鈴木英之氏【日経平均戻り足、年末相場で投資家は報われるか】(2) <相場観特集>
―G20や米中首脳会談などを前に錯綜する思惑を追う―
師走を目前にしていよいよ年末相場が意識される段階に入った。米国株市場では前週末にNYダウが4日続落し、前週1週間で1100ドル以上の大幅調整となった。しかし、週明けの東京株式市場は頑強な値動き。2025年万博の大阪誘致が決定したことや外国為替市場で進むドル高などが、投資家心理をポジティブな方向に向けている。2018年相場も最終コーナーを回り、最後の直線勝負の様相だが、ここからの相場展望と物色の方向性について、先読みに定評のある市場関係者に話を聞いた。
●「低PERで下値は限定的、高配当利回り銘柄などに妙味も」
鈴木英之氏(SBI証券 投資調査部長)
ここから年末に向けた日経平均株価のレンジは、2万1600~2万3300円前後を想定している。これは、日経平均の今期予想連結PERで12.2~13.2倍程度の水準となるものだ。
19年3月期の企業業績は円安もあり会社計画よりは強めとなっている。しかし、来期の減益懸念も残っており、年末に向けて明確な上昇トレンドは想定しにくいのが実情だ。ただ、足もとの好調な業績を考慮した場合、下値は限定的とみている。
また、日経平均の予想配当利回りは2.12%前後と12年以来、約6年ぶりの水準にある。12年当時に比べ株価水準は大きく上昇しているだけに、この間、日本企業が増配に前向きな姿勢を見せたことは評価していいと思う。
今後のポイントは30日からの20ヵ国・地域(G20)首脳会議の期間中に開催される見込みの米中首脳会談だ。ここで何らかのポジティブな合意があれば、相場は上値を試しにいくことも期待できる。
12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)は利上げが予想されているが、ある程度は相場に織り込まれているだろう。
こうしたなか、JT <2914> やキヤノン <7751> 、ヤマハ発動機 <7272> などのような12月決算の高配当利回り銘柄に見直し余地があるとみている。また、電子部品や素材セクターなどの来期2ケタ増益銘柄には妙味がありそうだ。さらに、大阪万博関連銘柄のなかには、今夏の台風の影響などで調整した銘柄などもあるとみられるだけに、今後も人気が続く可能性はありそうだ。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(すずき・ひでゆき)
早稲田大学卒。リテール営業、調査部、株式部等を経て、SBI証券投資調査部長に。モーニングスター株式会社(投資調査部ゼネラル・マネジャー)へ転籍を経て2009年5月より現職。ラジオ日経、ストックボイス等で相場解説を行っている。
株探ニュース