明日の株式相場戦略=師走の上昇旋風、材料株が全軍躍動モード
師走の風が吹き、2019年も大詰めとなってきた。名実ともに12月相場入りとなったきょう(2日)の東京市場は、思わぬリスクオン相場の様相を呈した。前週末の米株安も気にとめず上値を慕う展開となり、日経平均はフシ目ともみられていた2万3500円ラインを終値で回復。11月12日以来の年初来高値更新となったほか、水準的には昨年10月5日以来、ほぼ1年2カ月ぶりの高値圏に到達。上昇相場のフシ抜けでは、必ず市場エネルギーの有無が取り沙汰されるが、きょうの東証1部の売買代金は1兆7000億円にも届かない閑散商いであり、ひと言でいえば売り圧力の乏しさが浮き彫りとなっている。
米中協議の進展期待が高まっているが、依然として不安定な要素を内包している。トランプ米大統領が香港人権法案に署名したことが当然ながら波紋を広げ、中国側もこれを受けて香港での米国の艦艇や航空機の整備を認めないという対抗措置を発表した。しかし、関税のかけ合いのような、経済に直接的な影響を与える類いの報復ではなかったことで、マーケットに与える影響は限定的と見る向きが多い。何はともあれ、12月15日の対中関税引き上げ第4弾が見送られるのかどうかということが市場の最大の関心事だが、既に“見送り”を織り込んでいるような株価の値運びではある。
きょうの株高の背景には中国景気減速への懸念が後退したことが理由に挙げられている。中国国家統計局が30日に発表した11月の製造業PMIは50.2と7カ月ぶりに好不況の分かれ目である50を上回った。これを更にサポートしたのが、きょう取引時間中に中国メディア財新などが発表した民間調査の製造業PMIで、こちらは51.8と約3年ぶりの高水準だった。繰り返しになるが、現在の東京市場は、FRBのステルス量的緩和が話題となるなど米国を発信源とする金融緩和策の恩恵が株高の源泉とみられる。そのなか、過剰流動性を底流に、後付け解釈としては悪い材料には目をつぶり、良い材料はMAXで評価するという傾向が強い。どこかで反動が出そうだが、12月15日をクリアすれば、年末年始はこの流れが続きそうな気配が漂う。
個別では中小型株が全軍躍動といっては言い過ぎだが、多方面にわたってうまく循環物色が効いている。そうしたなか、決算発表を受け、いったん出尽くし売りでバランスを崩したかに見えたギグワークス<2375>が強烈な切り返しで一気に年初来高値を更新。前週末29日にザラ場1450円まで下げた後切り返し長い下ヒゲを形成したが、この日の安値からきょうの高値まで400円以上の値幅を出す形となった。5G関連の周辺株は依然として物色ニーズが強いようだ。5G関連では他に加工需要を取り込むツガミ<6101>や、水晶デバイスを手掛ける大真空<6962>、日本電波工業<6779>などの上げ足も鮮烈だ。
これを念頭に置いたうえで、5G向け光測定器や光関連部品を手掛けるsantec<6777>に再注目しておくタイミングか。目先おとなしい動きだが、1600円近辺のもみ合いは次の跳躍に向けた踊り場となっている可能性がある。車載アンテナトップの原田工業<6904>なども売り物をこなしながら下値切り上げ波動を形成中で、押し目買い対象として有力だろう。
このほか、ここ急速に投資テーマとして浮上している自動ブレーキ周辺、車載機器・システム関連で本多通信工業<6826>の500円台の株価に妙味が感じられる。
日程面では、あすは朝方寄り付き前に日銀から11月のマネタリーベースが開示される。また、引け後に財務省から11月の財政資金対民間収支が発表される。このほか10年国債の入札もある。海外では豪州中銀理事会の結果発表、NATO首脳会議(~4日)などが予定されている。(中村潤一)