山田勉氏【要警戒? 続伸も上値重い日経平均そのココロは】(1) <相場観特集>

特集
2019年5月20日 18時30分

―対米通商摩擦への懸念と意識される国内経済の不透明感―

週明け20日の東京株式市場は日経平均株価が続伸した。しかし、上値の重さが意識され、朝方に2万1400円台に買われたものの、その後は戻り売りに伸び悩む展開を余儀なくされた。電機や機械、鉄鋼など景気敏感セクターが安く、個別ベースでも値下がり銘柄数は1200あまりに達するなど下値を探る動きが目立った。米中摩擦問題に対する不透明感が強いほか、近く日米間の貿易交渉も始まることで、警戒ムードは拭えない。株式市場全般の見通しや為替の動向について第一線で活躍する市場関係者3人に話を聞いた。

●「消費増税ありきなら日経平均は2万円割れも視野」

山田勉氏(カブドットコム証券 投資情報室 マーケットアナリスト)

週明けの東京市場は日経平均が続伸したものの、値下がり銘柄数が多く全体地合いは見た目ほど強くはない。というより、先行き全く楽観できない流れに陥っている。

きょう朝方取引開始前の1-3月期のGDP発表が注目されたが、成長率が事前のコンセンサスに反して2四半期連続でプラスとなった。しかし、これは中身を見ると輸入急減でカサ上げされたうえ、住宅投資(消費税前駆け込み)と公共投資(防災減災)が寄与したもので、一方で家計消費や設備投資は弱く、実際は厳しい内容だった。今回、GDPがマイナスとなれば、当然ながら消費増税の凍結論議が俎上に載るところで、株式市場にとってはむしろその方が追い風要因となり得たのだが、微妙な数字でかえって中途半端にモヤモヤ感を引きずる格好となってしまった。

米中貿易交渉にしても、合意に向けた期待感は剥落している。米国は全ての中国製品に対する関税引き上げにとどまらず、中国通信機器大手ファーウェイなどへの制裁措置にみられるようにハイテク製品の輸出規制に至るまで手加減なしで打ち出している。この米中両国間で激しさを増す貿易戦争自体が、もはやリーマン級の不確実性をもたらしているといっても過言ではないだろう。日本がこうした環境下で消費税引き上げを強行するようであれば、余計な景気下押しを誘引し、全体相場を波乱に導く可能性がある。今週末から予定される日米首脳会談についても、トランプ政権の自動車関税引き上げをどう回避していくのか、極めて不透明感が強く、株価に悲観的な要素は多いとみている。

「増税は規定路線」の先に見えるのは日経平均の大幅な調整かもしれない。政策催促相場の様相を呈すなかで、日経平均は向こう1ヵ月以内に2万円大台を割り込む局面もありそうだ。こうした厳しい相場環境のなかで、とりわけ外需セクターの銘柄は業績の底入れ観測が遠のき、当面、物色の対象外となりやすい。セーフハーバーを求めるなら内需系の情報通信やIT系中小型株、高シェアや価格競争力に優れた小売やサービス、食品・薬品・トイレタリー・メディカルなどの内需系のディフェンシブセクター辺りとなりそうだ。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(やまだ・つとむ)

マーケットアナリストとして証券界で十数年活躍。2004年5月、カブドットコム証券入社。『こちカブ』(ラジオNIKKEI)『まーけっとNavi』(日テレNEWS24)『マーケットホットライン』(ストックボイス)などに出演。

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