明日の株式相場戦略=変化ではなく“変化の後の好機”を狙う

市況
2019年8月8日 18時12分

きょう(8日)の東京株式市場では日経平均が5日ぶりに反発。ようやく片目が開いた感じだが、上げ幅は76円高と上値の重さが目立った。その時の地合いによってマーケットの視線が向かう先は変わるが、今は中国人民銀行が設定する人民元の基準値に関心が集まっている。

実際のところ、人民元売買の基準値が金融市場にどの程度の影響を及ぼすのかは未知数ながら、東京市場では海外ヘッジファンド筋によるアルゴリズム売買が、これにリンクされており、株価指数先物を通じて全体相場の方向性を左右していることは確かだ。きょうは前日比でやや元安に設定されたものの想定の範囲内だったことで、米中関係が一段と悪化するような火種とはならないとの思惑が、アルゴを“買い”に傾けた。実際、10時15分過ぎから日経平均は急速にプラス方向に跳ね上がる動きとなっている。

財務省発表の対外及び対内証券売買契約によると、月間で7月も外国人投資家は売り越し。これで3カ月連続の売り越しとなったが、売り越し額は337億円にとどまった。ちなみに6月は5000億円近くを売り越していたので、それを考慮すれば日本株の保有を軽くする動きは一巡したともいえる。7月は売買代金2兆円台割れが続き、超閑散相場の様相を呈したが、外国人が売り買いともに手控えた構図が浮き彫りになっている。

8月はサマーバケーション入りで一段と市場エネルギー不足が際立つかと思いきや、そうはならず、実質8月相場入りを契機に売買代金は増勢基調となった。皮肉にも海外ヘッジファンド筋の売りがかさみ下値リスクが強く意識される地合いとなったが、全体相場の株価のボラティリティが高まれば自然と商いも増えることを裏付けた。これは上昇する時も同じ理屈であり「売買代金が低調だから株は上がらない」という論理はあまり的を射ているとはいえないようだ。

きょうの日経平均の動きは朝方こそ気迷い気味に前日終値を挟んで彷徨したが、背景はどうあれその後は徐々に上値指向を強める動きをみせた。まだ、嵐が過ぎ去った後の晴天にはほど遠いとはいえ、個別株は曇天のうちが仕込み場。そろそろリバウンドに合わせて資金を投下するチャンスと思われる。

物色テーマでは少し前に取り上げたeスポーツ関連、ざっくり言えばゲーム関連株の人気が根強いようだ。7月下旬に行われたバトルゲーム「フォートナイト」の世界大会で米国の16歳少年がソロ部門で優勝を果たし、過去最高となる賞金300万ドルを獲得。これが関連銘柄を動意づかせる契機となった。日本では今秋の茨城国体において都道府県対抗でeスポーツの全国大会が実施される予定にあることで、株式市場目線ではタイミング的に今がちょうどよい頃合いともいえる。

eスポーツへの積極注力を明示しているカプコン<9697>が本命格。目先は上昇一服ながら、好決算発表だけでは今月2日のマド開け急騰後の連続陽線は示現しなかったと思われる。値動きの大きいところではenish<3667>の存在が際立つ。enishのようにファンダメンタルズで買いにくい銘柄は空売りを呼び込みやすく、“理外の理”で需給相場の様相を強めることが多い。このほか、デジタル映像制作を手掛けるレイ<4317>などもeスポーツ関連の切り口で注目される可能性がありそうだ。

直近に挙げた、富士ソフトサービスビューロ<6188>、JBCCホールディングス<9889>、環境管理センター<4657>などいずれも食指の動くポジションにある。業態は違うが、共通項となっているのはマドを開けて買われた後に調整し、利食いが一巡したタイミングであること。マドを開けた理由は決算であり、ファンダメンタルズを評価して買われた後、目先筋の投げによるマドを埋めは押し目買い対象として妙味がある。同様のパターンではサイバーステップ<3810>などにも上値思惑がある。変化のタイミングをピンポイントで捉えるのは容易ではないが、“変化の後に好機が眠る”ことは多い。決算発表前にキャッシュポジションを高めておく必要性については、単なる防御的な要素にとどまらず、こうした戦略的な意味合いもある。

日程面では、あすは4~6月期のGDP速報値、7月のマネーストックが寄り前に開示される。また、海外では7月の中国CPI(消費者物価指数)及びPPI(生産者物価指数)が発表される。(中村潤一)

出所:みんなの株式(minkabu PRESS)

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