【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆安倍首相、内政勝負に出るか◆

経済
2018年10月7日 10時05分

〇改造内閣始動、内政テーマに注目〇

第4次安倍改造内閣の一つの焦点は、世代交代を何処まで行うか、だったが、新入閣12人のうち安倍首相より年下は半分の6人。残りの半分は、派閥均衡・在庫一掃イメージがあり、世代交代に布石を打ちつつも党内安定にも配慮したバランス型となった。来年の参院選までの9カ月ほどの内閣で、主要閣僚留任の継続型の骨格となった。総裁選、沖縄知事選で「絶対安定」とまでは言い切れないとの見方があり、政策運営の「安定性」を優先した結果と受け止められる。

振り返れば、13年の発足時はアベノミクス歓迎相場だったが、14年春の消費税引き上げで曲がり、14年秋のハロウィン緩和で、金融政策一本足となった。15年夏のチャイナショック以降は海外情勢に翻弄される株式相場だったと言える。企業収益の海外依存拡大→米国のトランプ政権誕生もあって海外情勢激変の過程にあり、17年以降(相場的には16年11月以降)は海外情勢に左右される状況が一段と強まったと言える。

この間、モリカケ騒動もあって、内政は決め手を欠く状況が続いてきた。内閣改造はそれを立て直す機会とも言えるので、10-12月期の関心事は、内政立て直しへ、思い切った手を打ってくるかどうかになる。衆目の一致するところは「憲法改正」の動き。公明党が改めて消極姿勢を表明するなど、機運が高まっているとは言い難いが、焦点の一つは8月27日に麻生派が提言した「参院選前に国民投票」に踏み込むか。補正予算案二つ、来年度予算案審議、来春の天皇御譲位-新天皇即位などを考えると、日程的にはかなりキツイが勝負に出るなら可能性はある。

第二は財政均衡主義を降ろすかどうか。憲法改正を睨んで、再び消費増税先送り論が強まってきているが、11月の7‐9月GDP発表頃が一つのヤマ場と考えられる。今のところ、消費増税を実施する代わりに、住宅、自動車(米交渉は先送りされたが対米輸出削減の命題は燻る)などの政策減税策が有力と見られている。海外では、トランプ減税に続き、フランスが減税方針(住民税減税などが柱)を打ち出し、イタリアも財政赤字容認(GDP比2.4%)論で揺れている。主要国は財政赤字容認論に傾き始めている。

11月にも取りまとめられる「国土強靭化・災害に強いインフラ構築」の命題では、財投機関債のようなものの発行に踏み切るかも注目点。集中構築から半世紀を経て、日本のインフラは老朽化が目立つ。抜本的な再強化のウネリが出れば、株式市場の大きなテーマになろう。地方創生では、地方の税負担軽減や北海道を中心としたインフラ整備に公的資金を投入(具体的にはJRと電力)するかどうかなども注目される。原発などエネルギー政策の見直しも焦点になろう。

第三は遅れているIT化対応の加速。既に、菅官房長官を中心に電波オークションや携帯料金4割引き下げのアドバルーンが揚げられている。選対に回ったが、甘利氏は「データ戦略」をレガシー戦略の柱に掲げる。日米欧のルール作りも含む。中国の外国情報まで掌握しようとする国家独占体制の排除の狙いは米国の貿易戦争戦略にも通ずる。データ体制の整備が無いと、AIもまともに機能しないとの見方も出ている。

株価指数3ヵ月前比(TOPIX+5.38%)で見ると、マイナスセクターは、建設、食品、金属製品、空運、不動産の5つ。いわゆる内需系セクターに弱さがある。日本株嵩上げの条件の一つは、安倍首相の内政勝負の有無と考えられる。

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/10/3号)

《CS》

提供:フィスコ

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