師走IPO本格スタート、中小型株人気に乗り開花する株はこれだ <株探トップ特集>

特集
2019年12月3日 19時30分

―クラウド会計の「フリー」に高い関心、銘柄によって格差生じるケースも―

IPOラッシュが来週から本格化する。例年12月はIPOが集中する時期であり、市場の関心も新規上場企業に集まる。市場の物色トレンドが中小型株に向かうなかIPO銘柄には追い風が吹いている。ただ、今年のIPOは資金吸収金額の大きい銘柄も目立ち、市場からは「初値の上昇率は銘柄間の格差が目立ちそう」(アナリスト)との声も出ている。12月IPOの特徴を探った。

●12月は22社が登場、ITや人材サービス、リユース関連など

今年の12月IPOは22社が登場し、昨年の19社からは3社増加する予定だ。もともとは23社が予定されていたが、バイオベンチャーのファンペップは2日に上場中止を発表した。すでに2日には、12月IPOの第1号銘柄として名南M&A <7076> [名証C]が名証セントレックスに上場し、公開価格を45%上回る初値をつけている。22社の内訳はIT系のほか人材紹介系、医療関連、不動産系、 リユース関連などの業種が目立つ。上場市場別では名証セントレックスが1社、東証2部が3社、東証マザーズが18社。主幹事別では、大和証券が7社、SMBC日興が5社、みずほが4社、野村が4社、三菱UFJと東海東京、SBIがそれぞれ1社ずつ(共同主幹事含む)という構成だ。

●100億円超の資金吸収が4社、フリーは業績の赤字を懸念視

ソフトバンク <9434> の話題で一色となった昨年のような超大型銘柄の上場は、今年はない。ただ、今年の12月IPOの特徴は「資金吸収金額が100億円を超える銘柄が複数あること」(アナリスト)だ。この大型株の動向次第で市場全体の雰囲気も変わる可能性がある。大型資金吸収銘柄とは、12日のメドレー <4480> [東証M]と16日のJMDC <4483> [東証M]、17日のフリー <4478> [東証M]、18日のJTOWER <4485> [東証M]がそれだ。いずれも東証マザーズにIPOのシーズン前半に登場することになる。

なかでも「12月IPO銘柄の目玉」(アナリスト)として高い関心を集めるのがフリーだ。同社はクラウド会計ソフト「freee」を展開。決算書作成や確定申告が簡単に行え、同分野のトップシェアを誇る。ただ、20年6月期までの業績は赤字見通しで、想定資金調達額は300億円超と大きい。市場関係者からは「働き方改革などの流れに乗り成長期待は強いが、大きく初値が飛ぶことは想定しにくい」との声も出ている。それだけに、上場後の値動きに期待したい。

また、医療関連の人材プラットフォーム「ジョブメドレー」を展開するメドレーも吸収金額は200億円前後の見込み。ノーリツ鋼機 <7744> の子会社で医療データベースの構築を展開するJMDCの資金吸収額は170億円前後。同社は、医療ビッグデーターに絡み遠隔医療での展開も注目されている。JTOWERは国内外における通信インフラシェアリングを展開しており、100億円前後の資金吸収が見込まれている。

●ALiNKやマクアケなどには初値高騰期待が浮上

一方、資金吸収額が小さく時流に乗る銘柄は初値での人気化が期待されている。なかでも、IPOシーズン序盤に登場するALiNKインターネット <7077> [東証M]やマクアケ <4479> [東証M]は高人気を予想する声が出ている。

ALiNKは10日に東証マザーズに上場。天気予報専門メディア「tenki.jp」を運営している。従業員数は9人だが、日本気象協会と共同で事業運営しており年間で約40億ページビューを誇っている。資金調達額も10億円弱。マクアケは11日に東証マザーズに上場する。同社はサイバーエージェント <4751> の子会社で、クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」を運営。初のクラウドファンディング企業のIPOとして注目されている。同社は大ヒットしたアニメ映画「この世界の片隅に」の資金調達に携わったことでも知られる。

IPOシーズンの中盤以降に出てくる銘柄では、18日に東証マザーズに上場するBuySell Technologies <7685> [東証M]は、出張買取を中心とするリユース商材の買い取りを展開。50代以上のシニア層の遺品整理や生前整理などのニーズにも応えている。また、同じく18日に東証マザーズに上場するユナイトアンドグロウ <4486> [東証M]は中堅・中小企業のIT人材向けシェアリングサービスなどを展開。想定資金調達額は6億円強と小さい。26日に登場するスポーツ人財の採用支援サービスを展開するスポーツフィールド <7080> [東証M]なども注目されている。

一方、フリーランス向け仕事のマッチングサービスを展開するランサーズ <4484> [東証M]は公開株式数を削減し、仮条件も想定発行価格から引き下げたことで、資金吸収額も大幅に減少したことが話題を集めている。

●今年はセカンダリー投資に優位性、大型株は中長期姿勢も有効

市場関係者からは、「資金吸収額が大きな銘柄は上場後のセカンダリー市場での値上がりが期待できる」(アナリスト)との声が出ている。今年のIPOの平均初値上昇率は60%強と17年の2.1倍から大幅に低下している。しかし、その一方で初値をつけた後のセカンダリー市場での上昇率は42%と平年並みで、上場後の値動きの良さが目立つ。12月IPOも、銘柄によっては短期姿勢から中長期スタイルに変えることが有効となりそうだ。

■12月IPO銘柄の一覧

上場日  コード・市場 銘柄名           主幹事

12月 2日 7076・名セ 名南M&A         東海東京

12月10日 7077・東マ ALiNKインターネット  野村

12月10日 3449・東2 テクノフレックス      大和

12月11日 4479・東マ マクアケ          大和

12月12日 4480・東マ メドレー          大和

12月16日 4481・東2 ベース           みずほ

12月16日 4483・東マ JMDC          野村

12月16日 4484・東マ ランサーズ         大和

12月17日 4478・東マ フリー           三菱UFJ・大和

12月17日 4482・東マ ウィルズ          みずほ

12月18日 4485・東マ JTOWER        SMBC日興

12月18日 7685・東マ BuySell Technologies

SBI

12月18日 4486・東マ ユナイトアンドグロウ    SMBC日興

12月19日 2981・東マ ランディックス       大和

12月19日 2980・東マ SREホールディングス   SMBC日興

12月20日 4487・東マ スペースマーケット     大和

12月20日 7078・東マ INCLUSIVE     みずほ

12月23日 6557・東マ global bridge HOLDINGS

みずほ

12月23日 7686・東2 カクヤス          野村

12月25日 7079・東マ WDBココ         SMBC日興

12月25日 4488・東マ AI inside     野村

12月26日 7080・東マ スポーツフィールド     SMBC日興

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