大塚竜太氏【“令和相場”初日に「セル・イン・メイ」のつむじ風】(1) <相場観特集>
―米中摩擦懸念の再燃で予想外の下げ、ここからの展望は―
10連休明けで令和相場のスタートとなった7日の東京株式市場は、米中貿易摩擦が再燃するなか、一時380円を超える予想外の下落を強いられた。大型連休前は米中両国間の貿易交渉が順調に進展しているとみられていただけに、ここにきてのトランプ米大統領による関税引き上げ表明はネガティブサプライズを与える格好となった。「セル・イン・メイ(5月に売れ)」の相場格言も想起されるなか、ここで投資家が取るべきスタンスは。第一線で活躍する市場関係者に今後の見通しを聞いた。
●「目先不透明感も、下押す場面は買い下がり」
大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)
大型連休前は世界株高ムードが漂うなか、日経平均株価も上値追いに対する期待が強かった。しかし、トランプ米大統領が中国からの輸入製品2000億ドル分に課している関税を10%から25%に引き上げる方針を表明したことから、目先にわかに不透明感が高まったことは否めない。
“トランプ発言”という切り口では、これまでの経緯からみて交渉術の一端に過ぎないと見切ることも可能だが、今回の発言については背後にライトハイザー通商代表やムニューシン財務長官の影響も考慮されることから、それほど楽観視できない意味がある。仮に対中関税引き上げが現実化した場合は、株式市場にとっても全く織り込みが進んでいなかった分だけダメージも大きなものとなる。当面は今週予定される米中閣僚級貿易協議の行方が注目されそうだ。
また、5月相場は本格化する企業の決算発表を横目に神経質な展開となりやすい。(決算発表の件数は)今週末から来週前半にかけて集中している。フタを開けてみないことには分からないが、今期業績については慎重な見通しが予想されるなか、仮に見通しは厳しくても市場コンセンサスを上回れば相場にはポジティブに働くことが予想される。
足もとは米中摩擦問題を横にらみに予断を許さないとはいえ、急落しているのは日本株だけで、きょうの中国・上海株や香港株などが比較的底堅さをみせていることや、外国為替市場で思ったほど円高が進行していない点などは売り方にとっても疑心暗鬼となる材料だ。買い方のスタンスとしては、様子をみながら悲観に傾いた局面で押し目を狙うスタンスが望ましい。日経平均2万2000円ラインを大きく下回る局面では買い下がって報われる可能性が高いとみている。
物色対象としては、世界景気や為替の影響を受けやすい主力輸出株は大きく下押した場面のみ逆張りで対処するところ。基本的には人工知能(AI)や5G、働き方改革、バイオテクノロジー関連など内需のテーマ株が優位性を発揮しやすいだろう。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(おおつか・りゅうた)
1986年岡三証券に入社(株式部)。88~98年日本投信で株式ファンドマネージャーを務める。2000年から東洋証券に入社し現在に至る。
株探ニュース