ラグビーW杯“追い風”予想以上、「ホテル関連株」に注目なワケ <株探トップ特集>

特集
2018年10月2日 19時30分

―インバウンド伸び悩みも一時的、ホテル業界好収益環境は続く―

東京オリンピック開催インバウンド需要の急拡大を背景に、株式市場でも急速人気となった ホテル関連株だったが、現在の状況はけっして注目度が高いとはいえない。また、訪日外国人数の伸びが鈍化していることも、ネガティブな材料として受け止められているようだ。しかし、2020年の東京オリンピックに加え、ここ認知度を急速に上げてきた来年9月から11月にかけて日本で開催される「ラグビーワールドカップ2019」という強い追い風を背に再びスポットライトが当たる可能性は大きい。ホテル関連株の現状と今後の展開を探った。

●訪日客数は伸び率鈍化も

訪日外国人数の伸びが鈍化している。日本政府観光局が9月19日に発表した「訪日外客数・8月推計値」によると、8月単月は前年同月比4.1%増の257万7800人となり、同月としては過去最高を記録したが、伸び率は2ヵ月連続で1ケタ台にとどまった。

国内で発生した大規模な自然災害の影響が大きいと分析され、とくに韓国が2ヵ月連続のマイナスとなったほか、中国は7月の12.6%増から4.9%増に縮小するなど、6月に起きた大阪北部地震や7月の西日本豪雨の影響が出た格好だ。また、9月に発生した台風21号や北海道胆振東部地震では、関西国際空港と新千歳空港が被災したことに加え、今回発生した台風24号などの影響もあり訪日客数がさらに伸び悩む可能性も出ている。

●材料はオリンピックだけにあらず

ただ、訪日客数の伸びが鈍化しているとはいえ、増加していることに変わりはない。ホテル業界関係者によると、東京オリンピックなど重要イベントが控えるなか「自然災害の影響は重荷だが、過度の心配はしていない」という。株式市場だけではなく日本全体が東京オリンピックばかりに目をとらわれがちだが、「来年、日本で行われるアジア初のラグビーW杯によるインバウンド効果は予想以上に大きいのではないか」(同)との期待感も強いようだ。開催まで1年をきったラグビーW杯、今後プロモーションの積極化が予想されるだけに注目は怠れない。東京オリンピックに加えラグビーW杯という強力な追い風が吹くなか、株式市場でも物色の矛先が向かう可能性は大きく、つれてホテル株にも再び投資家の熱い視線が注がれそうだ。

また、国内準大手証券ストラテジストも「訪日客の伸び率は7月、8月と連続で1ケタ台にとどまったが、これは異常気象の問題など特殊要因が影響したもの。一過性の現象にすぎず、安倍政権の積極的なプロモートの下で、趨勢(すうせい)的に訪日客が伸び悩むということはないと考えている。したがってインバウンドによるホテル需要の逼迫は今後も中長期的に続くだろう。ホテル不足は訪日客誘致の重要課題であるとともに、関連業界にとっても需要と供給のバランスを考えれば、当分の間、好収益環境を享受するということになろう」と指摘する。

●藤田観光は新規需要に期待感

「ラグビーワールドカップ2019」は、9月20日から11月2日に開催予定で、44日間にわたり熱戦が繰り広げられ、夏季オリンピック、サッカーW杯に次ぐ世界規模のスポーツイベントだ。オリンピックと比較して長期間の開催である事に加え、日本各地での開催となり訪日客の長期滞在が見込まれることから、宿泊施設関係者の期待感は強い。

ワシントンホテルをはじめ全国でビジネスホテルなどを展開する藤田観光 <9722> でも、「来年の9月開催ということもあり、現在予約状況などに大きな影響は見られない。ただ、ラグビーW杯は長期間に渡ることに加え、国内各地で開催されることからインバウンド需要拡大につながると期待している。また、ラグビーは欧州やオセアニアが中心の人気スポーツということもあり、アジアからの集客に加え新たな訪日客の需要喚起につながるものと考えている」(広報)と話す。同社の株価は、ここ上げ足を速め3500円近辺で推移、1月12日に付けた年初来高値3620円を視界に捉えてきている。

●東祥、豊田スタジアムで日本戦

また、愛知県豊田市「豊田スタジアム」では日本戦を含む4試合が予定されており、同県を地盤としてスポーツクラブに加えビジネスホテルを展開する東祥 <8920> にもラグビーW杯関連として注目が集まる可能性がある。同社は7月31日に発表した19年3月期第1四半期の連結経常利益が前年同期比33.6%増の17億2300万円に拡大している。主力のスポーツクラブ事業、ホテル事業ともに出店拡大による増収効果が収益を押し上げた格好だ。株価も好調で、9月27日には4755円まで買われ年初来高値を更新している。スポーツクラブの展開で東京オリンピック関連、また27年に品川―名古屋間での開業を目指すリニア新幹線関連としての切り口もあり、折に触れて脚光を浴びそうだ。また、薄商いが難点だが子会社のABホテル <6565> [JQ]にも目を配っておきたい。

●ロイヤルホ、相鉄HDにも注目

一方、関西を地盤に展開するロイヤルホテル <9713> [東証2]からも目が離せない。大阪府では日本ラグビーの聖地・東大阪花園ラグビー場が4試合、神戸市の御崎公園球技場で4試合が予定されている。株価は年初来安値圏で推移しており、冴えない展開が続いている。ただ、ラグビーW杯が近づくなか、その動向には注視が必要といえそうだ。

もちろん東京の東京スタジアム8試合、そして神奈川県・横浜市横浜国際総合競技場では7試合が予定され決勝戦の地となることから、相鉄ホールディングス <9003> にも思惑が働きそうだ。同社は神奈川県地盤の電鉄大手だが、ホテルでは「フレッサイン」と「サンルート」を展開、物色の矛先が向かう可能性もある。株価は年初来高値圏を舞う展開で、9月28日に3840円まで買われ年初来高値を更新、きょうも頑強展開となっている。そのほかでは、共立メンテナンス <9616> 、ユニゾホールディングス <3258> なども要注目。

●政策後押しシナリオの思惑

当然、訪日客需要にとどまらず、全国各地での開催になるだけに国内旅行客の需要喚起も掘り起こす可能性は高い。先の総裁選で安倍首相の3選が決まり、長期安定政権の確立はこれまで日本株に対し売りポジションにあった外国人投資家の買い転換につながった。同時に、外国人は安倍政権の経済政策に期待している部分がある。秋の臨時国会で補正予算が打ち出される可能性は高く、これはいうまでもなく内需を刺激する。これが消費者のマインド回復につながれば、旅行需要などにも追い風となる可能性はある。

前出のストラテジストは「最大のポイントは来年10月に予定される消費税引き上げがどうなるかだ。現時点で、安倍政権はその素振りもみせないが、物価上昇率2%の命題がかすんでいる現状にあって、日銀による金融政策面でのアプローチも限界にきているというのであれば、消費税引き上げを行わないという選択肢もある。その可能性は決して低くないとみている。その場合は、大きな資金支出となる旅行需要が喚起され、当然ホテル関連セクターも潤うというシナリオが想定される」と政策を背景にした思惑を語る。

●長期滞在で民泊にも波及へ

ラグビーW杯の開催はホテル株だけではなく、ここ人気がいまひとつの民泊関連株も刺激するという見方もある。長期間の開催になるだけに、訪日客はよりリーズナブルな滞在場所を求めるという考えからだ。世界最大手の「Airbnb」と国内予約サイトコントローラー初のシステム連携を行い民泊需要に対応する手間いらず <2477> [東証M]、旅行サイトを一括で検索できる旅行比較サイト「トラベルコ」を運営するオープンドア <3926> など、ホテルに加え民泊市場でも活躍の素地が広がっている。

さらに、大阪が誘致を目指す2025年万博の開催地決定が、11月の博覧会国際事務局総会で決定する。仮に、誘致成功となればホテル関連株上昇の大きな援軍となることは間違いなしで、ここでも注目が集まりそうだ。

来年9月に開幕するラグビーW杯だが、東京オリンピック開催を前にしてホテル株をはじめ民泊、カプセルホテル関連株など宿泊施設に絡む銘柄を刺激しそうな気配が漂う。ラグビーW杯まで1年を切ったいま、そろそろ注目場面がやってきそうな気配だ。

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