老朽化対策が喫緊の課題に、スポットライト浴びる「下水道関連株」 <株探トップ特集>

特集
2019年11月13日 19時30分

― 頻発化するゲリラ豪雨や大規模地震などへの対応で補強対策ニーズ高まる ―

各地で記録的な豪雨をもたらした台風19号の上陸から12日で1ヵ月が経ったが、今もなお深い爪痕が残る地域は少なくない。多くの河川で堤防が決壊したことが甚大な被害につながり、なかには水道管が破裂するなど老朽化が被害を大きくさせたと思われるケースもあった。昨年12月に成立した水道法の改正が今年10月1日に施行され、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が11月6日に開いた分科会で下水道事業の広域化を提言したこともあって、株式市場では関連銘柄に関心が向かいつつある。

●寿命迎える下水道管

国土交通省と環境省、農林水産省が合同で実施した調査によると、2018年度末時点の全国汚水処理人口普及率は91.4%となっているが、そのうち下水道によるものは79.3%にとどまっている。いまだに約1100万人が汚水処理施設を利用できない状況で、普及促進が求められている。その一方で、高度成長期において急速に整備された下水道施設は耐用年数を超えるものが出始めており、国交省の試算によれば全国の下水道管きょ(水路の総称)に占める建設後50年以上を経過した割合は18年3月の約4%から、23年3月には約8%、33年3月には約21%に達すると予測。頻発化するゲリラ豪雨や大規模地震など災害への対応といった側面からも、下水道施設の補強対策ニーズが一段と高まっている。

●水道法の改正が施行

こうしたなか、10月には水道法の改正が施行された。これは、人口変動に伴う水需要の減少や水道施設の老朽化、深刻化する人材不足など、 水道事業が直面する課題に対応するための基盤強化を図るもの。具体的には、複数の市町村で事業を広域化して経営を効率化するほか、自治体が経営する原則を守りつつ、民間企業に運営権を売却する仕組みを導入することなどが盛り込まれている。現状では多くの自治体が一部業務に限って民間企業に委託しているが、法改正により事業運営そのものを民間企業が手掛けることができるようになる。

●財制審は広域化を提言

また、財政制度等審議会の分科会では、下水道の汚水処理費用を使用料で賄っている割合は全国平均で7割程度にとどまり、3割近くが自治体の一般会計からの繰り入れなどで穴埋めされていると指摘。事業運営の広域化によるコスト削減を提言した。

●水道コンサル会社に関心高まる

下水道事業の運営を将来にわたって安定的に継続するためには、長期的視野に立った計画的な管理を行うことが必要不可欠で、マネジメントを手掛ける企業の活躍場面が増えそうだ。

NJS <2325> は下水道施設の調査、計画、設計、災害対策、ストックマネジメントのコンサルティングサービスに加え、官民連携事業の創出や支援サービスを提供。オリジナル設計 <4642> [東証2]は下水道ビジョンの策定業務や下水道資産の調査・整理・評価業務、包括的民間委託の導入検討業務、下水施設腐食対策の検討業務などを手掛けている。

水道機工 <6403> [JQ]は国内で約250ヵ所の下水処理施設でソリューションを提供した実績があるほか、上下水処理設備工事大手のメタウォーター <9551> は下水処理場を運転するための受変電設備や監視制御設備、電気設備、これらの設計・製造・施工・維持管理などに強みを持つ。

●下水道管など関連銘柄にも注目

今後は下水道管の更新需要が更に増えることが見込まれるなか、空洞を有する矩形形状の鉄筋コンクリート構造物及びプレストレスコンクリート構造物「ボックスカルバート」を手掛けるジオスター <5282> [東証2]、下水道管向けヒューム管大手の日本ヒューム <5262> 、各種下水道向け製品を展開するベルテクスコーポレーション <5290> [東証2]、水パイプライン関連製品を扱う栗本鐵工所 <5602> 、鋳鉄管大手の日本鋳鉄管 <5612> などにも注目。

東京都内を中心に下水道工事などを行っている大盛工業 <1844> [東証2]、上下水道関連サービスを提供しているヤマト <1967> 、配管腐食診断技術を持つダイダン <1980> 、上下水処理向け製品を手掛ける神鋼環境ソリューション <6299> [東証2]、上下水道施設に関連するエンジニアリング・サービスを扱う荏原実業 <6328> 、各種水処理機械・装置を展開する三菱化工機 <6331> 、下水処理場向け汚泥焼却設備などを提供する月島機械 <6332> 、総合水処理エンジニアリング企業のオルガノ <6368> 、継ぎ手など塩ビ製の上下水道関連製品が主力の前澤化成工業 <7925> のビジネス機会も拡大しそうだ。

このほか、下水道管にあるポンプの運転状況を人工知能(AI)で監視する自治体向けサービスの提供を始めたクボタ <6326> も見逃せない。

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