不安定な相場に勝つ、「好業績・高進捗率・高ROE」3拍子揃った変身期待株7選 <株探トップ特集>

特集
2019年8月20日 19時30分

―不透明な相場環境でも良いものは買われる、収益力・財務にも光を当てて選りすぐった有望株はこれだ―

3月期決算企業の20年3月期第1四半期(4-6月)決算発表がほぼ一巡した。4~6月期決算では、米中貿易摩擦を発端とする世界景気の減速が輸出関連企業を中心に重くのしかかり、全体の5割を超える企業が減益決算を発表する結果となった。一方、こうした逆風下で好決算を打ち出した企業には買いが集まる傾向が強く、なかでも期初予想に対する達成度を表す進捗率の高い銘柄には業績への安心感から人気化する銘柄が目立った。今回は海外情勢や消費税率引き上げなど先行きに対する不透明感が強まるなか、足もとの決算が好調で進捗率が高く、業績下振れリスクが少ない銘柄に注目。その上、収益力や財務の良好さも兼ねそろえた優良株にスポットライトを当てた。

●米中対立が製造業を直撃、内需は健闘目立つ

20日までに4~6月期(第1四半期)決算を発表した3月期決算企業2297社を集計したところ、経常利益は前年同期と比べ4.7%減少し、3四半期連続で前年実績を下回った。経常利益の減益率は5%未満にとどまったが、これは中国・アリババ集団の株式売却益を計上したソフトバンクグループ <9984> によるところが大きい。ソフトバンクGの1社だけで1兆1100億円もの利益を稼いでおり、同社を除くと減益率は一気に12.5%に膨らむ。

業種別にみると、中国をはじめとする世界景気減速の影響を受けた電気機器や機械、輸送用機器のマイナス幅が大きく、製造業が全体の利益を押し下げる格好となった。一方、燃料費の低下で採算が改善した電力・ガスや受注環境が良好な建設は前年同期比で2ケタ増益を達成したほか、大型連休が追い風となった小売業、企業の旺盛なIT投資ニーズを取り込んだシステム関連など、内需系では増益を確保する企業が多かった。

●不安定な相場展開が続くなか、ここから押し目を拾いたい銘柄は?

日経平均株価は8月に入ってから、米中貿易摩擦の激化や景気後退懸念の台頭を受けて急落する場面があったものの、フシ目となる2万円を前に底堅い動きをみせている。ただ、今後も外部環境に左右されやすい展開が続くとみられ、先行きに対する警戒感は拭えない。今回は不安定な相場環境における押し目買い候補として、4~6月期に2ケタ増益を達成し、通期計画に対する進捗率が高い、業績絶好調な高進捗銘柄に照準を合わせた。更に、企業の収益力を図る指標であるROE(自己資本利益率)が優良企業の基準とされる10%を超え、かつ財務面でも健全性の高い企業をリストアップした。

以下では、時価総額100億円以上1000億円未満の中小型株を対象に、(1)4~6月期の経常利益が前年同期比で2ケタ増益を達成、(2)4~6月期経常利益の通期計画に対する進捗率が30%以上、(3)今期予想ROEが10%以上、(4)自己資本比率30%以上、などの条件を満たした銘柄を対通期計画進捗率の高い順に紹介していく。

●ウェルスはブリッジファンドへのホテル売却進む

選出した銘柄のうち進捗率が最も高いのは、不動産投資とホテル運営を主体とするウェルス・マネジメント <3772> [東証2]。9日に発表した20年3月期第1四半期(4-6月)の経常利益は前年同期の3000万円から27億1200万円に急拡大し、四半期ベースとしては過去最高を記録した。リート設立を目的に組成したブリッジファンドに対し、大阪難波に保有するホテルの不動産信託受益権の一部を売却したことが収益を大きく押し上げた。第1四半期実績だけで、通期計画の30億円に対する進捗率は90.4%に達しており、業績上振れは濃厚とみられる。

●サンフロ不は販売好調と利益率向上で進捗率70%を達成

サンフロンティア不動産 <8934> の4~6月期(第1四半期)業績は売上高が前年同期比79.3%増の326億5200万円、経常利益は同2.1倍の97億5800万円となり、いずれも四半期ベースでの過去最高を更新した。不動産投資市場が回復基調にあるなか、主力の不動産再生事業でオフィスビルの販売棟数が大幅に増加したことに加え、好採算な物件を売却したことも利益拡大につながった。第1四半期経常利益の対通期計画進捗率は69.7%に達する。中期経営計画では23年3月期に売上高1000億円(19年3月期実績は532億円)、経常利益200億円(同128億円)の目標を掲げており、今後の成長加速が期待できそうだ。

●IRジャパンは利益成長、株価とも青空圏を快走

高進捗率で3位にランクインしたアイ・アールジャパンホールディングス <6035> は、IR(投資家向け広報)とSR(株主対応)に特化したコンサルティング会社。4~6月期(第1四半期)は活動を活発化させているアクティビスト(物言う株主)の需要を取り込み、経常利益は12億4100万円と四半期ベースの過去最高益を2.1倍も上回って着地。株主名簿に表記されない機関投資家を特定する実質株主判明調査や議決権関連業務、投資銀行業務などの受注が増勢だった。業績好調に伴い、最高益更新を計画する20年3月期の経常利益見通しを大幅上方修正したが、第1四半期実績の修正した通期計画に対する進捗率は5割を超えており、更なる上振れが視野に入る。

●東洋BENGは前期に増額修正3ステップの実績

ERP(統合基幹システム)の開発を主力とする東洋ビジネスエンジニアリング <4828> は1日に決算を発表。独ソフト開発大手SAPをはじめとする他社開発パッケージをベースとしたシステム構築や自社開発ERPのライセンス販売を伸ばし、4~6月期(第1四半期)の経常利益は前年同期比93.9%増の4億7300万円に膨らんだ。下期に予定していた案件の一部前倒しを踏まえ、上期(4-9月)の経常利益予想を上方修正している。業務効率化ニーズの高まりなど受注環境が良好なうえ、前期は3度にわたって通期計画を増額した実績があり、通期業績の上方修正にも期待が膨らむ。

●シュッピンは4四半期ぶりの増益で復活の狼煙

シュッピン <3179> はカメラを主軸に時計、筆記具、自転車の新品・中古品を販売する4つの専門店サイトと実店舗を運営する。足もとは主力であるカメラ事業の採算悪化が響き、19年1-3月期まで3四半期連続の減益となっていたが、4~6月期は同事業の業績回復により増益に転じ、一気に四半期ベースの最高益更新を果たしている。買い取り価格の見直しや計画的な値引き施策の実施が奏功し、カメラ事業の採算が急改善したほか、時計事業も希少価値の高い高額品や人気ブランドなどの品揃え拡充を背景に収益を大きく伸ばした。利益成長路線への復帰が好感され、決算発表前に700円台前半だった株価は1000円を超える水準に上昇したが、天井は高く上昇余地はまだ大きいとみられる。

●JBCCHDは急騰後に押し戻されるも指標面で割安感

ITインフラ構築大手のJBCCホールディングス <9889> が7月30日に発表した4~6月期(第1四半期)の経常利益は前年同期比33.3%増の9億8400万円に拡大して着地。情報ソリューション分野で超高速開発の大型案件や業務改善アプリケーション開発案件の受注が伸びたほか、セキュリティーサービスやWindows10更新関連のシステム販売も好調だった。第1四半期業績の好調を踏まえ、期初段階で減益予想だった通期見通しを一転して増益に大幅上方修正している。株価は好決算への評価を受けて急騰したが、その後は戻り売りに押される展開が続く。ただ、指標面では予想PER13倍台と割安感が強く、株価の水準訂正を意識した買いが期待される。

●セゾン情報は株主還元にも積極姿勢

最後に紹介するのはセゾン系システム会社のセゾン情報システムズ <9640> [JQ]。7月30日に発表した4~6月期(第1四半期)業績はデータ連携プラットフォームを中心としたパッケージソフトのライセンス販売が大幅に増加したうえ、クラウド型のサブスクリプション(定額)サービスやサポートサービスも伸び、経常利益は前年同期比48.1%増の7億5400万円だった。同社は株主への利益還元に積極姿勢をみせており、20年3月期の配当は前期比40円増の85円を計画する。配当利回りは4%を超える高水準で株主還元の切り口からも一目置きたい存在だ。

◇「業績絶好調・高進捗・高ROE」7銘柄

対通期  ┌ 経常利益 ┐  4-6月期 今期

コード  銘柄名   進捗率 4-6月期 通期計画  増益率  ROE

<3772> ウェルス    90.4   2712   3000   8940 26.4

<8934> サンフロ不   69.7   9758   14000   106 15.7

<6035> IRジャパン  57.7   1241   2150   115 32.6

<4828> 東洋BENG  35.6   473   1330   93.9 18.3

<3179> シュッピン   33.6   526   1564   53.4 21.1

<9889> JBCCHD  33.4   984   2950   33.3 11.7

<9640> セゾン情報   30.2   754   2500   48.1 15.9

※「対通期進捗率」は4-6月期経常利益の通期計画に対する達成度。進捗率・増益率・ROEの単位は%。経常利益は百万円。

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