田部井美彦氏【一進一退の日経平均、“トランプ摩擦”の影響は】(2) <相場観特集>
―超閑散商いで様子見ムード、今求められる投資スタンス―
週明け27日の東京株式市場は買い優勢の展開となったものの、今晩の米株市場が休場ということもあって市場参加者は少なく、記録的な閑散商いのなかで上値の重い展開を余儀なくされた。日米首脳会談は無難に通過したものの買い材料にも乏しく、相場の方向性は依然として定まらない。6月末のG20サミットに向け、米中摩擦問題の行方にマーケットの関心が高まるなか、日経平均株価がこの先どちらに傾くのか、また物色の方向性について市場関係者に意見を求めた。
●「自社株買いの急増をプラス評価」
田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)
きょう行われた日米首脳会談で、日米貿易交渉の合意は参院選後8月にかけての時期に先延ばしとなることが明らかになった。また、トランプ米大統領は、農業と牛肉が焦点としており、米国からの農産物の輸入拡大を要請するものとみられる。株式市場は、今回のこうした日米首脳会談の内容に目立った反応を示さなかった。
ただ、米政府による中国からの輸入製品関税率10%から25%への引き上げや、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)への輸出を事実上禁止する制裁措置が打ち出されたのは、いずれも日本企業の決算発表期間中であり、半導体や電子部品など米中貿易摩擦の深刻化で打撃が予想される企業の第1四半期(4-6月)や、第2四半期累計(4-9月)での通期業績下振れ懸念は払拭できそうもない。
今後、米中貿易交渉の進展がない場合は、6月28~29日に大阪で開催される20ヵ国・地域首脳会議(G20サミット)までは、全体相場は上値の重い推移となりそうだ。G20開催に前後して米中間で何らかの妥協点が見いだせれば、これを評価して投資家が上値を買う可能性もある。6月相場は、米中貿易摩擦への懸念がある一方で、自社株買いの急増というプラス材料もある。日経平均の想定レンジは、下値は2万1000円台固めで、上値は2万1800~2万1900円水準とする。
個別銘柄では、全般軟調相場のなかで比較的頑強な値運びをみせているソニー <6758> に注目している。同社は、IR説明会を開催して経営方針を明確に打ち出している。特に、次世代ゲーム機の開発や、CMOSイメージセンサーの用途拡大に伴う需要の広がりに期待が寄せられている。
2つ目は、連続過去最高益更新銘柄のなかから、作業服、関連用品の専門チェーンのワークマン <7564> [JQ]に注目。作業服で培った機能性を生かしたカジュアル衣料に展開し、プライベートブランド(PB)商品が好調で収益に寄与している。店舗併設により高機能ウェアの新業態「ワークマンプラス」の積極出店を推進しており、20年3月期も前期比10.5%経常増益で、5期連続の過去最高益更新を見込む。
3つ目は、大手小売業向けに需要予測型の自動発注システム「sinops」を展開しているシノプス <4428> [東証M]に注目。“働き方改革”や“食品ロス削減”など重要な国策が同社事業の追い風となっている。これまでの西日本地盤に加えて、20年12月期には、関東地域のスーパーマーケットに向けて攻勢をかける。
(聞き手・冨田康夫)
<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券シニアアナリスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。
株探ニュース