IPO企業 ~社長の横顔~ エヌ・シー・エヌ

材料
2019年4月9日 10時00分

日本に安心・安全な木構造を普及させ、資産価値のある住宅を提供する仕組みをつくることを目的として1996年に設立されたエヌ・シー・エヌ<7057>。「日本で唯一の木造住宅の耐震設計をする会社です」と語る田鎖郁夫(たくさりいくお) 社長は、日商岩井(現双日)の出身。商社マンとして活躍していた1995年、阪神淡路大震災が発生、壊滅的となった木造住宅を目の当たりにした。日商岩井が木材商社でもあったことから、震災直後から仮設住宅建設のための木材の支給等、現地の復旧に奔走した。

震災による死者は6400人-。殆どが家の下敷きによる圧死であった。調査を行って分かったことがある。日本の建築基準法では木造住宅の構造計算が義務化されていないという事実であった。「木造だから弱い」のではなく、そもそも地震を想定した構造設計ではなかったのである。それは、地震大国日本で、必要な耐震性を確保することができていないことを意味していた。

「こんな悲劇を二度と起こしてはいけない。社会正義としても、木造住宅に厳密な構造計算を行い、十分な耐震設計をすべきだ。そして安心・安全な木造住宅への需要はあるはずだ」

すぐに稟議書を書き、上層部に提案したのが、1996年のセブン工業と日商岩井による合弁会社の設立であった。長野五輪の記念アリーナ建築の仕事をされていた構造家・播繁(ばんしげる)氏に協力を求め、大型建造物のノウハウを一般的な住宅に生かすSE構法を開発、木造技術のイノベーションを図った。圧倒的な強度をもつ、独自の木造建築用システムは、現在に至るまで同社の強みである。SE構法は、20年来の施工・建築経験の蓄積により、他社には追随できない知的財産となっており、規格住宅のOEM供給を依頼する大手ハウスメーカーも多い。

社名のエヌ・シー・エヌはNew Constructor’s Networkの略である。その名の通り、同社の理念に共鳴した地場の工務店をネットワーク化し、SE構法の勉強会を実施することで、耐震設計の普及に努めている。現在514社(2018年3月末現在)が登録しているが、これは日本最大。人口・世帯数減・住宅着工戸数減の市場環境の中で、新築木造住宅の高付加価値化を推進し、平均単価のアップを図っている。また、良品計画との合弁会社「MUJI HOUSE」が企画・開発・販売を行う「無印良品の家」にはSE構法が標準採用され全国で展開されている。

国による木材利用の促進や耐震化率引き上げの流れを受け、耐震性のある高級木造住宅や公共施設における大規模木造建築のニーズはますます拡大している。日本で唯一、国の認証を受け、木造住宅の性能と品質を保証する同社の事業が拡大していくことで、中古住宅の資産価値も測定できるようになり、長期的には、「米国や英国のように再販可能な中古住宅市場を創造することが可能だ」と田鎖社長は熱く語っていた。

《SF》

提供:フィスコ

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