田部井美彦氏【消えない暴落相場の残像、ここからの株戦略を読む】(3) <相場観特集>
―高値から3000円急降下で値ごろ感も、依然軟調続く―
日経平均株価は前週1週間で1300円あまりの下落、今月2日に付けた年初来高値からは実に3000円以上も水準を切り下げている。米中貿易戦争に端を発した世界景気減速懸念や企業業績への影響を嫌気するムードが蔓延(まんえん)している。来週11月6日には米国の中間選挙を控えており、この結果を見極めたいという思惑も漂う。暴落相場の残像消えぬなか、投資家は敢然と買い向かうべきか、ひとまず撤退して様子をみるか難しい選択を迫られている。卓越した見解に定評のある市場関係者3人に、ここからの見通しを聞いた。
●「底打ち接近も戻り相場の牽引材料が不透明」
田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)
まず、今週は4-9月期決算と19年3月期通期業績見通しの発表が佳境を迎えるなかで、個別企業の業績内容を確認しながらの個別物色の流れとなりそうだ。発表がやや先行している米企業の決算では、内容の良好なケースに比べて、芳しくない企業への株価の反応が敏感となる傾向が見てとれる。日本の場合もこうした流れには注意が必要だ。
今年の日経平均は、これまでのところ1月下旬と10月初めの2万4000円台前半の水準でダブルトップを形成したかたちとなっている。1月下旬の高値から3月下旬の安値までの下落幅を、今回の10月初めからの下落トレンドに当てはめると、2万764円となる。また、年初来安値圏にある東証株価指数(TOPIX)では、17年9月6日につけた安値1578ポイントがフシ目となりそうだ。こうしたことから、底打ちが接近しているとの判断ができそうだ。
ただ、底打ちが確認されたとしても、戻り相場の牽引につながるような明確なプラス材料が浮上しない限り、修復相場のペースは緩やかなものとなりそうだ。そうしたなかで、11月6日に実施される米中間選挙の経過が、世界の株式相場にとって一つの転換点となりそうだ。例えば米下院で民主党が多数派を奪還した場合には、トランプ米大統領の強気一辺倒な通商政策がやや軌道修正を迫られる可能性もある。
今後の物色対象としては、災害復旧・対策費を中心として決定した9400億円の18年度第1次補正予算に続いて、第2次補正予算も編成される見通しにあり、大手ゼネコンなどの建設関連に関心が集まりそうだ。個別銘柄では、好業績にもかかわらず株価面での調整を強いられているコマツ <6301> や、災害復興や再開発で貢献が期待される第一カッター興業 <1716> に注目している。
(聞き手・冨田康夫)
<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券シニアアナリスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。
株探ニュース