾の高関税合戦に踏み切ったタイミングでの株価急上昇に、メディア解説を中心に戸惑いが見られる。多いのは、税率が25%から10%に抑えられた、今のところ統計上は影響が見られない、早晩、対話に向かうなどの楽観論を伝えるもの。正しくは、市場はそれ程楽観的には見ていないが、今まで(とりわけ6月中旬以降)米中貿易戦争を材料に売り方が攻勢を続け、株価が下落ないしは抑え込まれてきた展開に、一旦反動が出ているものと解説すべきであろう。

当然、買い戻し一巡後の動きが焦点となる。端的に言えば、売り方が再攻勢を掛ける展開になるのか、相場が居所を変えたことで新たな展開に入っているのかの見極めとなろう。共産国の崩壊はソ連で経験しているが、市場性は乏しかった。大規模な(建前上の)市場経済を伴った社会主義国の崩壊は経験が無く、手探りの状況が続く。話題性の乏しかった昨日の日銀金融政策会合だったが、記者会見で黒田総裁は貿易問題を「非常に懸念している」と警戒感を示した。不透明感の強さを指摘しているものと受け止められる。

企業行動の流れが一つの判断材料となる。中国ではないが、昨日、独BMWがブレグジットの混乱を避けるため、英工場の操業を来年4月に4週間ほど停止すると発表した。企業のリスク回避行動が大きな流れとなるのか、限定的か、ニュースに反応する展開が想定される。NHKの報道によれば、コマツが中国生産の建設機械部品の一部を日本とメキシコに移した、三菱電機はレーザー加工機生産を名古屋に移管、東芝機械は中国から対米輸出していたプラスチック射出成型機を来月から静岡とタイに移す、などの事例がある。この範囲内であれば、企業業績にはほとんど影響は出ないと見られる。一方で、トヨタや日産が中国での自動車増産に取り組む方針を表明、中国事業の強化を打ち出している企業も多い。経団連などの財界訪中団は前のめりの協力姿勢を打ち出した。前傾姿勢が警戒感を強めるリスクがある。

既に、日本企業は過去の反日運動などを契機に、「チャイナ・プラスワン」として、東南アジアなどに生産拠点を分散した企業が多い。巨大な中国国内市場の魅力も捨て難く、地産地消的考えが主流だ。中国からの対米輸出はウェイトは小さいと見られ、勝負は中国国内の経済減速が厳しくなって来た時、中国当局が自国企業優先で締め付けを強化して来た時などとなろう。安倍首相の日中関係改善策は主に後者に楔を打つ狙いがあると考えられる。

17日、インド通信省は次世代5G通信ネットワーク機器のサプライヤー候補から、中国・ファーウェイ(華為技術)とZTE(中興通訊)を除外したと発表。米、豪、韓国に続く動きで、安全保障上の問題を理由にしている。米議会はZTEを厳しく監視する法案を議会に提出した。米司法省は、中国国営の新華社と中国グローバルテレビネットワーク(CGTN)に対し「外国エージェント」として登録するよう命じた。予算、支出の報告義務が課せられ、議会内取材許可証を失うと見られる。

日本では目立った動きはないが、今後、中国個別企業への対応が厳しくなろう。それを含めて日本企業の対応判断が必要になる。中国との関連性を極力薄める「チャイナフリー」が台頭するか注目される。

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/9/20号)

《CS》

提供:フィスコ

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