東京五輪に向け「渋滞対策」秒読み開始、関連株に上昇機運 <株探トップ特集>

特集
2019年7月31日 19時30分

―開幕まで残り1年を切った東京五輪、観客輸送が喫緊の課題に―

2020年東京五輪の開幕まで1年を切った。メイン会場となる新国立競技場の完成率が9割程度に達するなど各施設の建設は順調に進み、公式チケットの販売もスタート。7月24日には1年前セレモニーが行われ、本大会に向けた機運は一段と高まっている。一方、依然として課題とされているのが道路の渋滞問題だ。全世界から東京に観客がつめかければ、ただでさえ慢性的に渋滞する都内がパニック状態に陥る可能性があり、有効な対策が打ち出せるかどうかが大会成功のカギを握っている。

●対策なしでは渋滞が3倍に

東京都オリンピック・パラリンピック準備局が公表している大会輸送影響度マップによると、何も対策が行われなかった場合、一般道路では各会場周辺や大会関係車両が通過する道路を中心に混雑が発生する見通しであるほか、首都高速道路は時間帯によって各路線で所要時間が通常の3倍以上に達すると予想。リオデジャネイロやロンドンなど過去の大会では競技会場を集める「オリンピックパーク」が作られていたため交通への影響はある程度抑えられたが、東京大会は会場が都心や臨海部など各地に分散しているため渋滞が発生する箇所は広範囲に及ぶとみられている。

こうしたなか、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会と東京都は、自動車の効率的な利用や公共交通機関への利用転換など、交通行動の変更を促して発生交通量の抑制や集中の平準化などの交通需要の調整を行うことにより、道路交通の混雑を緩和する「交通需要マネジメント」の取り組みを推進。その一環として7月24日と26日には首都高で大規模な交通規制が試行され、渋滞距離と時間をかけた「混雑量」は最大で前年同時期と比べ96%減と一定の効果が示された。首都高の料金を時間帯により変動させる「ロードプライシング」の導入なども検討されるなか、渋滞緩和の一翼を担うのが「高度道路交通システム(ITS)」だ。政府は「世界一のITSを構築・維持し、日本・世界に貢献する」ことを掲げており、関連銘柄に注目したい。

●渋滞緩和の一翼を担うITS

ITSとは、人と道路と車両の間で情報の受発信を行い、道路交通が抱える事故や渋滞、環境対策など、さまざまな課題を最先端の情報通信技術(ICT)を活用することにより解決するためのシステムの総称。インフラや他車から各種情報を無線通信で取得するこのシステムは、自動運転にとって欠かせない要素のひとつでもある。

関連企業としては、民間企業や大学などが参加するITS事業委員会に名を連ねる日立製作所 <6501> 、三菱電機 <6503> 、NEC <6701> 、富士通 <6702> 、沖電気工業 <6703> 、セイコーエプソン <6724> 、パナソニック <6752> 、アルプスアルパイン <6770> 、古野電気 <6814> 、デンソー <6902> 、京セラ <6971> 、村田製作所 <6981> など。

車とWebの連携を支援するシステナ <2317> 、ITS路車間通信センターシステムを開発した実績のあるセック <3741> 、クラウド型の交通情報サービスを提供している日本エンタープライズ <4829> 、安全走行支援システムを扱う星和電機 <6748> 、自動車の走行データをクラウド上で運用できるシステムを展開している堀場製作所 <6856> 、車両動態管理システムを運営しているパスコ <9232> 、GIS(地理情報システム)のデータ作成を手掛けるKIMOTO <7908> 、地図データに強みを持つゼンリン <9474> にもビジネス機会の拡大が期待される。

●バスロケーション関連にも注目

ITSのひとつに含まれるバスロケーションシステムの関連株も要マークだ。このシステムは、GPSなどを用いてバスの位置情報を収集し、バス停の表示板や携帯電話、パソコンに提供するもので、観客などがバスを利用しやすくなる。

FIG <4392> グループのモバイルクリエイトは今年3月から大分県でバスロケーションシステムの運用を開始しているほか、昨年9月には小田原機器 <7314> [JQ]などと共同で大阪シティバスが行うBRT(バス高速輸送システム)の社会実験におけるバスロケーションシステム構築業務を受託。また、案内表示器などを手掛けるレシップホールディングス <7213> も関連銘柄として挙げられる。

●関心高いMaaS関連

このほか、渋滞対策として次世代の移動サービスである「MaaS」関連株への関心が更に高まる可能性もありそうだ。MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)とは、ITを活用して交通をクラウド化し、出発地から目的地までの移動ニーズに対して最適な移動手段をシームレスに提供するなど、移動を単なる手段としてではなく、利用者にとっての一元的なサービスとして捉える概念。将来の移動に革命をもたらすとされ、トヨタ自動車 <7203> をはじめとした自動車メーカーや電車やバスといった交通事業者、IT企業が実現を目指した取り組みを積極的に進めている。

直近では、日本ユニシス <8056> が7月4日に、滋賀県大津市及び京阪バス(京都市)とMaaSの実用化を推進することで合意したと発表し、ジョルダン <3710> [JQ]は6月28日に、福岡県北九州市交通局とMaaSの実現に向けて包括連携協定を締結したと公表。ANAホールディングス <9202> は6月27日、京浜急行電鉄 <9006> や神奈川県横須賀市、横浜国立大学と、総合的な移動サービス「Universal MaaS」の産学官共同プロジェクトを開始することを明らかにした。

これ以外にも、次世代タクシー配車アプリなどを展開するディー・エヌ・エー <2432> 、乗り換え案内サービスを運営する駅探 <3646> [東証M]、パイオニア(東京都文京区)と新たなカーテレマティクスソリューションサービスで協業を開始したエコモット <3987> [東証M]、キャンピングカーのレンタルやメディアサービスを手掛けるキャンピングカー(東京都千代田区)と資本・業務提携したイード <6038> [東証M]に注目だ。

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