「5G」戦略ステージ始まる、FPGA関連“急騰モード”5銘柄+1 <株探トップ特集>

特集
2019年6月1日 19時30分

―全般相場は向かい風も個別テーマ物色の動きは健在、最強テーマでリベンジへ―

株式市場は向かい風が吹きつけるなか、どうにも前に進めないシーンが続いている。トランプ米大統領が強硬に打ち出すアメリカ第一主義を前面に押し出した通商政策、これが世界経済に大きな波紋を広げている。米中貿易戦争のさなかにトランプ米大統領はメキシコへの制裁関税を発表、これを受けて31日の東京市場もリスク回避の売りに晒される羽目になった。中国の5月製造業PMIが市場コンセンサスを下回るなか、外国為替市場でもリスクオフのスイッチが入り、一気に1ドル=108円台後半まで円高が進行。ここぞと先物を絡めた売り仕掛けが炸裂し、日経平均は2月8日以来の安値圏に沈んでいる。

●何度も見てきた風景、遠くから眺めて戦略を練る

しかし、こうした風景はこれまでに何度も経験してきた。名実ともに6月相場入りとなる来週、いきなり暗雲が晴れるとも思えないが、東証1・2部・新興市場いずれも騰落レシオ80%を下回っている現在、リバウンドをうかがうタイミングが近づいていることは認識しておくべきだ。投資家として“蛮勇”は避けるべきだが、至近距離ではなく、上空から俯瞰するような冷静な目を常にマーケットに向けておくことは大切である。

こういう場面の投資戦略として、大きく下に突っ込んだ銘柄を拾うのはひとつのセオリーだが、実際は“落ちてくるナイフ”をつかむことにもなりかねず口で言うほど簡単ではない。それよりも有効なのは強い株につくことだ。全体地合い悪のなかで強さを際立たせている銘柄には、それなりの理由があるからだ。狙い目となるのは海外市場の動向や為替相場に左右されにくい内需のテクノロジー系の中小型株。直近では 5G関連の一角に資金が再び流れ始めている。

5Gといってもその経済波及効果を考えた場合、関連株の裾野は思っている以上に広い。「5G経済圏」に位置する銘柄で、新たな上昇ストーリーが描かれようとしているテーマにFPGAがある。

●5G経済圏でキーデバイスFPGAの需要加速へ

AI IoT時代の到来やビッグデータの普及加速が、大容量・高速処理ニーズに対応する電子デバイスの需要を喚起している。そのなか、がぜん活躍余地を広げているのが製造・出荷後に現場でプログラムの書き換えを可能とするFPGAだ。

FPGAは「field-programmable gate array(フィールド プログラマブル ゲート アレイ)」の頭文字をとったもの。ハードウェアの中に組み込まれる電子デバイスで集積回路の主流であったASIC(特定用途向け集積回路)に代替するものとして需要を捉えている。ASICやASSP(特定用途向け汎用集積回路)などをはじめとする従来の集積回路は一度搭載したら、決められた設定を変更することはできなかったが、FPGAは、搭載した集積回路の設定を後から自由に変えることができる点が、スピード重視のIT新時代とマッチしている。

エレクトロニクス機器全般に使用することができて、エンジニアリングコストも低い。元来、CPU(中央演算処理装置)はプログラムとの組み合わせで演算処理する仕組みだが、FPGAは回路そのもので処理できるため計算速度が速くAIとの相性も良い。あらゆるものをネット接続するのがIoTのコンセプトだが、そのコンセプトを実現するうえでFPGAはキーデバイスとなっていく公算が大きく、自動運転ドローン、医療分野など関連するマーケットは多岐にわたる。IoT市場は2020年に全世界ベースで200兆円を超える巨大市場に発展するとの試算もあり、その際に集積回路を積み直す必要性をなくすことは相当な経済効果を生むことになる。

そして、とりわけFPGAは、次世代の高速通信規格として投資家の関心が高い「5G」によって爆発的な需要が創出される可能性がある。現行の4G(LTE)よりもはるかに高速・大容量でなおかつ多数同時接続、超低遅延といった命題をクリアする5Gは、世界が競って商用化に向けた投資を進めている。ここ最近はファーウェイ問題で普及が遅れるとの見方も強まっているが、既に5G商用化に向けた時計の針が止まることはない。その際、基地局ベンダーにとって製品投入時にプログラムを固定したASICでは時間的ロスを被るため、必然的にFPGAが採用されることになる。例えば、米ザイリンクスが他の半導体関連企業よりも相対的に業績成長期待が強いのは、同社が代表的なFPGAサプライヤーであることと無縁ではない。

株式市場でも投資テーマとして脚光を浴びることは時間の問題であろう。今回は5G経済圏のひとつであるFPGAにスポットライトを当て有力銘柄を追った。

●FPGAのテーマ性に光を当てた日本ラッド

FPGA関連銘柄の一角で、前週末から今週前半にかけてマーケットの視線を釘付けにしたのが独立系システムインテグレーターの日本ラッド <4736> [JQ]だ。株価は前週末5月24日に急動意、今週に入ってからも上げ足は衰えず、株価はあれよという間に2月末につけた年初来高値866円を更新した。30日には利益確定売りで上昇一服となったものの、週末31日は全体地合い悪をものともせず投資マネーが流入、再び新値街道に突入した。

同社は国立大学法人の電気通信大学とFPGAを活用した高速処理装置の実用化に向けて技術面で連携している。FPGAとAIの融合で高付加価値を生み出すことに会社側は前向きなスタンスを明示している。また、「産業用コンピューター分野で世界トップランカーの台湾のアドバンテック社と産業向けIoT分野で資本・業務提携しており、そのなかエッジコンピューターなど次世代コンピューティングは重要なコンサルティングの一環として認識している。量子コンピューター分野などでも、ニーズがあればそれに応じて今後展開を図っていくことになる」(会社側)としている。

昨年11月に米AIベンチャーのディメンショナル社と業務提携しているが、ディメンショナル社が持つ独自のAIサービスを活用した企業向けソリューションで商機を広げる構えをみせており、こちらの展開にも期待が大きい。足もとの押し目形成場面は上昇第2ステージに向けた幕間に過ぎない可能性があり、継続的にマークが必要となろう。

●5G×FPGAでここから注目の5銘柄はこれだ

【PALTEKはFPGA関連の象徴株で材料満載】

PALTEK <7587> [東証2]は大相場に発展する素地を内在させている。5月23日に同社の100%子会社エクスプローラが、放送機器システムを手掛けるインフォシティ(東京都渋谷区)と協業して総務省の5G総合実証実験に4Kコーデックシステムで参加したことを発表、これが5G関連株としての認知度を一気に高め、株価は一時ストップ高に買われる人気となった。ただし、この時に株価を押し上げたのは短期資金の回転売買が中心であり、同日に上ヒゲ付きの大陰線を引いた。

注目すべきはその後の値運びだ。下値ではしっかり買いが入り、上げ幅こそ目立たないが着実に投資資金が流入し連日陽線をつけて上値を慕う展開をみせた。そして週末31日にいよいよ本領を発揮してきた。これは、単発で終わる相場ではなさそうだ。

同社は半導体商社で通信機器向けFPGAを取り扱っている。半導体の自社製品開発なども手掛け、5G通信分野でも独自展開ルートを持っている。AIパッケージを開発・展開するハカルス(京都市中京区)と協業体制で開発を進めてきたが、エッジ学習を可能とするFPGA向けAIソリューション「HACARUS-X Edge」を共同開発し、今年1月から提供を開始している。また、エッジAIモジュールでは3D画像処理技術のディジタルメディアプロフェッショナル <3652> [東証M]とも協業体制をとっている。

会社側では「18年第3四半期から利益率が改善傾向にある。これはデザインサービス(設計)とソリューション部門の売り上げ貢献度が高まっていることが背景にある」としているが、先行きを占ううえで明るい材料といってよい。

同社株は足もとの業績を見れば食指が動く株ではない。しかし、その技術力と展開を図っている分野に大きな可能性を内包しており、いったん有卦に入れば収益は一気に伸びるという思惑が市場にはあるようだ。業績悪化を背景に2年越しで売り込まれてきた後だけに戻り売り待ちの売り玉が潜在しない。この株式需給関係の良さが決め手となる。

【AKIBAHDは子会社バディネットで5G対応】

AKIBAホールディングス <6840> [JQ]は年初から強力な上昇トレンドを形成中だ。折に触れ急な調整を入れる場面はあっても、そこは大勢上昇波の踊り場に過ぎず、いわゆる買い場を提供、75日移動平均線をサポートラインに着々と売りをこなし下値を切り上げる強調展開を続けている。

同社は、メモリー製品の製造販売を主力に、通信コンサルティング事業やハイパーコンピューター事業などを手掛けている。「傘下のメモリー製品を扱うアドテックと高性能コンピューターを納入するHPCテック、通信工事や派遣を手掛けるバディネットの3社いずれも業績好調で収益を押し上げている」(会社側)状況にある。このうち、バディネットは早晩5G関連特需を獲得する可能性があり要注目となる。「5G基地局関連の案件はこれからというところだが、整地や設備工事で需要を取り込んでいく形になるだろう」(同)としている。また、5Gインフラ進捗に伴うアンテナ数の増加に対応して需要が伸びが想定されるFPGAなど集積回路についても、今後取り扱いを増やす可能性に言及している。

最近の業績成長スピードは特筆に値するといって過言ではなく、これが株高の原動力だ。18年3月期は前の期実績と比べ売上高が37%増、営業利益は7割増。19年3月期は営業利益がそこから更に4倍と目を見張る変化を遂げた。20年3月期はさすがに伸び率こそ鈍化するものの、営業利益は前期比17%増の5億円と2ケタ成長を継続する見通し。株価指標面でPER11倍はグロース株というフィルターにかけなくとも割安感がある。

【NSWはFPGA画像処理ソフト実装で新展開】

日本システムウエア <9739> も良好な株式需給が特長であり足が軽い。5月相場は東証1部銘柄にとって試練の月となったが、そのなか同社株は売り板が薄く我が道を行く展開で上値慕いの動きを鮮明化させた。5月大型連休明け後の日足チャートでみた陽線の多さに、同社株の強さを感じとることができる。そう遠くない時期に昨年3月につけた3275円の高値を視界に捉える場面があろう。

同社は日本ラッドと同様、独立系のシステムインテグレーターで、祖業としてLSI開発を行っていたこともあって組み込みソフトやデバイス設計で優位性を持つ。FPGAにヘイズ・リダクションという画像処理ソフトを実装しフルハイビジョンサイズの動画で鮮明化した映像を送る技術を有している点はポイント。「(国土強靱化などの国策を背景とした)ドローンを活用した橋梁やダムなどコンクリート建造物の品質検査などで、当社の画像分析ソリューションが生かされるのではないか」(会社側)と自信を示す。このほか、IoT向けではビッグデータ分析・予測サービスを展開し、サービスの機能拡充にも余念がない。

13年3月期から19年3月期まで7期連続で“増収・営業2ケタ増益”を続ける成長力の高さは見逃せないところ。20年3月期は営業4%増益と伸び率は縮小する見通しながら、会社側では「イメージセンサーで培った技術が強みであり、5G環境が整備されれば、(画像AIサービスを展開する)当社にとっても追い風が強まる」との認識を示しており、中期的な業容拡大への期待が色褪せることはない。

【アルチザは最高スペックFPGA使用、4ケタ台活躍へ】

アルチザネットワークス <6778> [東証2]は4月5日に1379円と約4年8ヵ月ぶりの高値圏に買われた後、大きく調整を入れた格好となっている。しかし、1000円近辺は目先底値ゾーンであるだけに、強気に買い対処してみたい。

高速通信向けなどを主力とする通信計測器メーカーで5G対応の基地局向け研究開発用テストシステムを昨年8~10月期に受注しているが、この納入本格化を背景に20年7月期は売上高が急拡大し、損益の改善も急となる可能性が高い。

通信計測器メーカーではアンリツ <6754> が有名だが、同社とアンリツの決定的な違いは、アンリツが端末試験・評価のための通信計測器メーカーであるのに対し、同社は基地局試験・評価のための計測器を手掛けているという点だ。そのため、現在5Gの国内インフラがやや遅れ気味である状況で、足もとの収益環境の風向きがやや悪くなっている。しかし、来年の東京五輪開催に向け5Gのネットワーク構築は今後加速していく公算が大きい。

「今のところ昨年8~10月の受注獲得後は大きな案件はないが、当然ながら今後に期待している」(会社側)状況にある。また、同社の主要客先は海外ではノキア、エリクソン、国内ではNEC <6701> 、富士通 <6702> だが、ファーウェイ排除の流れは客先の相対的シェアの高まりを意味するため、追い風材料となる。なお、同社はベースバンド処理装置などにFPGAを活用しているが、「高速通信用に対応するため常に最高スペックのFPGAを使っている」(会社側)という。ちなみに、同社は基地局向け計測機器において国内に競合企業が存在しない。端末向けで群を抜く競争力を誇るアンリツが底入れ反転に動き出した今、アルチザも地相場である4ケタ大台での活躍が濃厚とみられる。

【アルファシステムズは圧巻のSE2000人超】

アルファシステムズ <4719> は年初から静かに下値を切り上げており、4月17日の年初来高値2929円奪回を経て、3000円大台を地相場とする上昇トレンド構築に期待がかかる。3000円台に入れば07年以来の高値水準で実質的な青空圏突入を意味する。下値支持となっている13週移動平均線をどこかで上に放れてくる公算が大きい。

2000人を超えるシステムエンジニアを擁し、大規模システム開発案件でハイレベルの競争力を誇る。移動体基地局システム(モバイルネットワーク関連)で高実績を有しており、NTTグループとの取引が厚く、高い信頼性と安定感が同社のウリだ。通信系システム以外の業務系(オープンシステム)では官公庁のほか、流通、サービス、金融など幅広く手掛け、「そのなかでヤフー <4689> 向けを中心にeコマース関連の受注が伸びている」(会社側)という。業績は営業利益段階で19年3月期の8.4%増益に続き、20年3月期も4%増益見通しと派手さはないものの着実に利益を伸ばしている。

通信制御システムでは既存の電話網とインターネット網双方のメリットを融合させた次世代ネットワーク分野の売り上げが増勢で収益に貢献している。また、現在同社は通信系から業務系に軸足を移しているが、「5G関連需要が今後本格的に立ち上がってくれば、それを取り込む形で準備は進めている。感覚的には(本格化してくるのは)東京五輪開催後の2021年頃ではないかとみている」(会社側)という。裏返せば5G関連需要がまだ本格化していないという事実は同社の中期的な成長シナリオを担保するものでもある。

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