2020年実用化へテイクオフ、「バイオジェット関連株」に上昇気流<株探トップ特集>

特集
2018年12月22日 19時30分

―COP24で「パリ協定」の実施指針を採択、CO2削減に向け高まる関心―

ポーランドで開かれていた第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)は現地時間15日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を運用する実施指針について合意・採択して閉幕。産業革命前に比べて気温上昇を2度未満に抑えることを目指した取り組みが2020年から動き出すことになった。地球温暖化の原因のひとつとされている二酸化炭素の排出量削減が喫緊の課題となるなか、各業界ではさまざまな試みが行われており、航空輸送分野では石油に代わる新しい燃料として バイオジェット燃料の実用化が期待されている。

●国際航空に課される厳しい排出規制

国土交通省の資料によると、16年度の国内の二酸化炭素排出量は12億600万トンで、このうち大きな割合を占めるのが産業部門の4億1800万トン(34.6%)、次いで運輸部門の2億1500万トン(17.9%)だ。運輸部門では自家用乗用車が9926万トン、営業用貨物車が4227万トン、自家用貨物車が3619万トンと自動車分野が大部分を占め、航空分野は1019万トンとなっている。ただ、排出量を輸送量(輸送した人数に輸送した距離を乗じたもの)で割った単位輸送量当たりの排出量でみると、航空分野が占める割合は決して小さくなく、旅客に限れば自家用乗用車に次ぐ大きさとなっている。

今後、アジアをはじめ世界的に大幅な航空需要が見込まれるほか、国内的にも国際線の旅客需要を中心に増加が予想され、これに伴って航空機からの二酸化炭素排出量も増加する見通しだ。国際民間航空機関(ICAO)は16年に開いた総会で、20年以降は二酸化炭素の排出量を増加させないことで合意し、超過分は各航空会社に排出権購入を義務付けている。ICAOでは、二酸化炭素の増加抑制には効率的な運航を実施するとともに、代替航空燃料が大きな役割を果たすとしており、バイオジェット燃料に関心が高まる要因となっている。

●洋エンジは実証設備建設に着手

将来的な市場拡大が期待されるバイオジェット燃料だが、技術面での課題は多く、現状では実用化までには至っていない。そこで、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では2つのテーマで、バイオマスから純バイオジェット燃料生産までの安定的な一貫製造技術開発を行っている。

ひとつは、微細藻類由来による技術開発で、事業委託先となっているIHI <7013> と神戸大学はタイに大規模な培養地を設置し、高速で増殖する微細藻類が生成する藻油からの燃料製造プロセスの技術開発を推進。また、IHIは昭和シェル石油 <5002> と共同で藻類由来の純バイオジェット燃料と、石油系ジェット燃料を混合したバイオジェット燃料の出荷及び航空機への給油までの供給体制構築に向けた取り組みを行っている。

もうひとつのテーマは、セルロース系バイオマスを原料とする技術開発で、この事業の委託先となっているのが東洋エンジニアリング <6330> 、中部電力 <9502> 、三菱日立パワーシステムズ(横浜市)の3社と宇宙航空研究開発機構(JAXA)だ。同コンソーシアムはこのほど、中部電力の新名古屋火力発電所の構内で、木質系バイオマスを原料とした純バイオジェット燃料を合成する一貫製造実証設備の建設に着手。燃焼試験設備や小型ジェットエンジンなどを使った20年度の検証運転開始を目指し、19年度中にも同設備の試運転を始める予定だ。

●ユーグレナは実証プラントが完成

また、ユーグレナ <2931> もバイオジェット燃料の研究開発に注力している企業のひとつだ。千代田化工建設 <6366> や伊藤忠エネクス <8133> 、いすゞ自動車 <7202> 、ANAホールディングス <9202> 、横浜市、ひろしま自動車産学官連携推進会議と協力し、10月末に国内初となるバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントが完成。20年までに国産バイオジェット燃料での有償飛行を実現したい考えで、19年夏からは実証プラントで製造した次世代バイオディーゼル燃料の供給を開始する計画となっている。

このほかにも、ユーグレナは日本ユニシス <8056> と共同で、8月からバイオ燃料用ミドリムシの生産量予測などを行う研究をスタート。この研究では人工知能(AI)IoTビジネスプラットフォームを活用し、生産量の安定化や屋外大量培養での管理コスト削減などを目的とした実証実験を進め、増殖シミュレーションモデルの構築を目指している。

●JALは米製造会社に出資

日本航空 <9201> は今秋、バイオジェット燃料の製造プラントを建設している米フルクラム社に出資した。また、同燃料の普及に向けた取り組みの一環として、10月15日から12月20日には衣料品を原料とした国産バイオジェット燃料の製造に挑戦するプロジェクトを実施し、三陽商会 <8011> などが衣料品の回収に協力。ベンチャー企業Green Earth Institute(東京都文京区)などの技術サポートも得て、20年中に同燃料を使用した国内初のチャーターフライトの運航実現を目指している。

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