決算発表シーズン到来、「増額修正シグナル点灯中」の上昇機運7銘柄 <株探トップ特集>

特集
2019年10月21日 19時30分

―通期上方修正の可能性が高まっている企業で騰勢加速が期待される7銘柄をリストアップ―

小売業を中心に内需関連が多くを占める2月期決算企業の上期決算発表が一巡し、今週からはいよいよ3月期決算企業の上期(4-9月)決算発表が本格化する。祝日明けの23日に発表を予定する日本電産 <6594> を皮切りとして月内におよそ680社、11月に入ってからは1500社を超える企業が控えている。今回は上期決算発表シーズン入りを前に、7日に配信した「上方修正カウントダウン、株高期待膨らむ『有力候補7銘柄』はこれだ!」に続き、通期計画を上方修正する可能性が高いとみられる銘柄を探った。

●2月期上期決算は増益多数も先行き懸念で下方修正目立つ

一足先に発表を終えた2月期決算企業209社の上期(3-8月)決算を集計したところ、経常利益が前年同期比で増益(黒字転換と赤字縮小を含む)だった企業は113社となり、全体の半数を超える企業が前年比プラスを達成した。小売りセクターではファミリーマート <8028> 、アダストリア <2685> 、ウエルシアホールディングス <3141> 、吉野家ホールディングス <9861> の増益幅が大きかったほか、自社配給のアニメ映画「天気の子」が大ヒットした東宝 <9602>再生不動産物件の販売が伸びたいちご <2337> など内需系で好決算が目立った。また、苦戦を強いられた製造業では、半導体関連装置のローツェ <6323> が2ケタ増収増益を打ち出し、株価は連日最高値更新と快進撃を続けている。

一方、減益決算に目を向けると、安川電機 <6506> のマイナス幅が最も大きかった。米中貿易摩擦の長期化や半導体関連 の投資先送りを受けて、中国を中心に産業用ロボットやサーボモーターの販売が低迷したことが響いた。3~8月期の決算発表期間では、安川電機をはじめ、足もとの業績悪化を背景に通期計画を下方修正する企業が相次いだ。こうしたなか、通期計画を上方修正した企業は15社にとどまった。希少な上方修正銘柄には買いが集まりやすく、株価が急騰するケースも多くみられた。

●上期増額修正しながらも通期計画を据え置いた銘柄に注目

前回の「上方修正カウントダウン、株高期待膨らむ『有力候補7銘柄』はこれだ!」では、業績予想を上方修正する傾向が強い企業に着目し、前期も上方修正した実績のある企業に主眼を置いて銘柄を選別した。今回は視点を変えて、上期予想を上方修正したにもかかわらず、通期計画を据え置いた企業に注目。以下では、こうした企業の中から、上方修正余地が大きいとみられる7銘柄をリストアップした。

●太平電は修正した上期予想の対通期進捗率が70%超

火力発電所や原子力発電所の補修工事に強みを持つプラント工事大手の太平電業 <1968> は、20年3月期の第1四半期(4-6月)決算と同時に上期業績予想の上方修正を発表し、経常利益を従来の19億円から37億円へ2倍近く引き上げた。火力発電設備などの補修工事が想定より増加することに加え、施工効率の向上やコスト削減も利益を押し上げる。修正した上期予想の通期計画(52億円)に対する進捗率は70%を超えており、業績上振れは濃厚とみられる。今期は期初計画で配当を前期比20円減の60円にする方針としているが、業績上方修正に踏み切れば、配当増額の可能性も高まりそうだ。

●オルガノは13年ぶりの最高益“大復活”を視野

続いて紹介するのは電力や半導体関連向け水処理装置メーカーのオルガノ <6368> 。第1四半期は国内、中国、台湾で電子産業分野を中心とする手持ちの大型工事が順調に進んだうえ、メンテナンスなど利益率の高いソリューションサービスも好調だった。また、コスト削減の進展でプラント部門の採算も改善し、売上高が前年同期比19%増の201億4900万円、経常利益は同55倍の13億6700万円といずれも高変化を遂げた。これを踏まえ、上期の経常利益を従来予想の2.8倍となる43億円に大幅上方修正した。通期計画は65億円を見込むが、上期予想の増額幅(27億5000万円)を考慮すると、07年3月期に記録した最高益74億2800万円を13年ぶりに塗りかえる公算が高い。

●さくらネットは1Q実績だけで対通期進捗率57%に到達

データセンター大手、さくらインターネット <3778> の第1四半期決算は国立研究機関向け高火力コンピューティングなど専用サーバーサービスが急増したほか、VPS(仮想専用サーバー)やクラウドサービスの利用者増加が継続し、売上高が前年同期比16.4%増の51億2200万円、経常利益は同4.3倍の2億7300万円に膨らんだ。経費や人件費が想定を下回ることを踏まえ、期初段階で減益予想だった上期の経常利益を一転して増益予想に大幅上方修正している。通期計画は据え置いたものの、第1四半期実績だけで通期計画に対する進捗率が57%に到達しており、業績上振れが期待される状況にある。

●関電化の期初予想はネガティブ

関東電化工業 <4047> は純度の高いフッ素ガスを効率的に生産する技術に優位性を持つ化学薬品メーカー。半導体・液晶用特殊ガスの製造を主力とする。20年3月期は主戦場である半導体と液晶パネルの市況悪化を背景に、経常利益段階で前期比41%の大幅減益を見込む。ただ、同社は6年連続で期中に通期計画を上方修正した実績を持っており、今期も上方修正への期待は大きい。足もとの業績は半導体・液晶用特殊ガスの販売が落ち込む一方、電気自動車(EV)など車載向けの需要が本格化しているリチウムイオン電池材料が好調だ。また、原材料単価や固定費が想定を下回る水準で推移しており、第1四半期決算発表とあわせて上期予想の大幅上方修正に踏み切っている。同社は底入れ期待が台頭する半導体関連 の周辺株としても注目度が高く、株価は下値を切り上げる展開が続く。

●宮地エンジは期中に上方修正する確率9割

宮地エンジニアリンググループ <3431> も関東電化工業と同様に期初予想を保守的に見積もる傾向が強く、過去10年間のうち、期中に上方修正しなかったのは16年3月期の1回のみだ。20年3月期は前期に利益を稼ぎ出した好採算の大型工事がなくなり、経常利益ベースで前期比2割減少する見通しであるが、上方修正する確率9割の実績を踏まえると、今期も通期計画を増額する可能性があるとみて良さそうだ。指標面では予想PER5.5倍、PBR0.5倍、配当利回り3.4%と割安感が強く、株価の水準訂正余地は大きい。また、政府が国土強靭化政策を進めるなか、橋梁大手の同社はインフラ整備でチャンスを捉える公算が高く、今後の活躍が期待されている。

●インフォコムは「めちゃコミック」高成長

インフォコム <4348>電子書籍市場の拡大を背景に、子会社アムタスが運営する国内最大級の電子コミックストア「めちゃコミック」の高成長が続いている。第1四半期決算では広告強化などが奏功し、電子コミック配信サービスの売上高は前年同期を3割も上回った。また、電子書籍と並んで注力分野に掲げるヘルスケア事業では、病院向け就業管理システムの販売が増勢だ。業績好調に伴い、上期経常利益予想を14%上方修正したが、通期計画は据え置いた。海賊版サイトの閉鎖も追い風に勢いに乗っている電子コミック部門の更なる成長加速に期待したい。

●タカギセイコーは10月下旬に注目

工業用プラスチック成形品やプラスチック成形用金型の製造を手掛けるタカギセイコー <4242> [JQ]は第1四半期決算発表と同時に、上期の経常利益予想を従来の4億8000万円から7億円(前年同期比9%増)へ大幅上方修正した。国内で主力の自動車用部品、海外ではOA(その他)分野の受注が想定より伸びる。また、原価低減が進むことも利益上振れの要因となる。同社は前期まで4年連続で10月下旬に通期業績を上方修正した経緯があり、今年も上方修正する可能性は高そうだ。

◇20年3月期経常利益予想の上方修正有力候補

コード 銘柄名    通期計画 上期予想 進捗率

<1968> 太平電      5200   3700  71.2

<6368> オルガノ     6500   4300  66.2

<3778> さくらネット    480    310  64.6

<4047> 関電化      5700   3300  57.9

<3431> 宮地エンジ    3600   1700  47.2

<4348> インフォコム   7800   3300  42.3

<4242> タカギセイコ   2110    700  33.2

※「進捗率」は上方修正した上期の経常利益予想に対する通期計画の進捗率(%)。経常利益の単位は百万円。

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