デリカフHD Research Memo(8):中期経営計画は概ね順調に進捗、積極投資の継続で売上規模の拡大を目指す方針

特集
2019年6月13日 15時18分

■デリカフーズホールディングス<3392>の今後の見通し

2. 中期経営計画の進捗状況

現在進行中の第三次中期経営計画「Next Change 2020」(2018年3月期~2020年3月期)では、「経営基盤の改革」「成長基盤の構築」「研究開発部門の強化」の3つを重点施策として掲げ、最終年度となる2020年3月期の連結業績で売上高40,000百万円、経常利益1,100百万円、親会社株主に帰属する当期純利益680百万円、ROE8.0%を目標として掲げていた。直近の会社計画は当初計画に対して、売上高で10億円上回るものの、経常利益は1億円の下振れとなっている。これは、中期経営計画には入っていなかった子宝工場(カット野菜工場)の拡張工事を急きょ実施したことによるもので、売上高は増収となるものの、減価償却費も1億円上積みされることになる。

計画の進捗状況については概ね予定通りに進んでいる。「経営基盤の改革」では2017年10月にグループ会社3社を統合したほか、物流子会社を立ち上げ東名阪エリアでの物流の内製化を進めた。また、「成長基盤の構築」でも貯蔵機能を兼ね備えたFSセンターを東西に各1拠点開設し、自然災害発生時の青果物の調達・供給リスクに対処できる物流インフラを構築したほか、真空加熱野菜の量産化や物流事業における新サービス開始、全農やエア・ウォーターとの業務提携などを進めるなど順調に進展している。

「研究開発部門の強化」では、分析サービスを強化するためデザイナーフーズからメディカル青果物研究所にその機能を移管した。研究成果としては、レモンの中腐れ状態やトマトのリコペン含有量等を非破壊検査装置で分析・選別するシステムを開発し、実際の現場での運用が開始されている。また、AIを使った青果物の収穫量予測システムについてもレタスを使った実証実験を1年前からスタートしており、データの蓄積・検証が進んでいる。コンサルティングサービスでは、外食企業向けに野菜を使ったメニューの栄養価(抗酸化力)を定量分析するサービスも開始している。

3. 2021年3月期以降の事業戦略

(1)売上拡大に注力

2021年3月期以降の事業戦略については、引き続き積極的な設備投資を実施し、年々拡大するカット野菜や真空加熱野菜の需要を確実に取り込み、売上規模の拡大に注力していく方針となっている。というのも、ここ最近はセントラルキッチン方式を導入し、カット野菜を内製化していた外食企業からの引き合いも増え始めてきたためだ。今後は自社で内製化するよりも、同社のような食の安全に関する国際標準規格(ISO22000、FSSC22000)を取得し、安定供給体制を構築している企業にカット野菜等をアウトソーシングする企業が増えてくると同社では考えており、そうした需要に対応するためFSセンターの増設を2021年3月期以降も積極的に進めていく。

2020年4月に稼働開始予定の九州FSセンターは、カット野菜や真空加熱野菜の製造も行い、省人化に対応した自動化ラインを導入する。同センターで福岡県の2大都市(福岡市、北九州市)をカバーし、また、九州地区の産地との連携拡大も進めていく予定だ。年間売上規模は約45億円となり、現在の九州エリアの売上規模(20億円弱)から2倍以上の規模に拡大することになる。

また、時期は未定だが次期中期経営計画では関東、関西エリアでFSセンターを各1拠点増設する模様。業務用青果物における同社のシェアはまだ2%弱であり、シェア拡大による売上成長余力は大きいと言える。ちなみに、同社の売上高は2011年3月期に200億円台に乗せ、その後は外食市場の拡大やカット野菜の需要拡大に合わせて各拠点にFSセンターを開設し、2020年3月期には400億円超えを達成する規模にまで成長する見込みとなっている。年率8%の売上成長率となるが、今後10年間でさらに2倍となる800億円をターゲットに引き続き積極展開していく方針だ。

(2)エア・ウォーターとの業務提携について

同社は2019年5月にエア・ウォーターと「業務提携に関する覚書」を締結したことを発表した。両社の経営資源を有効活用することにより、農産物の生産・加工・販売等における事業強化・拡大、並びに共同研究に向けた取り組みを同年6月以降進めていくことになる。

エア・ウォーターは農業・食品事業を重点事業領域の1つと位置付けており、北海道を中心に農産事業を展開し、青果物の卸売や冷凍野菜で高いシェアを有している。顧客は全国の卸問屋やBtoCの流通企業が主となるため、外食企業を主要顧客とする同社と直接競合しない。今回の提携により下記4点の協業を進めていく予定。

(1) 国内外における両社の契約農家及び調達ルートを活用した原料調達の協業(調達力の強化)

(2) 両社の物流ネットワーク及び拠点・施設を活用したインフラ事業の協業(物流コストの効率化)

(3) カット野菜、加熱野菜、冷凍野菜の相互販売による外食・中食産業への販売拡大(販売機会の増大)

(4) 青果物の価値創造並びに加工・鮮度保持技術等に係る共同研究及び共同開発

同社にとっては、従来取扱商品になかった冷凍野菜が加わることで、既存顧客へのサービス向上並びに新規顧客の開拓機会が増えることになり、売上拡大に寄与するものと予想される。また、エア・ウォーターを通じて流通企業の総菜売り場向けに同社のカット野菜の販売が伸びる可能性もある。短期的な業績への影響は軽微と見られるが、中長期的には貢献してくるものと期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《ST》

提供:フィスコ

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