上値余地狭まる日本株、10月増税後に影を落とす懸念要因 <東条麻衣子の株式注意情報>
前週末、中国の代表団が米国農場を視察予定だったにも関わらず予定を早めて帰国すると伝えられたこと、トランプ米大統領が「来年の大統領選を前に合意の必要はない」と発言したことを受け、米中貿易摩擦懸念が再発し、米国株式市場では NYダウが159ドル安と続落した。ただ、週明け23日は14ドル高と3日ぶりに反発している。
9月に入って 日経平均株価は安値2万0554円(9月4日)から高値2万2255円(9月19日)まで率にして8.2%、幅で1701円上昇している。一方、NYダウは安値2万5798ドル(9月3日)から高値2万7306ドル(9月12日)まで率で5.1%、幅で1328ドル上昇。上昇率で米国株を上回っており、日本独自の要因を伴っての上昇である可能性もある。
その要因と考えられるのが、以下の2つである。
(1)ドル高・円安
先週米国で利下げがあったにも関わらず、為替相場はドル高・円安で推移。その背景には「サウジアラムコの石油施設への攻撃」も影響していると考えられる。こうした地政学リスクが高まる局面では通常「円買い」となりそうなものだが、原油はドル決済であるため、原油価格の上昇に伴いその分、実需のドル買いが出てくることになる。
サウジアラムコへの攻撃を背景に、米国とイランの間に火種が燻る間は、実需のドル買いが出やすい状況が続く可能性がある。だとすると、当面、ドル円は地政学的リスクとの綱引きで方向感を欠いた動きとなるかもしれない。ただ、一方向的な円高を回避できるのであれば、日経平均株価にとっては下支えの要因となることもあり得よう。
(2)増税前の駆け込みを見越した海外投資家の買い
8月4週目からの現物先物合計の売買を見ると、海外投資家は4週連続で日本株を買い越している。
売られ過ぎた日本株が買い戻されているとの指摘もなされており、それも要因の一つではあろうが、筆者は消費増税前の駆け込み需要を見越した海外投資家の買いが根底にあるとみている。
それを裏づけるように、「全国百貨店売上高が8月は2.3%増」「たばこやチケットの販売増加で8月のコンビニ売上高が0.8%増」など、増税前の駆け込み需要が表れたと考えられる指標が出てきている。
これらを踏まえると増税が実施される10月1日までは、米中貿易摩擦の懸念などで上値が重い場面はあっても、日経平均株価は思いのほか底堅い動きとなる可能性がある。
では、目先の上値の余地だが、筆者はそろそろ良い水準に達していると見ている。
前回の消費増税時(2014年4月1日から消費税は5%から8%に増税)のデータをみてみよう。
■2014年 日経平均株価
3月17日 1万4203円(安値)
4月3日 1万5164円(高値)
→安値から高値までの値幅は961円と安値から約6.7%上昇。
3月のドル円の高安
101.54円から103.75円と高安の値幅は2.21円、2.1%の円安
4月3日 1万5164円(高値)
4月11日 1万3885円(安値)
→高値から安値まの値幅1279円と高値から約8.4%下落
■2019年 日経平均株価
9月4日 2万0554円(安値)
9月19日 2万2255円(高値)
→高値から安値までの値幅は1701.4円と約8.2%上昇
9月のドル円の高安(※9月21日時点)
105.72円から108.47円と高安の値幅は2.75円、2.6%の円安
2014年のデータと比較すると、円安の幅が今回の方が大きい分、日経平均株価の上昇率が大きいとしても、そろそろ限界とは言えないだろうか。
中期の目線で考えると、これまで伝えられているところでは日米中のファンダメンタルズは良好とはいえない。また、米中の緊張改善に期待する声もあるが、中国が米国農産物の購入を決めたのは、米国との協議を考えた結果というよりは、国内の豚コレラ蔓延による豚肉不足の深刻化があり、その結果、他の農産物も買わざるを得ないという国内事情を優先したものだと推測される。そうであるならば、中国の米国農産物購入をもってして、ここから米中関係が大幅に進展するとみるのは早計だろう。
筆者は、昨年8月に決定した国防権限法2019で提示された2020年8月発効予定の第2次制限による適用範囲の拡大(関連会社を含むファーウェイやZTEなど中国5社の製品を利用する企業との取引を打ち切る)が、日本に及ぼす影響を懸念している。
最後に目先の日本株式市場を展望すると、10月の増税実施後の日経平均株価は、日本や米中のファンダメンタルズ、米中対立の影響を織り込む形になるのではないだろうか。(9月23日 記)
◆東条麻衣子
株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。
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